説明を淡々と聞く長男の顔は、以前より暗くなっていた
「ダンディーさんから詳しい話を聞いたよ。『ちょちょいと片付く話』じゃないぞ」私はそう言ってやった。
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「すみません、センセイ。ダンディーさんとは長い付き合いで、どうにか力になれないかと思いまして」「力になれるかどうかはこれから考えるよ。それはそうと、こういう交渉ごとは弁護士の領域なんじゃないのかい? 相続財産を計算したけど、相続税も発生しないよ」
「そうなんですよね。法廷に持っていって決着をつけられればいいのですが、何しろ額が小さいもので、私としても持っていくのが恥ずかしいんですよ」スーさんはそう言った。どうやらメンツが気になるのは次男だけではないようだ。
「どいつもこいつもメンツが大事なんだなあ」「まあ、そう言わないでください。それでセンセイ、どうするつもりですか?」「次男に引いてもらうしかないだろうなあ」私はそう答えた。母親や長男の希望を叶えると、丸く収める方法はそれしかない状態だったのだ。
それからしばらくして、ダンディーさんがやってきた。私は彼を部屋に通し、相続財産の金額や、相続税が発生しないことなどを伝えた。ダンディーさんは淡々と聞いていたが、表情は暗く、疲れが溜まっているように見えた。
「兄弟のことに口をはさむつもりはないんですがね」私はそう前置きし、ダンディーさんにアドバイスをした。「もう1回、お母様と兄弟でちゃんと話し合ったほうがいいと思いますよ」「そうですね。ただ、次男も強情なんです。あの後も一度電話で話したのですが、とにかく1000万もらわないと困るんだと譲らなくて」
「なんでそんなにこだわるのでしょうか?」私は聞いた。無理を承知で主張するのは、何か大きな事情があるからだろうと思ったからだ。誰だってお金は欲しい。それにしても異常に執着しているように感じられた。
「次男夫婦の間でパワーバランスみたいなものがあるのでしょう。結婚したときから、うちは普通の家庭、向こうは金持ちといった劣等感のような意識があったのだと思います。次男はもともと見栄っ張りな性格でした。それもあって、なんとか差を埋めなければいけないと思っているんです」「そんなもんですかねえ」