相続はお金持ちだけに関係がある話。そう思っている人は多いようだ。しかし実際は違う。亡くなった人に多少でも預金があったり、家や土地があったりすれば、財産の多寡にかかわらず、相続は発生する。このエピソードの相談者は、3兄弟の長男である。父親が他界し、当初は母親が預金と家を相続するはずだった。しかし、次男が遺産の半分以上を欲しいと願い出る。結果、長男は精神的にも経済的にも大きな負担を抱え込み、兄弟がバラバラになってしまった。※本記事では、税理士の髙野眞弓氏が、自身の経験もとにした「争族エピソード」を紹介する。

結局は「ゴネ得」という残酷すぎる事実が…

「しょっちゅうではありませんが、珍しくもないですね。今回は1年でカタがつきましたが、3年、5年ともめているケースもあります」スーさんが言う。

 

「それはひどいな。なんでそんなに長引くんだい?」「ゴネる人がいるんです。デパートやお菓子屋で子どもが駄々こねることがあるじゃないですか」「おもちゃ買って、お菓子買って、の駄々かい?」

 

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「そうです。それと同じことをやるんですよ。遺産があるとわかり、欲しい、もらいたいとゴネる。当然、他の相続人は拒むわけですが、ゴネるほうもしぶとくゴネ続けて長期化します。すると、母親が根負けしておもちゃやお菓子を買うように、家族が折れる。気心知れた家族だからこそ、そういうわがままが通り、ゴネ得となることがあるんです」「甘えだな」「ですね」スーさんはそう言い、笑った。

 

「防ぐ方法はないのかい?」「遺言状を書いた上で、しっかり家族で話し合っておくしかないでしょうね」

 

電話を切り、私は大きくため息をついた。亡くなった父親は、まさか子どもたちが相続でもめることなど想像していなかっただろう。もめるほどの財産はない。そう思っていたのかもしれない。

 

実際、財産の額は大きくなく、相続税もかからなかった。しかし、相続税はなくても相続はある。税金が発生するかどうかと、相続を巡ってトラブルが起きるかどうかは、実はあまり関係ないことなのだ。

 

「ゴネ得」と、スーさんは言った。その通りだと思った。次男は自分のわがままを通した。その様子を見て、三男もゴネた。やっていることは子どもと同じだ。「あの子がおもちゃ買ってもらった。だから自分も買って」そうやって駄駄をこねる子どもなのだ。

 

しかも、次男と三男は欲求を貫いたのに、家族はバラバラになった。そこが最も心苦しいところだ。仮に父親が遺言状を書いておけば、あるいは財産の配分について家族と話し合っておけば、このような末路をたどることは防げたかもしれない。財産について話し合うのは決して難しいことではない。それだけに、最悪といってもいい結果になったことが残念でならなかった。

炎上する相続

炎上する相続

髙野 眞弓

幻冬舎メディアコンサルティング

裁判沙汰になったトラブルの3割が遺産総額1000万円以下⁉︎ 「ウチは大丈夫」と思ったら大間違い! 6つの炎上エピソードから学ぶ「円満相続」の秘訣 相続でもめたあげく、兄弟姉妹が憎しみ合い、絶縁状態になってしまうこ…

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