「俺の顔が立たない」無茶苦茶な言い分への対応は…
「父が亡くなる1年ほど前、次男の奥さんの親が亡くなりました。その奥さんの家が割と裕福だったようで、次男の奥さんが現金で1000万円相続したんです」「なるほど。それが基準になっているわけですね」
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「はい。次男がいうには、奥さんは1000万円相続したのに、夫である自分にはこれという相続がない。それでは顔が立たないということで、1000万円もらいたい。そういう話なのです」
次男としては譲れない部分なのだろう。夫には夫のメンツがあるものなのだ。しかし、無茶苦茶な言い分だ。私は会ったことのない次男に呆れてしまった。
当たり前の話だが、相続の金額は他人と比べるものではない。その家、その家によって資産の額も違う。相続は、メンツのためにあるものではないのだ。
「困りましたね」私はため息交じりにそう呟いた。「はい。困りました」ダンディーさんもそう言い、大きく息をついた。私は本当に困っていた。というのは、税理士の仕事は税金の計算であり、配分などでこじれた場合の交渉は私が立ち入る領域ではなかったからだ。「とりあえず、相続税の計算はこちらで引き受けます。金額が出たところで、改めて配分について考えましょう」私はそう言い、その日の相談は終わった。
「さて、どうするか」私は独り言をこぼし、うまい方法がないか考えた。
預金は母親の生活費として必要だ。仮に分けるとしても、800万円しかないわけだから、次男が求める1000万円には届かない。そうなると、自宅かマンションを売却しなければならない。しかし、いずれも家族が住んでいる。しばらく考えたが、次男に引いてもらうこと以外、これという案は思い浮かばなかった。
2日後、長男が再び事務所に来ることになった。相続税の金額が出たところで、改めてダンディーさんにどうするか聞く。その前に、私はスーさんに電話をかけた。いい解決策が思いつかない憂さ晴らしに、文句でも言ってやろうと思ったからである。呼び出し音が鳴り、すぐにスーさんが出た。