「おかしい…」父が遺した貯金通帳、長女が覚えた違和感の正体

年間約130万人の方が亡くなり、このうち相続税の課税対象になるのは1/10といわれています。しかし課税対象であろうが、なかろうが、1年で130万通りの相続が発生し、多くのトラブルが生じています。当事者にならないためには、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが肝心です。今回は、相続人の父が遺した貯金通帳にまつわるトラブルを、円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

仕事にプライベートに…成功をおさめた社長を襲う悲劇

北関東のある街に住むAさんは、高校を卒業後、建築会社に就職。学校の成績は優秀で、周囲は当然大学に進学するものだと思っていたらしく、就職という決断に対し、何度も大学を受験するよう説得されたそうです。しかし母子家庭で育ったAさんは、できるだけ早くひとりだちし、苦労をかけた母を楽をさせてあげたいと考えての決断でした。

 

同世代の同僚は、まだまだやんちゃ盛り。しかし、Aさんはとにかく真面目に、実直に仕事をこなし、同期の誰よりも、そして大卒で入社してきた人たちよりも早く、出世をしていきました。

 

そんなAさんは、30歳のときに独立します。会社からは何度も引き留めにあったそうです。「ちょうど、母が亡くなったんです。苦労をかけた分、親孝行はできたかなと。だからこれから先は、自分のしたかったことをやろうと思ったんです」とAさん。自分でビジネスを起こすことは、長年の夢でした。

 

PR 5月30日(土)11:00~12:00【オンライン開催(LIVE配信)】
即時償却で投資金額の約70%(約2,800万円)が一括償却!想定利回り9~15%を実現!
企業オーナー・個人投資家のための「コインランドリー事業投資」最新ノウハウ

 

ちょうどそのころ、Aさんは人生の伴侶をえます。そして2男1女(長男、次男、長女)にも恵まれました。会社も家庭も、順風満帆なAさん。長男はやがてAさんの跡取りとして、Aさんの会社に入社。長男もAさんに似て、真面目で実直な性格で、入社から数年後にはAさんをサポートする右腕的存在になりました。

 

「長男は、私なんかよりもずっと優秀で。安心して会社を任せることができますよ」

 

経営者が集まる会合で、Aさんはよく、そう自慢をしていました。そしてAさんは還暦を迎え、長男も30歳となり、そろそろ長男に会社を譲る準備を始めようとしていたころ、突然の悲劇がAさんを襲います。心筋梗塞で倒れ、救急搬送されたのです。意識が戻るかどうかは五分五分、という状況でした。

 

社長のいち大事に混乱する会社。長男が先頭に立ち、社長不在の穴を埋めようとしました。また母に代わり、泊まり込みで父を見舞ったのは長女でした。「仕事場と病院の往復は大変でしたけど、母は動揺していて、見ていられなくて」と笑う長女。出張の多い次男も、時間の都合がつけば、病院にかけつけました。家族全員で、Aさんの回復を祈り、奔走したのです。

 

しかしその祈りは、天に通じることはありませんでした。3ヵ月後、Aさんは静かに息を引き取りました。

 

「お父さん、3ヵ月もよく頑張ったね」

 

Aさんのために奔走した時間があったからでしょうか、家族はAさんを静かに見送ることができたそうです。しかし家族の混乱は、このあとのことでした。

真新しい通帳に記された遺産額に覚えた違和感

長女が長男から電話を受けたのは、葬儀から1ヵ月。今週末にAさんの相続の件で話がしたいから、実家に来てほしい、という内容でした。

 

その週の日曜日、葬儀の日以来、家族全員が集まりました。そして長男は1冊の貯金通帳をテーブルにのせました。

 

長男「父さんの遺産は、会社の株式と自宅と、そしてこの貯金なんだ」

 

長女はテーブルのうえの貯金通帳を開きました。そして違和感を覚えました。

 

 

長女「ねえ、お兄ちゃん、お父さんの貯金って、100万円しかないの?」

 

次男「えっ、意外と少ないんだね」

 

長女「でしょ。浪費家のイメージもないし……会社のほうにまわしていたのかな?」

 

長男「……」

 

長女「でも、お兄ちゃん、ちょっと教えてほしいんだけど。この貯金通帳、新しいじゃない。印字されているのも、この100万円だけでしょ。この前に、どんなやりとりがあったのかしら?」

 

次男「どういうことだよ、それ?」

 

長女「どしても、あのお父さんが100万円しか貯金がないというのが信じられないの。だって『私、結婚するかも』って言ったら『結婚式費用はまかせなさい』ってお父さん、自信満々に言っていたのよ。おかしくない!? 貯金が100万円しかないのに」

 

次男「確かに。どうなんだよ、兄貴」

 

すると無言だった母が1冊の貯金通帳をテーブルにのせました。それを開いた長女はビックリ。

 

長女「何にこんなに使ったの?」

 

その貯金通帳には、元々2,000万円強ありましたが、父の入院中にその多くが引き出されていたのです。

 

PR 5月30日(土)11:00~12:00【オンライン開催(LIVE配信)】
即時償却で投資金額の約70%(約2,800万円)が一括償却!想定利回り9~15%を実現!
企業オーナー・個人投資家のための「コインランドリー事業投資」最新ノウハウ

 

長男「うちの(=長男の妻)に、会社の経理をまかせているだろ。そののりで、父さんの通帳の管理もまかせていたんだよ。そしたら、こんなことになってた」

 

次男・長女「はぁ!?」

 

母「ようは勝手に引き出して、使っていたのよ」

 

次男「なんだよ、それ! 家族とはいえ、犯罪なんじゃないの?」

 

長女「そうよ、泥棒と同じじゃない。何に使ったのよ、そんな大金!」

 

長男「実は借金があったらしく、その返済に充てたらしい」

 

次男「はぁ、なんだよそれ、家族とはいえ泥棒じゃないか!」

 

長女「そうよ、お兄ちゃん。そんな人とすぐに離婚して! じゃないと私、訴えるから!」

 

相続トラブルと離婚トラブルが同時に発生したAさん家族。長男は、浪費家の妻と離婚に向けて話し合っているといいます。

遺産の使い込みはよくあるトラブル

被相続人と同居していた相続人が勝手に引き出してしまうケースなど、遺産の使い込みは、相続トラブルのよくあるパターンのひとつです。「何でこんなに遺産が少ないんだ!?」という疑念のもと、弁護士を立てて争うことも少なくありません。

 

そうならないためにも、遺す側は遺される側のことも考えて、事前に相続の準備をしておくことが大切です。そして相続対策は順番が肝心になります。

 

相続対策で最初にやるべきは「現状分析」です。万が一のことを想定し、

 

・どのくらいの相続税が発生するのか

・納税できるだけの資金があるのか

・家族が円満に相続することができるのか

・税務調査で問題になりそうなことがないか

 

などを精査していきます。次に行うのが「遺産分割対策」です。相続が起きたときに、どのように遺産を分けていくかを考えます。このときに大切になるのは、相続税の観点、そして、「みんな円満に仲良く相続してくれるか」という観点です。相続人全員が不満を持たずに遺産分けができるか。それができて初めて、家族全体で最も相続税の負担が少なくなる遺産の分け方を考えていくことになります。遺産の分け方が固まったら、遺言書で残しておくようにしましょう。

 

遺産分割対策の次には、評価引下対策を考えます。不動産や生命保険を活用した相続税対策です。 これらが終わって、初めて生前贈与が登場します。生前贈与は、相続対策の仕上げと考えましょう。

 

 

【動画/筆者が「相続後の手続き」について分かりやすく解説】

 

橘慶太
円満相続税理士法人

 

円満相続税理士法人 代表 税理士

中学・高校とバンド活動に明け暮れる。大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人山田&パートナーズに正社員として入社する。

税理士法人山田&パートナーズでは相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算300件以上。また、三井住友銀行・静岡銀行・ゆうちょ銀行を中心に、全国の銀行で年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。

税理士の使命は、難解な法律や税金をできる限りわかりやすく伝えることだと考えている。平成29年1月に表参道相続専門税理士事務所を設立し、平成30年より法人化に伴い、円満相続税理士法人に商号を変更した。

著者紹介

連載円満相続税理士が楽しく解説!「相続の基礎知識」

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧