相続人のウソを見破る「税務調査官」の巧妙な質問テクニック

相続税の税務調査。相続税の申告をした5人に1人の割合で選ばれ、そのうち84%の高確率で追徴課税となっています。なぜ、そのような結果になっているのでしょうか。そこには、相続人が言い逃れできなくなる、税務調査官の質問の極意がありました。本記事では、円満相続税理士法人の橘慶太税理士が、相続税の税務調査の8割以上で追徴課税となる理由を、税務調査官の質問術に焦点をあてて解説していきます。

税務調査の午前…和やかな会話が繰り広げられる

平成29年においては1万2500件ほどの相続税の税務調査が行われました。そのなかで、追徴課税になったのが、1万500件ほど。つまり約84%が追徴課税になっています。大変な高確率です。

 

さらに。追徴課税になった人の14.3%が、悪質で仮装隠蔽、つまり「ワザと隠したでしょ」と税務署から指摘を受けたものです。そうなると、ペナルティとして払う税金のパーセンテージが高くなります。このペナルティを重加算税といいます。

 

「ワザとじゃないけど漏れていました」というときのペナルティは、10~20%です。これが悪質というようにみられた場合は、35~40%のペナルティがつきます。100万円を払うべき税金が135万~140万円にして払わなければいけない、ということです。追徴課税になった人の14.3%が悪質と認定されているのです。

 

筆者は多くの相続税の相談や申告のお手伝いをしていますが、多くの方が税務調査を甘くてみています。「調査なんて大丈夫っしょ」という方がとても多いのです。そのような方のなかで、相続する側、たとえば両親は「税務署に聞かれたら、こう言いなさいと、子どもに伝えておきます」と言うのです。

 

また相続を受ける側、たとえば子どもたちも「税務署に聞かれたら、こう言えば、いいんでしょ。だから大丈夫です」と言うのです。

 

今回伝えたいのは「税務署はそこまで甘くない」ということです。税務調査官には質問の極意があります。嘘をついている場合には、その嘘が見抜かれてしまう、という極意です。

 

では極意というのは何かというと、「外堀から埋める」ということです。相続税の税務調査というのは、調査官がいきなり聞きたいことを聞くのではありません。納税者が言い逃れすることというのは、だいたいパターン化されています。だから嘘が付けないように、外堀を埋めて、言い逃れできないような状況にしてから、ズバリ、聞いてくるわけです。

 

実際の現場では、最初の税金とはまったく関係ない事ばかり質問されます。納税者からすると、「なんでこんなこと質問してくるのかぁ」と思うでしょう。しかし調査官は、最終的に何を疑い、何を聞き出したいか、ということが決まっています。そこに向かって、徐々に外堀を埋めてくるわけです。

 

税務調査は午前10時から午後4時くらいまで行われますが、午前中は外堀を埋めるための質問をしてきます。午後に入って核心を突く質問をしてきます。だからお昼休憩終わりの午後1時はドキドキします。

 

午前中にされる質問の一例としては

 

・生い立ちや趣味

・性格(金銭感覚)

・亡くなる直前の状況

 

趣味についてですが、たとえば、こんなやりとりが行われます。

 

「亡くなられた方、どんな楽しみがあったんですか?」

 

「ゴルフが好きでした」

 

「ゴルフですか、そうですか、楽しいですよね。ちなみにギャンブルとかやっていました?」

 

「うちの主人は、ギャンブルはしませんでしたよ」

 

性格については、たとえば、こんなやりとりが行われます。

 

「亡くなられた方は、みなさんにお金をあげたり、お金を貸したり、言葉はアレですが、お金遣いが荒い方でしたか?」

 

「いえ、うちの人はすごく慎重な人でしたよ」

 

亡くなる直前の状況では、たとえば、こんなやりとりが行われます。

 

「奥様、心苦しいことをお聞きしますが、ご主人、亡くなる直前はどのような状況でしたか?」

 

「主人はがんで、亡くなる一週間前には意識がなく……」

税務調査の午後…核心に迫る質問で相続人を追い詰める

午前中に外堀を埋める質問をしてきて、いよいよ午後、核心をつく質問をされます。

 

・不明出金の行方

・家族間での資金移動

・亡くなる直前の引出し

 

ここで、午前中の外堀を埋める質問が効いてくるわけです。不明出金の行方についてですが、税務調査官は亡くなった方の過去10年分の預金通帳をみてから税務調査に入ります。そしてこんなことを質問してきます。

 

「亡くなったご主人、どこどこ銀行どこどこ支店に、いくらありますけど、平成何年何月何日に、何百万円下ろしていますが、このお金、どこに行きましたか?」

 

午前中に「お父さんはお金遣いは荒くなかった」「ギャンブルはしなかった」「人にお金をあげたりしない」という話をしていたら、「じゃあ、このお金はどこにいっちゃったんですか?」となるわけです。

 

使ったわけでも、ギャンブルでも、人にあげたわけでもない……では「どっかにあるんですかね?」という話になります。大規模修繕とか生命保険など、すべてトレースすればわかるので、「ではタンスにでも、あるんですかね」などと疑われるわけです。

 

このお金は、なんですか?
このお金は、なんですか?

 

びっくりしますよね、こんなことも知っているんだと。「家族間での資金移動」、親から子、または子から親のお金の移動については、こんなことを質問してきます。

 

「どこどこ銀行から、何月何日に、お子さんの通帳に何百万円送金してますが、これって何ですか?」

 

午前中に「子どもたちにお金をあげるような性格じゃなかったですよ」と答えていたら、「このお金、子どもにあげたわけでなく、実質的にはご主人のものだったんじゃないですか?」と言われたりします。

 

ここでよく「本当にわからないことを『わからない』と答えてもいいですか」と質問を受けます。これは当然OKです。亡くなった方が何百万円か使っていたとしても、家族でもわからないことはあります。しかし「『わからない』とは言わせませんよ」という状態にもっていくのが、税務調査の定跡です。

 

たとえば、「亡くなる直前のお金の引き出し」。葬儀に必要になるので、亡くなる直前にお金を引き出す方が多くいます。しかし亡くなってから使うお金なので、亡くなった時点、争族が発生した時点では現金としてあるはずです。このお金の申告漏れが非常に多いのです。だから直前の引き出しについては徹底的に追及されます。

 

その時、午前中に亡くなる直前の状況の質問を思い出してください。このとき、「お父さんはがんで意識不明の状態が1週間近く続いて……」と答えていたら、「亡くなる直前にお金を引き出したのは、亡くなった方ではないな」となるわけです。引き出した可能性が高いのは相続人、いま目の前で調査を受けている方々です。そうなると、「引き出したお金がどこいったかわからない、なんて言わせませんよ」となるわけです。

 

さらに税務調査官は、すでに調べ上げていることを質問してくることもあります。嘘をついているかみるわけです。嘘つきだと、前出の「悪質」と認定されて、重加算税が課せられるわけです。

 

このように、税務調査は大変厳しいものです。そして筆者がいいたいのは「危険な橋を渡ってまで税金を少なくしようとするのであれば、きちんと合法的な方法で節税をしましょう」ということです。

 

 

【動画/筆者が「相続税の税務調査」について詳しく解説

 

橘慶太
円満相続税理士法人

円満相続税理士法人 代表 税理士

大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人に正社員として入社する。
勤務税理士時代は相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算400件以上。また、銀行や証券会社を中心に、年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。
2017年1月に独立開業し、現在6名の相続専門税理士が在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。週刊ポストや日本経済新聞、幻冬舎、女性自身など、様々メディアから取材を受けている。また、自身で運営しているYouTubeのチャンネル登録者は4万人を超えており、相続分野では日本一のチャンネルに成長している。

円満相続税理士法人:https://osd-souzoku.jp/

著者紹介

連載円満相続税理士が楽しく解説!「相続の基礎知識」

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