高齢者の「家賃滞納」問題。法律に基づき退去させることも可能だが、財産の少ない高齢者への強制執行に、苦しむオーナーも少なくない。そこで本連載では、章(あや)司法書士事務所代表・太田垣章子氏の書籍『老後に住める家がない!』(ポプラ社)より、高齢者の賃貸トラブルの実例を挙げ、その実態に迫っていく。

 

賃貸借契約が継続している以上、仮に家賃を滞納されていたとしても、家主側は勝手に室内に入ることはできません。まして賃借人側の荷物を処分することもできません。賃貸借を終了します、部屋を明け渡しますと一言言ってくれれば、家主は余分な費用をかけずに済むのです。

 

荷物を捨てるのが面倒なら、「処分して」と言えば(もしくは置手紙でもあれば)、家主側は処分できるのです。たった一言さえあれば……。それがなければ、訴訟手続きで解決するしか、家主側にはなす術はありません。

 

同じ頃、有村さん、続いて村山さんがそれぞれの新居に引っ越して行かれました。

 

「井上さんのことを目の当たりにすると、いかに自分が迷惑かけないように準備しなきゃいけないのかってことが分かったよ。部屋貸してくれる家主さんに、迷惑かけられないよね」

 

部屋の立ち退きで文句も言いたいところ、二人は一言も家主を責めることもせず、むしろ転居先を見つけてくれたことに感謝していました。以前にも立ち退きを経験され、高齢者の一人住まいがいかに難しいかを身をもってご存じだからかもしれません。

 

家主だって、絶対に貸したくない訳ではないのです。ただ若い人たちより簡単に解決できない問題が多い分、躊躇してしまうのも仕方がありません。

 

だからこそ借りる側も、精一杯迷惑をかけない心がけが必要ではないのでしょうか。

 

【次回へ続く】

 

【第1回】家賃滞納「70万円超」…窃盗を重ねる「独居老人」の行く末

【第2回】「もう部屋には入れないよ」73歳・独居老人に強制執行の末…

 

 

太田垣 章子

章(あや)司法書士事務所代表/司法書士

 

老後に住める家がない!

老後に住める家がない!

太田垣 章子

ポプラ社

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