物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資。資産形成の手段として注目が集まっているものの、事前にリアルな失敗パターンを知ることは必要不可欠です。そこで本記事では、多くの個人投資家にコンサルティングを行い、不動産投資の方法を提案する、株式会社カクセイの平山智浩氏・渡辺章好氏の共著『失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、不動産投資の実態を紹介します。

3億円という金額が大きすぎて買い手の融資が通らない

【買い手のつかない大規模物件】

 

2年前、仙台で50室のファミリータイプのRC造マンションを3億円で購入しました。大規模物件の遠隔管理が大変なので、築年数が残っているうちに売却をしたいです。購入のタイミングは悪くなく、決して高値づかみはしていません。相場の利回りでいえば、同じ3億円でも十分売れるのではないかと思っていました。

 

ところが3億円という金額が大きいため、買い手の融資が通らないのです。これが東京であれば取り組める金融機関も複数行あるようですが、地方では難しいという話です。

 

築年数が残っているうちに売却したい
築年数が残っているうちに売却したい

 

◆大規模物件の出口は難しい

 

大規模物件は金融機関も乗り気になりやすく、物件によりますが安い金利で融資を引くことも可能です。基本的に数億円クラスにもなれば、都内であってもライバルが少なくなります。これが7000万円、8000万円といった1億円を切るレベルではライバルが多いものです。

 

すなわち高い物件ほどライバルが少なくなり、より良い物件が手に入りやすくなります。逆にいえば、次に買える人が限定されるだけに、出口の時点で少し値段を落とさなければならないのです。

 

運営が危うくなってきた物件の買い替えを検討したとき、「次の買い手がいない」というのは致命的なリスクです。

 

この失敗事例では、地方ということがより失敗を大きくしています。都内であれば、ある程度の高額物件であっても、購入したい投資家がいるでしょうし、取り組める金融機関も複数あるかと思います。

 

それが地方となれば「買いたい」という希望があっても融資がネックとなり、購入できるのは地元の投資家、資産家くらいになります。その地域をよく知る投資家であれば、買い叩いてくる可能性も高いでしょう。

 

◆このまま売れなければ、どうなるのか?

 

このまま売れなければ、どうなってしまうのでしょうか。まず、月々キャッシュフローが出ているようであれば、ローンを払い続けて無借金にして持ち切るのがいいと思います。なんとか回るのであれば損をしません。

 

現状で月々のローン返済が厳しいのであれば、地元の金融機関に相談して、借り換え交渉を行うなど、持ち切ることを前提とした対策であれば有効なものがいくつかあります。新しい金融機関の開拓から、次の買い手につながる可能性もあるかもしれません。

 

基本的に大規模物件は効率良く収益をあげられるのが特徴です。同じ一棟マンションのオーナーでも10室のオーナーと50室のオーナーを比べれば、たくさん物件を所有しているオーナーのほうが、管理会社をはじめとした関連業者に対しても強い立場に立てます。しかし、前述の融資の問題から、大規模物件の流動性は良くありません。何かあったときに身動きしづらいです。

 

対して小規模な物件は価格帯も手頃で買い手が増えます。増える分だけ購入時のライバルは多く、価格帯は低くても利回りは下がっていきます。また、小規模物件はたとえ高利回りだとしても、そもそも家賃収入が多くありませんから、まとまったキャッシュフローを得たいと思えば、複数棟を購入しなくてはいけません。その分、時間と手間がかかるのです。ただし流動性は良く、市況にかかわらず売却はしやすいのです。

 

投資性向や属性により向き不向きがあり、「大きいから悪い」「小さいから良い」と単純なものではありません。投資家としてメリット・デメリットを把握して自分に合った物件を選ばないといけません。

査定業者に手のひらを返され、売れる気配がない

【できるだけ高値で売りたいのに…】

 

都内市部に所有する木造アパートを売却しようと、とある業者さんに売却依頼をしました。複数の業者に査定を依頼した結果、最も高い金額を提示してくれた業者さんです。ところが、まったくといっていいほどレスポンスがなく、半年経っても売れる気配がありません。

 

問い合わせしたところ「値段を下げたらすぐ売れますよ」と言われました。高く売りたいからこそ、その業者さんを選んだのに、値段を下げたら本末転倒な気もします。

 

◆高い査定額を出した業者は安心か

 

今は収益物件のポータルサイトから一括査定を依頼すると、かなり高い金額が出てきます。しかし、実際にその値段で売れるかどうかといえば、それは別問題です。売却依頼を受けるためには高く査定したほうが有利なので、高く査定する。しかし、その値段で売る気なんてまったくありません。

 

査定は売却の専任媒介契約を結ぶための手段なのです。「この値段で売れますよ」と、たき付けておいて、結局手のひらを返すということはよくあります。誰もが名前を知るような大手の仲介業者ですら、高い査定額を提示して、とにかく専任媒介契約を取るようにしています。

 

とある大手業者のやり方は、ほかの業者よりも、まずは高く査定して依頼を勝ち取ることから仕事が始まります。一度専任を取れば「後はこっちのもんだ」といった具合で、高い値段で出しておいた物件を「なかなか売れませんね」と言って時間を引き伸ばし、なかなか売れなくて売主が焦り始めたタイミングで、大きく指値(値引き交渉のこと)を入れて安い価格で再販業者に売却させる結果になります。これは本当にあこぎなやり方です。

 

なお、不動産の売買仲介業者と売主が結ぶ媒介契約は3種類あり、それぞれに契約条件が変わります。

 

・一般媒介契約

複数の仲介業者と同時に契約することが可能。売主が見つけた買主に売却することもできる。

 

・専任媒介契約

一社限定で契約を行い他社には依頼できない。他社の媒介により成約したときには、違約金が発生する。また物件情報を「レインズ」に登録して、売主に対して2週間に1回以上の状況報告が義務付けられている。専属専任との違いとして、売主が買主を見つけることもできる。専任媒介契約の契約期間は3カ月。

 

・専属専任媒介契約

一社限定で契約を行い他社には依頼できない。自分で買主を見つけることも可能だが、依頼した不動産業者を通して取引することが義務付けられている。依頼を受けた物件情報を5日以内に「レインズ」に登録して、売主に対して1週間に1回以上の状況報告が義務付けられている。媒介契約の有効期間は3カ月。

 

◆売却における「囲い込み」の問題

 

業者によっては、物件情報を囲い込んで、他社に扱わせないところもあります。以前から問題になってニュースでも取り上げられたことがある「囲い込み」です。

 

「囲い込み」とは、売主から売却を任された不動産業者が、物件情報を適切に開示しなかったり、他社からの物件紹介依頼に応じなかったりすることをいいます。

 

具体的にいえば、私たちが「レインズ」で見つけた物件を客付けしようと思い、物件の情報元に問い合わせても、「すでに売れてしまいました」と言われます。実際には売れていないにもかかわらず、そのような返答をするのです。

 

不動産の売買仲介の手数料というのは、売り手側、買い手側からそれぞれ3%発生します。業界用語で片方だけ得ることを「片手」(3%)、両方を得ることを「両手」(6%)といいますが、自社で情報を抱え込んで、両手の手数料を得ようとする行為が「囲い込み」なのです。

 

物件情報の囲い込みは、売主・買主双方にとって迷惑な行為であり、不動産業界全体の信用を貶める大きな問題とされていました。囲い込みをされたあげく、時間が経ったことを理由に「このままでは売れないからもっと値段を下げしましょう」と値段を下げさせます。こうして、収益物件に強い専門の不動産業者が努力すれば高く売れるはずの物件が安く売られてしまいます。

 

この問題を防ぐために、「レインズ」に新機能が追加されました。専任媒介、専属専任媒介の売却物件については、「ステータス管理」として「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のいずれかを設定することが必須となっています。

 

また、「公開中」の場合は、原則として客付け業者への紹介を拒否できません。これらの取引状況を含む物件情報は、売主がパソコンで直接確認できる仕組みになっています。

 

そのため、今は「レインズ」を見れば、「公開中」なのか「申し込み中」なのかひと目でわかりますし、売主である投資家からも状況をチェックすることができます。もし、専任媒介で物件売却を依頼して、7日を超えても、「レインズ」の売却依頼主用物件確認のためのIDをもらえなければ、業者が仕事を真面目にしていないということになります。忘れずに「番号ください」と督促しましょう。

 

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    平山 智浩・渡辺 章好

    幻冬舎メディアコンサルティング

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