前の所有者が「いらなくなった」理由を考える
【家賃が下落して物件を持ち続けられない】
5年ほど前に千葉県の某私鉄沿線でRC造マンションを購入しました。利回りが高いのが魅力で、購入時には「長く持ちたい」と考えていました。ところが入居者が入れ替わるごとに家賃が下がっていきます。満室になったとしても、当初予定していた利回りには到底及びません。物件選びを間違えたことに気づいたときは後の祭りでした。市況がいいうちに売却を検討しています。
◆利回りの高い物件が安心……ではない
投資家の皆さんが、最初は「これはいい!」と思って購入したところ、想定以上に速いスピードで家賃下落が起こることもあります。主な理由はリサーチ不足ですが、事故などが理由で大幅に家賃下落するケースもあります。売却をしようと思っても、今の家賃で相場の利回りで売りに出すには、かなり安い値段にする必要があり、その価格ではローンの残債が残ってしまいます。つまり「売るに売れない」のです。その時点で、投資計画は破綻しているのですが、心理的に損切りはできない……そんな投資家が多いようです。
物件を売りに出す大前提は、前の所有者が「いらなくなった」からです。いらないというのは、さまざまな事情がありますが、物件が良い状態でない可能性が高いです。多くの中古物件は、もてあまされた状態で売りに出されるケースが多いということです。
例えば、新築時と比べて大分家賃が下がっている、この先も退去のたびに家賃を1万円下げる必要がある……これではいくら満室になっても収益が出ません。そのため、所有する投資家は売却を決意します。
それをよく調べもせず、家賃が下がっていることも知らずに次の投資家が買ってしまいます。購入後は前オーナーの苦悩をそのまま引き継ぐので、1部屋空くごとに家賃が1万円下がって驚くことになります。
この失敗事例もそうですが、投資家の皆さんは広告の利回りだけを見て「その価値がある」と思ってしまいますが、その売りに出ている物件が「本当にその価値があるのか」というのをきちんと見極めないといけません。
人口減少が進む日本…購入時から「物件の出口戦略」を
◆出口はどう考えればいいのか
不動産投資で大切なのは出口の考え方です。不動産投資にはさまざまなリスクがありますが、最も大きな影響は少子高齢化社会です。今後は人口が減って産業も大きく変化していくことでしょう。製造業が国外に工場を移していく一方で、サービス業が増えていくなどの動きもあります。
これから先も賃貸需要がずっと安定していると楽観できない時代になりました。そういった中で、出口戦略があるというのが最後の選択肢であり、一番のリスクヘッジとなります。ですので、最低限、物件購入時には「この物件は、どのような出口がとれるか」というところは見ておく必要があります。
予定より早く出口戦略をとっても、きちんと元が取れるのが理想です。要は売っても損がない状態です。あるいは、売ったときに多少利益が見込めるとなお良いでしょう。売って損がない状態になるまでの期間が早ければ早いほど、良い不動産投資といえるでしょう。
多くの不動産投資家はインカムゲインを狙っています。毎月家賃収入をもらって、キャッシュフローを得ることを目的に不動産投資を行っているのです。しかし、建物の経年劣化とともに新築物件は築浅物件となり、その後、中古物件として扱われ、家賃は徐々に下落していくものです。
建物が古くなることによって、また家賃が低くなることによって、物件価格も購入時から下落していきます。もちろん、物件価格が上がるという例外もありますが、あくまでも少数です。そのため、これらの下落を織り込まないで買うのは危険です。「下落してもこれぐらいの値段で売れば、これぐらいの収益が見込める」というのを見極めて、買った値段と、諸経費で、トントンになるかプラスになる出口を試算して買う必要があります。
不動産投資会社が行うシミュレーションもオーナーを不安にさせるためにやっているわけではなく、「たとえ下がったとしても、ここでこの価格で売ればこの間のキャッシュフローもあるので、損はしない投資になりますよ」というのを理解していただくためのものです。
当初のシミュレーションはかなり厳しめに行うため、想定より高く売れることもありえます。ただ、最初から甘く見て「家賃は下がりません」「買った値段から下がらず売れますよ」と勧めるのはあまりにも乱暴すぎます。いろいろな幸運が重なればそういったシナリオもあるかもしれませんが、今の日本の不動産マーケットでは、経過年数が増えれば不動産価値は下落する可能性のほうが高いわけです。そのため、下がる前提でシミュレーションするべきです。