夫の更年期障害が原因となり、妻が体調に支障をきたす「夫源病」。ホルモンバランスの崩れのせいなのか、やたらと周囲に当り散らす夫に耐えかね、妻が離婚を決意するケースも増えてきました。本記事では、山中塾所属のAFPで、夫婦問題コンサルタントの寺門美和子氏が、離婚原因になりかねない「夫源病」について解説します。

夫の「更年期障害」が、妻の不調を引き起こす!?

中年以降の既婚女性に多い「夫源病」という病気を聞いたことがあるでしょうか。

 

きっと多くの方は、そんな病名は聞いたことがないとおっしゃるでしょう。しかし、この「病気」を患っている女性は、決して少なくありません。

 

「夫源病」とは、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授であり、大阪市内と都内で男性更年期外来を担当している、石蔵文信氏が命名したものです。石蔵氏は、長年患者さんと向き合うなかでこの病気に気づいたといいます。

 

中高年になると、男女ともにホルモンのバランスが変化し、心身のコントロールがうまくいきにくくなります。年に数回程度であれば、そのような不調は問題になりませんが、常態化してしまうと、すぐに感情を爆発させるなどして、大切な人間関係にヒビを入れてしまいます。

 

もしそのような態度の家族がいたら、一緒に暮らしている人たちはたまったものではありません。最初のうちこそ心配し、受け入れるでしょうが、度重なると耐えられなくなってくるでしょう。

 

女性の場合は、10代のころから毎月訪れる心身の変調と向き合っており、中年期になれば、それこそ気分や体調の変化への対処は「ベテラン」です。やがて起こる更年期障害にも、うまく対処できる方が多いのです。

 

しかし、男性の場合は少々事情が異なるようで、男性のなかには心身の変調にうまく対応できない人もいるようです。ストレスから言動に変化が生じ、周囲に強い言葉を浴びせたり、大きな声を出す人もいます。それを一因に、妻が発症するのが「夫源病」なのです。

 

「夫源病」の症状には個人差があり、頭痛・動悸・息切れ・めまい・不眠・食欲不振・躁鬱状態など多岐にわたりますが、共通しているのが、症状が出現する「時期」「タイミング」です。多くの場合、それは「夫が帰宅するとき」「夫と話すとき」「外出先から、夫のいる自宅へ帰宅するとき」です。つまり「夫と接触するとき」に具合が悪くなります。

 

逆に、「夫が出かけるとき」「自分が出かけるとき」など、夫と離れると体調がよくなります。とくに、夫が出張・旅行などで長期間家を空けるときにはホッとして、心も体も弾むように軽くなるのです。

 

しかし夫自身は、そのような妻の異変に気づくことはありません。自分が原因で、妻が体調や気分を悪くしているとは想像もつかないのでしょう。むしろ、自分の身に起こっている更年期障害に振り回され、妻や家族に目を向けることができないのだといえます。

50代男性が切望する「欲望の開花」

一説によると「男性の嫉妬と更年期障害は女性の比ではない」そうですが、実際にはどうでしょうか? 前出の石蔵医師のHP(男性更年期 夫源病 石蔵文信)には、下記の記述があります。

 

<私は医学的に男性更年期という病気に疑問を持っています。そのために他の男性更年期外来(多くは泌尿器科医が担当)のようにホルモン治療を中心に考えてはいません。実際、現在まで私の外来では全国から来られた650名以上の男性患者さんを治療していますが、ホルモン治療は全く行っていません。心療内科的に患者さんのよく話をお聞きして、抗うつ薬や安定剤などを中心に治療しています。>(同HPより)

 

男性の中年期に起こる、家族や会社、社会でのストレスの問題。そして、加齢によって起こる身体的な問題。自分のストレスを適宜発散できず、一気に噴火してしまうのでしょう。

 

<子供は大きくなり、親父を尊敬しないばかりか、一家の大黒柱である父親を軽蔑さえする。仕事一途の旦那と奥さんとの間も徐々に溝がひろがる。さらに、会社では中間管理職として、上から、下から色々と文句を言われる。しかも、体は若いときのように動かない。男性更年期とは、我々中高年ががむしゃらに仕事一途に走ってきた付けが回ってくる時期、そして、天の声がそろそろ軌道を修正した方がよいのじゃないかと教えてくれる時期、そして、次の老年期を豊かに迎える準備をする時期かもしれません。>(同HPより)

 

実際に、私が夫婦問題コンサルタントとしてご相談者と接するなかで、いくつか感じていることがあります。まず、50歳前後の(お金のある)男性が、浮気に走りがちだという点です。最後の悪あがきなのでしょうか、「自分にはまだ男性としての魅力があるのだ」と実証するかのごとくです。もちろん、妻にまったく非がないとはいえません。夫をないがしろにして空気のように扱えば、夫は自分に目を向けてくれる、ほか女性に気持ちが傾くこともあるでしょう。

 

しかし、50歳前後に差し掛かった男性は、たとえ女性関係であれ、仕事へのチャレンジであれ、それまで実現できなかった「欲望の開花」を切望するものなのかもしれません。

 

もちろん、どんな欲望を開花させるかは個人の自由ですが、中年期の男性のなかにはなにかと「自分軸」で考えがちな人をお見受けします。仕事のストレスを、知らず知らずのうちに周囲にぶつけてしまう。時間に追われるストレス、部下たちが思うように動かないストレス、なかには、若い愛人への気遣いで生じたストレスまでも…。このようなストレスを、家族、同僚、部下、友人といった、気を許せる人にぶつけてしまうのです。しかし、そのようなふるまいを続けていると、次第に疎まれ、人が離れてしまいます。

 

一概にはいえませんが、女性の場合は横つながりのコミュティに属していることが多いためか、人と同じ目線で接することに慣れていると感じます。しかし一部の男性は、そういったコミュニティに身を置いた経験が少ないせいなのか、無意識のうちに上からものをいったり、「自分軸」を基準とした身勝手な行動を取ってしまうように見て取れます。仕事をしていても、余裕があるときは優しくて人当たりが柔らかいのに、忙しくなると一転して、態度や言葉が荒くなる人もいます。

 

そのような態度・対応で50代を過ごしていると、次第に孤立しはじめ、いざ定年を迎えたときには、気にかけてくれる人もほとんどいなくなってしまいます。それと重なるように、自分の肉体的な衰えを突きつけられることで、気持ちが不安定になるのでしょう。そんなストレスのはけ口にされた妻は、「もうやってられない!」というところまで追い込まれるのです。

夫が定年退職するころ、妻が緑色の「絶縁状」を…

自覚症状のない夫たちは、自分の言動を改めません。そして、そんな夫が原因で「夫源病」になった妻は、夫が定年退職するころに絶縁状を突きつけます…いいえ、近年ではもっとタイミングが早まっているかもしれません。妻も賢くなり、どうせ別れるなら、少しでも若いうちにと考えるからです。

 

夫の多くは、妻のいない老後を想定していません。仕事に打ち込んできた結果、上手に生活を楽しむ方法も知らず、なかには簡単な料理すら作れない人もいます。肩書を失い、会社の名刺を失った夫のなかには、もはや新しい人間関係をどのように作ったらいいのかすらわからない人もいます。

 

そのような状況で、いちばんそばにいてほしい妻に去られたら、身動きができないまま、夫は引きこもりになってしまうかもしれません。最近では熟年離婚も珍しくないとはいえ、それでもなお、長年連れ添った妻と離れたくないと考えている夫は多いでしょう。

 

妻が離婚を考える際、上記でご紹介した「夫源病」も原因となりますが、妻を夫源病にする夫には、ある傾向があります。それは「問題のあるお金の使い方」をするところです。

 

「自分のためだけに散財する人」「ケチな人」は要注意

自分の見栄や快楽のためだけにお金を使う人。あるいはケチな人。

 

そんな男性の妻が「夫源病」にかかる傾向があります。日ごろから夫に強く当たられるだけでなく、夫が好き勝手に使っているお金を、自分は少しも自由に使えない…。そんな状況に置かれた妻は苦しみ、どんどん追い詰められてしまいます。

 

一方、家族や周囲にきちんとお金を使える夫の場合、妻や家族から愛され、大切にされ、幸せな老後を送っている傾向が見られます。

 

もしご自分が夫の立場で、現在、妻との関係に感じるところがある場合は、態度やお金の使い方を見直し、なるべく早い段階で修復を図りましょう。

 

そしてたまには、仕事人間の自分を支えてくれた妻、子どもを立派に育ててくれた妻に、少しだけ贅沢な旅行や食事をサプライズしたり、アクセサリーなどの記念になる贈り物をしてみてはいかがでしょうか。

 

また、気づいたときにお土産を渡すなどしてもいいでしょう。「焼き芋屋があったんだよ、懐かしくて買ったんだ。一緒に食べよう」「このお団子、〇〇では老舗らしいんだよ」など。ささやかなものでいいのです。そんなちょっとした気遣い・配慮を喜ぶ女性は多いのです。

 

「夫源病」の特効薬とは、夫婦それぞれの心を豊かに満たす、時間、物、言葉ではないでしょうか。

 

共働きがメジャーとなった令和では、「夫源病」も若年化する可能性があるでしょう。働き盛りの世代も、夫婦で楽しく時間やお金を共有し、人生100年時代を末永く幸せに過ごしていきたいものです。

 

 

寺門 美和子

ファイナンシャルプランナー(AFP)

夫婦問題コンサルタント

 

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