下落相場に大混乱…「自分で自分の資産を減らす人」の特徴

新型コロナウイルスの影響で株価が低迷している現在、手持ちの株や投資信託をどうすべきか気持ちが定まらない方も多いでしょう。しかし、焦って手放し、思い直して買い戻すような動きは避けたほうが無難です。大手銀行出身のベテランFPが、投資と投機の違いとともに、資産形成するうえで不可欠な「視点」について解説します。※本記事は、山中塾所属のFPで元大手銀行出身の青山創星氏が、人生100年時代の資産形成に不可欠な知識をわかりやすく解説します。

「投機」と「投資」の区別がついていない人

本稿の掲載時点では、新型コロナウイルスの健康被害による経済への悪影響が懸念され、株価が下がっています。ここは、新型コロナショック等の相場の急変動による不安を解消してチャンスを見出すという観点から、「投資」と「投機」について考えてみたいと思います。

 

投機は英語では「スペキュレーション(speculation)」と呼ばれています。「(不確実で根拠のない)推測・憶測、思惑買い」などといった単語の意味合いからも、あまりよいイメージを持たない方も多いのではないかと思います。ちなみに、投機取引は「トレーディング(trading:売買)」と呼ばれたりもしています。

 

投資と投機を区別して考えたことのない方は、言葉が持つマイナスイメージから、「投資」を避けることも多いように思われます。また「投機」を行っている方の場合も、マイナスイメージを抱きつつ、お金を増やすための手段と割り切って行っているように感じます。

 

しかし、投資と投機は相互に補完し合う関係にあり、金融マーケットを健全に運営していくためにいずれも不可欠なものなのです。

 

たとえば投資家は、株式を通じて資金を事業に投じ、事業から一定の利益が生まれたところでその株式を売却し、資金の払い戻しを受けようとします。そのとき、金融マーケットが経済危機の影響を受けていたとします。投資家が持っている株を売ろうとしても、買う相手がいなければ市場は成り立ちません。このような場合、現在の市場の動向とは異なる見方を持ってリスクを取る投機家がいれば、投資家も安心して取引を行うことができます。

 

上記のように、いつでも売りたいときに売れる、または買いたいときに買えるという状況を「市場に流動性がある」といいます。市場に流動性を提供してくれるのが、投機家の大きな役割のひとつです。

 

また投機家にとっては、市場の思惑に左右されずに市場に資金を提供してくれる投資家がいることにより、投機的な取引を安心して行えるということにもなるのです。

 

多様な働き方を指す言葉に「ダイバーシティ経営」があります。これにより、企業のなかに、性別、人種、国籍、宗教、年齢、学歴、職歴といった多様性が活かされ、競争力の向上に役立つともいわれています。

 

金融マーケットでも同様に、さまざまな動機、目的、手法に基づく人々が参加することによって、マーケットでの取引が円滑に進むようになるのです。

勝つか負けるか…投機、全員が勝てる可能性…投資

投機をする人も投資をする人も、金融マーケットには必要です。では、もし自分が取引を行う場合、どちらを選んだらいいのでしょうか。両者には、必要とされる知識、スキル、手間暇、向いている性格などによって大きな違いがあります。それらについてまとめてみました。

 

【投機】ゼロサムゲーム…勝つか負けるかの世界であり、全員が勝つことはあり得ない

 

まず投機についてです。投機はゼロサムゲームと呼ばれます。利益を得る人々の利益の合計額と、損失を被る人々の損失の合計額の総和がゼロになるということです。つまり、勝つか負けるかの世界です。全員が勝ちということはあり得ません。

 

投機で勝ち組になるためには、ほかの強い相手より知識やスキルを磨く必要があります。並の努力では、老後を乗り切れるほどの利益は手にできません。仕事をしながら片手間で大きな成果を上げるのは、非常に難しいといえるでしょう。

 

また、安く買って高く売ること(またはその逆)により利益を得ようとするものなので、常にマーケットの相場の状況や、金融マーケットの情報を注視する必要があります。しかし、しっかりした知識を身につけたり、売買のスキルを磨いたり、さらにはすごい強運を持っている人には、大きな利益を得るチャンスがあります。

 

ここで、投機についてひとつ考慮しておいたほうがよい「市場の環境の変化」があります。それはIT化の進展です。アルゴリズム取引やHFT(高頻度取引)と呼ばれるプログラムされたコンピュータによる取引などが、瞬時に大量に行われているのです。

 

そのような取引をするコンピュータは、証券取引所のなかの証券取引所のコンピュータの近くに置かれています。コンピュータ間の物理的な距離を縮めることによって、ほんの少し早く、株価の情報を知ることができるようになるのです。

 

いまの株価がいくらであるかを、人間がパソコンの画面で確認するよりほんの少し前に、これらのコンピュータがキャッチして、先回りして高速取引しているのです。ほんの少し前といっても1秒にも満たない時間ですが、それによって人間の投機家より有利な価格で取引できているのです。

 

いってみれば、人間の投機家が株価を知るより前にコンピュータがタイムマシンを使って先に知ってしまっているようなものです。あと出しじゃんけん1回では儲けられる金額は少ないかもしれませんが、それを何万回も行ったり、大きな金額で行ったりすることで、多額の儲けを得ることができます。

 

いままでのアルゴリズム取引等は、人間が考えたルールに従ってコンピュータが高速に取引するというものでした。しかしこれからは、コンピュータ自身が市場の取引を分析してより利益の得られるルールを見つけ出すだけでなく、それらを使って取引するAI(人工知能)取引も増えてくるものと思われます。

 

そのため、ますます人間の投機家にとっては不利な状況となっていきます。投機取引はゼロサムゲームですから、コンピュータが勝ち取った利益の分、人間の投機家の利益が減っていくことになります。

 

投機はゼロサムゲーム
投機はゼロサムゲーム

 

【投資】プラスサムゲーム…経済成長がある限り、全員が勝者になる可能性も

 

では、投資はどうでしょうか。投資はプラスサムゲームと呼ばれます。経済が成長していく限り、全員が勝者となる可能性があります。過去の歴史を見ると、経済危機などで金融マーケットが大きな痛手を被って相場が下がった場合でも、その後の経済成長によってマーケットは右肩上がりが続いています。今後もこれが必ず続くという保証はありませんが、世界全体の人口は増加しており、長期的に見れば経済成長は続くと信じるならば、その流れに乗って全員が勝者となる可能性もあるでしょう。

 

投資をするには、「モダンポートフォリオ理論」という投資理論に基づいた国際分散投資の手法を身につけたり、ウォーレン・バフェット氏が行っているような、企業分析に基づいたバリュー投資的な投資手法を身につけたりするところからスタートするのが一般的です。

 

投資も、なんの努力もなしにできるものではありませんが、完全武装した百戦錬磨の敵と戦うわけではないのです。上記のような基本的手法を身につけるのは、比較的易しいともいえるでしょう。そしてなにより、一緒に投資をしている仲間やマーケットと戦う必要がないというのは精神的にとても楽です。投資は、投機に比べて成果を得るのにある程度の時間を必要とします。しかし、仕事をしながらでも取り組めるという点は大きなメリットです。

 

上記のことから、時間が十分にあり、知識とスキルを徹底的に磨く覚悟と精神的なタフさを兼ね備え、短期間で大きく利益を得たいという方には「投機」が向いているでしょう。

 

仕事等が忙しく時間がない方、相場の変動に対応できる精神的なタフさに自信がない方、時間をかけて資産形成のできる方には「投資」が向いているでしょう。

 

いずれにしても、これらの投機と投資の特徴を理解し、自分はどちらを選択するかをしっかりと見極めたうえで取り組む必要があります。

 

自分では投資をしているつもりが、十分な勉強や経験を積まず、知らず知らずのうちにタイミングを見計らった売り買いを繰り返してしまうと、たちまち投機のプロたちに利益を持っていかれ、負け組になってしまいます。資産形成のために投資をしているつもりが、成果が得られず、精神的にも消耗してしまうのはもったいないことです。

一時的な不安で「不合理な行動」に走ってしまうワケ

保有する株や投資信託の価格が下がると、もっと下がるかもしれないという不安から売りたくなります。しかし、売ったときが底値に近く、また上昇に転ずるというのはよくあることです。

 

では、そんな不幸な事態に陥らないようにするには、どうするべきなのでしょうか。

 

それにはまず、株価だけを見て売買しないということです。チャート(株価のグラフ)が気になる方は、チャートを見ないというのもひとつの方法でしょう。

 

決して売り急ぐ必要はありません。もし現在、投資している株や投資信託の選び方に不安があるなら、正しい投資の仕方を学んだうえで、投資の対象を選び直せばいいのです。そうすることで心に余裕が生まれ、一時的な不安から不合理な行動に走るのを抑えることができるようになります。そして、現在のような要因で株価が下がり、投資できる適正価格になるのが待ち遠しくなるでしょう。

 

まずは、投資と投機の違いを理解したうえで、現在の状況や自身の性格などを勘案し、どちらを選ぶのかを考えましょう。そして、現在自分が行っているのは「投資」なのか、それとも「投機」なのか、明確に意識して取り組むことです。これが、お金に不安のない人生を手に入れる重要なポイントといえます。
 

投資と投機の違いをしっかりと認識できるようになれば、新型コロナショックのような株価下落もチャンスに変えることができるでしょう。

 

 

青山 創星

FP相談ねっと認定 FP
BOS(バフェット・オンライン・スクール) トレーナー
企業年金管理士(確定拠出年金)

 

FP相談ねっと認定 FP
BOS(バフェット・オンライン・スクール) トレーナー
企業年金管理士(確定拠出年金)

大手銀行で銀行の資産運用に関連する幅広い部門を経験。その後、個人金融資産の運用相談や生命保険、損害保険の販売に従事。

銀行や保険代理店で金融商品を販売する中で、お客様自身に合った商品の選択となっていないことに危機感を覚える。お客様の生涯にわたるマネーライフを俯瞰し、ベストなものを提案しなければならないとの思いから、退職時期を早め、金融機関とは完全に独立した立場で金融商品・サービス等についてのセミナー、コンサルを開始。国のじぶん年金作りのための制度である確定拠出年金の制度導入、資産運用のセミナー、コンサルを中心に活動。ウォーレン・バフェットの息子のかつての妻で、バフェット氏と今も親交のあるメアリー・バフェット氏とその愛弟子ショーン・シア氏直伝のバフェット流バリュー株投資法の啓蒙にも従事。

著者紹介

連載山中塾所属の気鋭FP陣が解説!必ず知っておきたい「お金」の有益情報

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