物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資。資産形成の手段として注目が集まっているものの、事前にリアルな失敗パターンを知ることは必要不可欠です。そこで本記事では、多くの個人投資家にコンサルティングを行い、不動産投資の方法を提案する、株式会社カクセイの平山智浩氏・渡辺章好氏の共著『失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、不動産投資の失敗例を紹介します。

失敗例1:新築なのに募集しても部屋が埋まらない

【相談内容】

東京で物件を探していましたが、なかなか見つからないので一都三県にエリアを広げて、昨年の夏、神奈川県某市に新築アパートを購入することができました。立地は悪くなく、駅から徒歩5分、広さは20平米あるのですが、まったく部屋が埋まりません。まもなく1年経ちますが周辺は新築アパートだらけ。完全な供給過多に陥っています。

募集を任せている不動産会社の担当に聞いたところによると、賃料を下げる提案がありました。近所の築5年のアパートでは家賃が1万円も下がってしまい、5万円台を下まわっているそうです。

 

◆メリットだけでなくデメリットも考慮する

 

昨今は中古物件の数が少ないこともあり、新築のアパートがたくさん建てられています。投資家の属性にもよりますが、新築であればフルローン30年の融資が受けられることから、サラリーマン投資家の一棟目の物件として人気です。

 

新築アパートメーカーの営業マンが作成するシミュレーションには、わずかな自己資金で長期にわたってキャッシュフローが得られることが明記され、非常に魅力的に見えます。

 

そもそも新築アパートのメリットをいえば、融資が受けやすく初心者でも物件を取得しやすいことに加えて、管理運営に手間とコストがかからないことが挙げられます。

 

建物が新しいので当分修繕費がかかりませんし、建物には10年の住宅瑕疵担保責任保険(※1)もついているので万が一のときも安心です。また、新築プレミアム(※2)と呼ばれる相場家賃よりも高い家賃設定ができることも新築アパートのメリットといわれています。たしかに入居者には「高い家賃でもいいから、新築物件に住みたい」という一定のニーズがあるのは事実です。

 

※1 住宅瑕疵担保責任保険・・・新築住宅に瑕疵があった場合に、補修等を行った事業者に保険金が支払われる制度。保険への加入にあたっては、住宅の工事中に検査が行われる。

※2 新築プレミアム・・・新築ならではの高めの家賃。一度でも入居がつけば新築プレミアム家賃ではなくなるのが特徴。

 

近隣の既存物件に勝てる仕様で建てれば、当然のことながらライバル物件に比べて有利です。新築物件は最新の設備がついています。住宅設備のグレードはさまざまですが、やはり新品に勝るものはありません。

 

また、新築アパートメーカーが勧める物件の地域は千葉・埼玉・神奈川といった首都圏に加え、名古屋や福岡もあり、地方であっても好立地であることが特徴です。そのため、前述した賃貸ニーズについて用心深くチェックをしていない人も多いようです。

 

横浜方面のケースでいえば、相鉄沿線と京急沿線では戸建て住宅が売れないということで、住宅販売から新築アパート販売に切り替える業者が増えたといいます。そうした投資家向けの物件だけでなく、地主の相続対策としての新築アパートも増えています。

 

現地調査をしてみれば、同じような新築アパートがずらっと並んでいることがわかります。横浜の相鉄沿線・京急沿線では新築にもかかわらず、フリーレントを半年つけても埋まらないケースも見受けられました。

 

これには入居者も驚きます。そこまで至れり尽くせりのサービスであれば「そんな人気のない物件なのか? 何か理由があるのではないか?」と逆に警戒されてしまうのではないでしょうか。

 

新築アパートを検討するときは、そのメリットだけでなく、デメリットについても考えましょう。限られた需要の中、同じエリアで既存物件と似たような間取りの物件を建てると、価格競争になるのは目に見えています。新築アパートも、一度でも人が住めばすぐに中古物件になります。新築時の入居者が退去すれば、あっという間に中古と同じ扱いになり競合物件に巻き込まれます。

 

近隣にどれくらいのライバル物件があり、新築アパートがどれくらいの家賃で満室になっているのかを確認しましょう。これは中古物件のヒアリングと変わりません。特に募集条件についてはインターネットで検索するだけで簡単にわかります。

 

もし、新築物件でニッチなニーズを狙うのであれば、地方のほうが有利かもしれません。首都圏では、おしゃれな物件、DIYが可能な物件、サーファー向け物件やガレージ付物件など、あらゆる物件が揃っていますが、逆に多すぎて目立つことができません。流行り廃りのサイクルも早く一過性のブームで終わることもあります。

 

その点、地方ではオンリーワンの物件、競争力のある物件として生き残ることができれば強みになるでしょう。

 

弊社は首都圏を中心に物件を取り扱っていますので、地方についてはそれほど詳しいわけではありませんが、一概に「田舎だからダメだ!」ということはありません。ただし、遠隔地での投資という観点でいえば、都会も田舎も変わりなく、きちんと見る目を持たなくてはなりません。

失敗例2:決済時に入居者の家賃滞納が始まっていた

【相談内容】

3月に契約をして、4月に決済をしました。契約時に、入居者の家賃滞納がないことを確認したのですが、決済時には滞納が始まっていました。売主さんがわざと隠していたわけではないようですが、家賃滞納のある物件を購入したのは不本意です。

このまま滞納が続くような場合は、契約を解消できるのでしょうか。それとも契約決済が済んでいるので、もう無理なのでしょうか。

 

◆契約後の家賃滞納は、決済までに決着させる

 

これも、ありがちなトラブルといえるでしょう。投資家側としては、賃料収入を得る事業が目的で物件を買うわけですから、その目的が達せられなければ意味はありません。ところが、売主側の故意過失や、告知事項を告げない、あるいは賃料滞納がある事実を言わないというケースもあります。基本的には「ハード面(賃貸ニーズに沿ったエリア分析など)だけでなくソフト面(既存の入居者の早期退去など)」も調査を行うことで、大きなリスクは回避できます。

 

契約直後に家賃滞納が判明…
決済時に家賃滞納が判明…

 

偶然のタイミングなのか、契約をした翌日から滞納が始まったというような場合には、滞納の早急な解消を求めるとともに、滞納の事由や賃借人について詳しくヒアリングして引き渡し後のトラブルに備えること、併せて「決済までの間に、自分の責任と負担において滞納を解消させてから引き渡します」という内容で売主に一筆書いてもらうと良いでしょう。

 

売主に悪意があるわけでなく、これまで順調に家賃を払えていた入居者がたまたまそのタイミングで滞納を起こす可能性もあります。それはそれで、正直に話し合えばいいだけです。

 

可能であれば、決済前に家賃が入金されている通帳を見せてもらえば安心です。ただし、そこまで開示させる権限はありませんので、対応は売主次第です。

 

とにかく「問題は起こっていませんか」「滞納はないですか」とこちらから確認をします。そして「誰が」「いつ」「どう答えた」という記録が残っていれば、後で万が一揉めたときに、責任の所在が明確になります。滞納等の事故がないことが、売買契約の要件であれば、解約への協議も土台に乗るかもしれませんが、引き渡し後に揉めることは避けたいものです。

 

また、滞納が発生した際の責任の所在などを明記した特約をつけておくことで、ある程度のリスクは防げると考えます。一般的に、そこまで悪質な売主は多くないはずですが、万が一、相手を騙して物件を売ろうというような売主にあたった場合には抑止力になります。

 

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平山 智浩・渡辺 章好

幻冬舎メディアコンサルティング

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