中小企業の経営者の場合、会社の負債を支払えないと、個人で借金を背負ってしまうことがあります。解決策としては、所有する不動産を売却し資金を調達する方法もありますが、やはり不動産を手放すのは勇気がいるもの。そこで本記事では、不動産コンサルティングマスターの大澤義幸氏が、自身の持つ「ゴルフ練習場」を売却した実例を紹介します。

類似施設が併設され赤字になったゴルフ練習場

本記事で紹介するのは、私自身が体験した不動産売却による「一発逆転」です。私の本業は不動産業ですが、本業とは別に一時期ゴルフ練習場の経営をしていたことがありました。そのとき所有していたゴルフ練習場を売却したのです。

 

事業を始めた当時は周辺に競合がなく、新興住宅地が次々と開発されていたので、「高級感のある練習場にすれば大きな利益が見込める」と始めた事業でしたが、計画と同時期に近くに同様の施設が作られて客が二分され、さらに宅地開発の遅れなども手伝って思うような集客ができず、開業直後から赤字がかさんでいました。

 

ゴルフ練習場の用地購入から、施設建設のための借入は14億円。高級感のある練習場を狙ったため建物の建設費がかさんだのです。

 

そのため、借入の返済を含む年間支出は約1.7億円にのぼりました。内訳は借入の返済7000万円、機器のリース料3200万円、人件費5000万円、固定資産税1200万円などです。開業前に立てた計画では損益分岐点は2億4000万円という大きな額でしたが、年間売上で3億円を見込んでいたので資金繰りには余裕があるはずでした。

 

ところが、急激な外部環境の変化による業績の悪化は改善の兆しが見えず、キャッシュフローは苦しくなるばかり。数年耐えて徐々に来客数を増やすという経営判断もあったのですが、私の本業はあくまで不動産ということもあり、すぐに売却を検討したのでした。

 

融資については返済のリスケジュールが可能であり、2000万円程度の利息分さえ返済できれば元本分については猶予がもらえる状況でした。しかし、問題はこのゴルフ練習場の経営でキャッシュフローをもっとも圧迫した「リース料」でした。リース業者はリスケジュールに応じる必要がないため、返済額の減額に応じてくれなかったのです。

 

そこで私が最初に思いついたのは、「ゴルフ練習場のまま借りてくれる事業者がいないか」ということでした。いくつかの事業者にあたったところ、借手候補が見つかったのですが、赤字の練習場を借りることには相手も慎重です。賃料の交渉で折り合いがつかなかったため、結局「丸貸し」する計画は頓挫しました。

 

借手がつかない以上は廃業するしかありませんが、14億円を投資した事業です。少なくとも同じくらいの金額で売却できなければ、巨額の負債を背負ってしまいます。判断しかねている私に「丸ごと売却してはどうか」と声をかけてきたのは融資元の銀行でした。

 

銀行は我が社の内情を知っているので、キャッシュフローが苦しいことを把握しています。彼らにすれば、金利すら「割り引いてくれ」と言い出しかねないという判断があったのでしょう。「そろそろ苦しいだろうから、売却してうちからの借金くらいは返してもらいたい」という提案でした。

 

売却は一つの選択肢として十分考えられるものでしたが、問題はその金額です。銀行が紹介してきたP社の購入希望価格は物件の価値をかなり低く見積もったものでした。銀行から私の経済状態について情報を得ていたのでしょう。練習場の窮状を知った上で算出したとしか思えない低価格だったのです。

 

丸ごと売却を決意したが…
丸ごと売却を決意したが…

高値で売るため、ゴルフ練習場を「加工」して売却

このゴルフ練習場を原価法で値付けすると、低く見積もっても13億円程度にはなったはずです。もし物件がゴルフ練習場ではなくマンションなら、それ以上の価格で売却することも簡単でした。購入希望者が多いので自然に競争状態が発生するためです。

 

ところが、ゴルフ練習場の買手は限られます。ゴルフ場の経営事業者やゴルフ関連の設備を販売している事業者、郊外大型パチンコ店経営者、練習場の経営ノウハウを持っている電鉄会社などにとどまります。絶対数が少ないため赤字のゴルフ練習場を高値で買いたいという事業者を見つけるのは非常に困難です。

 

そこで私が考えたのはゴルフ練習場を加工して売却する戦略です。

 

ただ、その戦略を実現するためには大きな資金が要るという難点がありました。6000坪もある広大地の上、傾斜もありました。売却しやすい更地にするには、設備を解体・撤去するだけでなく、造成して区画割りをしなければなりません。擁壁を撤去して地面を下げる工事が必要だったため、解体と造成の費用には手付金だけで3億円を要しました。

 

さらに廃業してから解体、造成後、引渡しを完了して売却代金が手元に入るまでには、約1年のタイムラグが発生します。その間もリース料や金利の返済は待ってくれません。これらを捻出するため、私は新たな金融機関と交渉して16億円の融資を取り付け、借金の借り換えを行いました。また、銀行との交渉を進める一方で、買主候補との面談と具体的な区画割りの作成にも取り掛かりました。話を聞いた買主候補は300社にのぼり、うち100社は上場している商業テナント会社です。

 

区画割りをする中では6000坪のうち2500坪を先駆けて商業テナントに売却し、金融機関やリース会社への返済にあてました。この工夫により金融機関は私の売却計画は実現性が高いと判断し、土地に設定していた抵当権の抹消に合意してくれました。残った3500坪については300坪単位で割る案や、30坪単位の分譲地とする案、開発道路を通す案など、何十ものパターンを作成しシミュレーションを行いました。

 

最終的には病院など高値で購入してくれる事業者との売却計画がまとまったため、借り換え分などの負債を完済した上で、大きな利益を得ることができました。

 

[図表]ゴルフ練習場を売却した事例

 

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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