本記事では、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。今回は、不動産売買における新たなアイデア「コーポラティブ型土地購入」について具体的に解説します。

売主にとってインセンティブの高い取引市場にするには

「コーポラティブ型土地購入」では、基本的に2人の買主と1人の土地売主とのマッチングをセットアップします(関連記事「大手参入も…日本で「不動産オークション」が根付かないワケ」参照)。それ以上の登場人物がいると土地分割のパターンが増え、広めの土地にも対応しやすくはなるのですが、逆に意思決定に関わるプレーヤーが増えると合意形成が難しくなるため、エンドユーザーとなる買主は当面2人に留めることで考えています。

 

土地売主にとって、その2人には、同時に決済(代金支払い)を行ってもらう必要があります。売買代金をもって、売主の債務弁済(抵当権抹消)を要する場合もあれば、土地上の家屋(古屋)に売主が居住していて、売買代金を新居に充当し、引っ越ししようとしている場合があるからです。そのためには一定の期限内において、土地買主をとりまとめ、必要に応じて融資を提案、決済時期を合わせる必要があり、オークション型で買主を決定します。

 

ここでオークションが合理的に成立するためには、先述したように、十分な数量の買手が必要となります。事前の募集営業で、エリアごとに注文住宅用地購入希望の登録者を集めておき、日頃からフォローしておくことがポイントとなるでしょう。オークションのスタート価格はこの買手集団の要望を総合した、ブックビルディング形式も参考にすることを考えています。

 

「コーポラティブ型土地購入」は一般個人の注文住宅ニーズを実現しやすくすることをサービスの原点としており、オークションの参加者も個人をメインに考えていますが、建売業者の参入を阻害するものではありません。売主からしてみれば、資金的背景がしっかりしており、高い価格提示をする人であれば、個人法人の別は関係ありません。

 

そのためオークションの参加者は注文住宅を建てたい個人と、建売分譲住宅を企画分譲したい法人とで、多くのプレーヤーが参入すると考えられ、オークション成立に必要十分な数量の買手グループが形成されるものと考えています。

 

いずれにしても、従前は「広いために価格が伸びず、建売業者に引き取られた土地」は、「コーポラティブ型土地購入」事業によって、買いやすいロットにアレンジし直され、直接、エンドユーザーへと結節させることで、その成約価格は経済的に合理性がある価格となります。また、多くの買手に競われて買われる土地に変わり、結果、最有効利用にもとづく適正価格か、もしくは希少性の高い土地である分の価格プレミアムが乗って、売主にとってインセンティブの高い取引市場となるのです。

 

なお、分筆後の土地はいわゆる建売住宅用地よりも広めのものが想定されるので、いわゆる狭小住宅よりも、少しグレードの高い注文住宅が建設されていくと予想されます。結果、良好な街並み形成においても寄与するものとなります。

 

分筆のバランスにおいては、2分割では、個人が買う面積としては大きすぎる土地になってしまうこともありえます。そんな場合も建売業者とのコラボレーションが生きてくるでしょう。個人用の2区画を生成し、余った土地(いくぶん面積が小さいか、不整形になることも考えられる)については、売主の承諾を得て、あらかじめ建売業者をあてがったうえで、残りの2区画をオークション方式で売却するプランを想定しています。

 

なお、オークションの運用方法の詳細は詰めていく必要があります。たとえば入札金額は多少低かったとしても、現金払いの買手の方が安定的であり、その優劣をどのように設定するかなどです。また入札に関しては一定の手数料か預託金を設定しなければならないと考えています。興味本位の入札や、いたずらな煽り、売主関係者による自作自演を排除し、健全なオークションを実行するためです。

 

[図表1]買手の量が成否を握るオークション
[図表1]買手の量が成否を握るオークション

 

中間省略登記は厳密には認められていないが…

「コーポラティブ型土地購入」のローンチにおいては、買主2対売主1のマッチングで進めることを考えています。2人の買主に同時決済をしていただくことを基本としているため、スムーズな決済クロージングを遂行しなければなりません。

 

特に2名の買主のうち、1名がドロップするような事態が発生すると面倒です。マッチング直後であれば、オークションで次順位だった買主を繰り上げるということもできますが、決済直前となっていれば困難です。

 

不動産売買契約では、ローン特約というものを付帯するのが一般的で、消費者保護の見地から、買主が期待したローンを受けられなかった場合、締結済みの売買契約を白紙に戻すことができます。それ以外に違約条項に該当するような事由で契約を履行することが出来ない場合があったとしても、当事者に違約金支払いの原資があるかどうかは実際わかりません。

 

誰の責任も追及できない不可抗力で決済出来ないことがあるかもしれませんが、もう一方の買手や売主に、次のアクション(別の物件への住み替えや売買代金の活用)があることも考えられ、決済は是が非でも行う必要があります。

 

そこで、決済には、つなぎ役として事業者が入るスキームとします。中間省略登記類似の手法を用いて、実際の買主2名に所有権移転をするのです。中間省略登記とは、不動産を転売する事業者が、自身の取得コストをセーブするために採られる手法です。売主A、転売会社B、最終買主Cがいた場合、売買上はA→B→Cと権利移転しますが、登記上はBの登記を省略し、直接A→Cとすることで、事業者であるBの登記費用を削減するものです。Bは転売利益を得ようとするものなので、介在するコストはできる限り除きたいためです。

 

この中間省略登記は厳密には認められていません。実態上の取引経緯を明確にトレースすべきという不動産登記の考え方から逸脱するものであるからという理由ですが、現在は、「第三者のためにする売買」であるという整理、つまり「AとBの間で、直接、第三者Cへ権利移転するために行う売買契約」であるとして、実質的に中間省略登記と同じことが行えるようになっています。法的構成は割愛しますが、不動産業界ではこれを、「三為(ため)契約」と呼んで活用しています。

 

また、「コーポラティブ型土地購入」では、売買契約後、決済までの間に分筆登記を行うことを考えています。分筆のためには確定測量といって、私有地間の境界確定のほか、公有地との境界確定も必要になってきて、相応の時間を要します。また分筆費用も売主負担にて行うことを考えており、万一のことがあると、その費用や時間のロスに関してもトラブルになりかねません。

 

複数の登場人物がいる取引では、決済の確実な履行を担保しなければならないのです。万一、買主のいずれか一方が離脱するようなことがおこった場合には、事業者は買主のポジションとして自己資金で決済します。「コーポラティブ型土地購入」の事業者は、売主と買主の間に入り、両者をつなぐポジション(ブリッジ)となるのです。つまり「三為(ため)契約」のBとなり、転売利益を得る構成とします。

 

事業者が自身による建物建築請負を条件としたりしてしまうと本末転倒となってしまうので、顧客の要望にもとづく土地区画の生成という事業の目的は堅持し、建物受注については切り離します。

 

転売利益の根拠は、区画アレンジの合意形成や、土地取引の安全確実な遂行の対価として明示することとし、その利益率は固定の数値として設定します。イメージとしては両手仲介にちかい6%を考えています。売買価格に上乗せするのが適当か、別途コンサル料金の設定とするかは継続検討にしたいと思います。

 

将来、「コーポラティブ型土地購入」事業のソーシング力が高くなり、売1:買3以上の分割アレンジを安定的に出来るようになった場合、この事業の利益率について見直す余地もでてくると考えています。

 

[図表2]
[図表2]

 

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本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

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