本記事では、不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。今回は、不動産売買時における「両手仲介」の実態等について解説します。

他社物件が優れていても自社物件に誘導させる⁉

仲介会社のマージンを減らす不動産売買仲介という仕事は、不動産を売りたい人と買いたい人を、価格面、条件面を含めた最適の組み合わせでマッチングする仕事であり、その成功報酬として仲介手数料を申し受ける仕組みです。

 

売買取引における仲介手数料は、最大で、売主から売買価格の3%+6万円、買主からも同額の3%+6万円を頂くことができます(不動産価格が400万円を超える場合の速算式:消費税除く)。この場合、売りたい人担当の不動産会社と買いたい人担当の不動産会社の2社共同でマッチングする場合もあれば、1社だけで売りたい人担当、買いたい人担当を受け持つ場合もあります。

 

通常、売物件を持っている(売主から売却の依頼を受けている)不動産会社の方が、仕事を進めやすくなっています。エリアによって強弱はあるものの、売物件があればそれを広告することによって買手を集めることができ、そこで集めた買手は将来のストックになるからです。そのため不動産会社としては、いかに良質の売物件を集めるかが営業成績に影響を及ぼします。ですから不動産会社は、様々なキャンペーンを催して物件を集めようとしています。

 

たとえば、建物診断(インスペクション)サービスを無料で提供したり、相続に絡んで納税資金の立て替えサービスを行うといったようなことです。ちなみに売却依頼と購入依頼の情報量の割合は、売1:買3が健全なマーケットと言われてきましたが、売物件が不足している昨今では、良質な売物件は圧倒的に少ない状況にあります。

 

各社躍起になって売物件募集に励んでいる状況です。登記簿で調べた所有者に対し、「あなたの物件を買いたい人が大勢いる」的キャッチコピーが印刷されたダイレクトメールを毎日のように送るなど、いろいろなアプローチ方法がとられているのです。

 

このような不動産業界においては、売物件の売却依頼をもらえた場合、その物件を売ることだけで終わらせてしまっては勿体無いと考えられています。自社内で売主と買主を結びつけることで収益をあげる方が当然いいのです(両手仲介と言います)。

 

中には、顧客の希望や利益をないがしろにしてでも、自社内でのマッチングを優先するケースがでてきます。当然コンプライアンス上問題がある行為ですが、歩合制給料の営業社員が多い業界でもあり、多かれ少なかれ、これを行う意識が働きます。購入希望者には、他社物件の方が優れていたとしても自社物件に誘導、売主から預かった物件は他社のお客さんの条件のほうが有利でも、自社のお客さんを優先しようというインセンティブが働くのです。

営業社員は最大4回の仲介手数料を得ることができる⁉

このような不動産業界の悪しき慣習こそがビジネスチャンスだとして、両手仲介を原則行わないことをセールスポイントとするソニー不動産のような不動産会社や、仲介手数料を一律30万円程度に統一する会社も出てきています。

 

なお、両手仲介は双方代理による利益相反を引き起こすおそれがあるので、幾度となく是正に向けて働きかけがなされているテーマです。業界としても、両手仲介への誘導を排除するために物件登録・検索システム(レインズ)で、掲載ルールを厳格化する等の施策がとられていますが、これまでのところ目立った改善に至っているとは言えません。

 

そんな環境にある営業社員が戸建て用地に適した物件の売却を預かった場合、たとえ自社内にピッタリ条件が合致する人がいたとしてもその人に売ることはありません。安易に両手仲介を目指すのではなく、まず建売業者に売るのです。もちろん建売業者との取引でも手数料をもらうので両手仲介です。そして建売業者には「新築住宅として再販売するときには、自分が売却を担当する」ことを条件としたうえで売却するのです。

 

こうすることで最初の取引で両手仲介、再販売で両手仲介と、最大4回仲介手数料を得ることができます。特に広めの住宅用地の場合には、買手が建売業者となりがちなために、この4回仲介手数料プランを実行しやすくなり、さらに新築住宅として再販される際の取引は、住宅が乗っかった分、売買価格が上がって、仲介手数料も増えるという算段です。

 

もちろん、両手仲介であろうと仲介会社が取り持つことでの役割、付加価値があるのであれば、その対価はあってしかるべきです。実際、両手仲介が多くなるのは、売物件担当の営業社員がその物件のことを熟知しているために、よりリアルな物件説明ができ、買う人が今後のライフスタイルをイメージしやすいといった理由も少なからずあるのです。

 

「コーポラティブ型土地購入」も両手仲介にちかい関わり方をイメージしていますが、明瞭な価格形成のもと、売手にはより高く、買手には希望の宅地ロットを提供するという価値を提供し、売手にも買手にもその期待を充足いただきながらマッチングをしていきます(関連記事『大手参入も…日本で「不動産オークション」が根付かないワケ』参照)。「コーポラティブ型土地購入」は、不動産会社への(不要な)中間マージンの排除と、良好な住宅環境を形成していくことを可能とし、不動産取引の革新にも貢献していくのです。

 

[図表]
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本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

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大林 弘道

幻冬舎

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