タワーマンションの固定資産税は見直されたが…
タワーマンションは所在階が高いほど取引価格も高くなります。階数差によって住戸の価格が変わるのに、公的評価が一律であるのは不公平だと、かねてより取り上げられてきました。
その結果、平成29年の税制改正で、まずは固定資産税について見直されることになりました。所在階が40階違うと固定資産税が10%ほど違うことになるようですが、そもそも固定資産税額に対する不満ってそんなに大きかったのでしょうか?
10%の差だとすれば、たとえば年税額19万円と21万円の2万円の差。タワーマンションの購入者層はそもそも裕福な方が多いはずです。これは所有者の不満ではなく、タワーマンションをテコに大きく相続税を回避される税務当局の不満なのでは? といぶかってしまいます。
その相続税評価の是正についてはまだなされていませんが、固定資産税の是正でまずはどんなハレーションが起きるかを見てみたいのでしょう。ただこの固定資産税の見直しレベルではあまり効果はないように思えます。
タワーマンションによる相続税評価の圧縮策は公的評価と取引価格のかい離にこそポイントがあり、それは土地持分が細分化されることによって、成り立っています。だとしたら建物評価額自体を階層差で10%増減したとしても本質的には変わりません。
相続税評価の見直しの際には、もう少し踏み込んだ改正がなされるのではないかと考えています。たとえば贈与の場合には、相続発生前3年以内になされた生前贈与については、その贈与はなかったものとみなし相続財産に戻されるという規定があります。
相続税回避のための資産移転を防ぐためですが、相続税評価圧縮のための物件購入においても、この「3年以内は適用外」という規定を援用してくるのではないか…と個人的に思っています。
「中古タワーマンション」が再注目される可能性も⁉
ところで、この改正で税務当局のスタンスについてわかったことがあります。
前出の固定資産税の見直しは平成30年以降引渡しの「新築」タワーマンションに限るとされたことです。従前の税制を期待して中古のタワーマンションを購入した人に遡及して適用するのは不合理だということのようです。固定資産税と相続税でこのスタンスを変えるとは思えませんので、将来相続税評価圧縮ルールが改正されても、中古物件には適用されない、もしくは改正前に取得した人には適用されないということが十分考えられます。
そうなると中古のタワーマンションが再注目されるのは自然で、逆に需要が盛り上がるかもしれません。ベイエリアなど、一部のタワーマンションは物件がダブつき気味のマーケットとなっていますが、再燃もあるかもしれないのです。
一方、投資用の新築ワンルームマンションには狭小地でも建築可能で、分譲単価も高めに設定ができるという供給側のメリットがあります。需要サイドもマイナス金利後の投資運用先として、個人の不動産投資熱が高まっています。その投資用ワンルームでさえ、地価・労務費・材料費のトリプル高を吸収しきれなくなってきています。
実際、投資用ワンルームマンションの分譲実績をみても、東京23区から徐々に郊外(川崎市など)に供給エリアを移しています。
川崎市ではワンルームマンションの面積要件が東京ほど厳しくないことも理由としてあげられますが、都心エリアではインバウンド需要増に伴ったホテル不足に関心が向き、ワンルームマンション用地がホテル用地に転用される例が増えていることも無視できません。
仕事が少なくなったデベロッパーや沿線開発に取り組む私鉄会社も、ホテル開発(コンバージョン含む)に取り組むようになってきました。
また、建築途中のワンルームマンションが、ファンドや私募リートへの組み入れ用に一括取得される取引も増えたように思います。こうなると都心の新築ワンルームマンションに対する買ニーズの受け皿がなくなってしまいますので、築浅のワンルームマンション(特に室内設備が充実し、共用部分のファザードのよい物件)は、需給が締まっていき、堅調に推移していくことが予想されます。
従来、ストック過多の感が否めなかったワンルームマンションですが、都心の築浅物件、または、築古であっても都心3区(千代田区、中央区、港区)の物件は「買い」と言えるでしょう。株式投資も不動産運用も逆張りにこそ商機があるかもしれませんね。