「傾斜地」は価値があり、収益を生み出す土地である
インターネットで土地検索を続けていくと、1年以上売れ残っている土地を発見することがあります。
そういった土地は価格が高すぎるのか、建築条件が合わなくて施工業者も建物を建てられない土地なのか、何かしらの理由があるのですが、そういった土地こそ狙い目なのです。前回説明した旗竿形状地は一般的には難ありの土地ながら、収益を生み出すチャンスのある土地であると説明しました(関連記事『2000万円以上の得⁉ 旗竿形状地という「お宝土地」の探し方』参照)。実はその他にもそういった〝金の卵〟のような土地があります。
それは、傾斜地です。
傾斜地は一般的には敬遠されがちですが考えようによっては、実は価値があり、収益を生み出す土地となりえます。傾斜地のメリットとしては、土地の価格が他よりも安いことです。なぜ安く買えるのかというと、傾斜地であるがために、擁壁を作らなければいけなかったり、その土地を平坦にするための建築コストがかかってしまうからです。
ただその傾斜地に半地下や地下階をつくることで地下緩和が受けられます。地下緩和とは建築基準法で地下階や半地下は容積率に加算されないというルールのこと。よって同じ2階建てでも、地下室を設けることで延床面積を1.5倍に増やすことができるのです。
もちろん傾斜地だからこそ、地下階や半地下に窓を付けることも可能なので、通常の部屋よりも70%ぐらいの家賃を設定すれば、十分に収益を見込めるのです。
不動産業者は、そういった傾斜地に地下階を作ることは提案してきません。なぜなら、不動産業者は施工会社ではないので、効果的に設計できず、また施工費をかなり大きく見積もってしまうからです。だからこそ、その認識や不動産常識の〝ねじれ〟を利用して、一歩踏み込んでみることに本当の価値があるといえるのです。
もちろん、急傾斜指定を受けている地域は擁壁を作らないと危ないので、そういった地下階や半地下を作ることができない土地もあります。一般の施工会社はそういった傾斜地に地下階を作れない場合もありますが、地下階を設計したことのある施工会社もあるということを、今は頭に入れておいてください。
だからこそ、そういった土地を見つけたら、信頼できるプロの不動産コンサルや実績のある施工会社に相談してみるべきなのです。皆が嫌がる最初のちょっとした初期投資をするだけで収益を1.5倍にしてくれる土地もあるということを認識しておきましょう。
「難ありの土地」は建築費が高くなる可能性があるが…
施工会社が家を建てるのを嫌がったり、施工自体を断ったりする土地はたくさんあります。
例を挙げると、都内でも坂が多い地域の土地や、前述した傾斜地よりも勾配がキツい急傾斜地、一見、雑木林に見えるような土地、そして、後ろに谷があるようながけ地、近くの道路から車が簡単に入ることができない土地なども嫌がられる部類に入ります。
もちろん、不動産素人は、そういった土地はがけ崩れを起こしたり、建物を建てるのが危険なのではないかと心配してしまいます。ですが、建築の観点から行くと、そういった土地の場合、建物の自重でがけ崩れの危険を防げるので、擁壁(ようへき)を作って補強するのと同じくらい安全なのです。
もちろん工事においても、震災後から役所が検査済証を出す基準が、かなり厳しくなっています。役所から建築確認の検査済証が出ている土地であれば安全のレベルも確保されます。
前述したような断られる可能性が高い土地も、状態によってやろうと思えばできなくもないですが、大手ハウスメーカーもそういった難ありの土地に建物を建てるとき、通常の建築にかかる費用の2倍ほどの高額な施工費の見積もりを出してきます。
それは家を建てる前にその土地を平らにしなければいけないからです。テレビのコマーシャルなどで見る名の知れた大手の施工会社は、自分の会社が用意しているパッケージ(間取りなどがすべて決まっている建売住宅)で作りたいので、そういった難ありの土地の基礎部分自体の形状を変えてしまう工事に難色を示します。
だから難ありの土地は、建築費が高くなる可能性があるので、価格は安いのですが不動産業者も売りづらい土地になっています。買う側はそこに付け入るべきで、価格交渉をしてほしいのです。そこがチャンスだと考えるべきで、大手施工会社ができない作業も、傾斜地の施工を専門に行う施工会社は存在します。
そういった実績のある施工会社に相談することで活路が見えてくるのです。もとから土地代は安いものの建築コストが上がるので、もう少し土地代を安くしてほしいと交渉する余地もあるのです。
信頼できるコンサルや施工会社を選べば、賢く値引き交渉ができるというあなたの武器になることも覚えておきましょう。