本連載では、公認不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士の曽根惠子氏、税理士法人アレース代表社員の保手浜洋介氏の共著書、『結果に差がつく相続力 相続税を減らすコンサルタント活用術』(総合法令出版)から一部を抜粋し、ケース別の実例をもとに、身内で揉めず相続税をできる限り少なくするための具体的な相続対策を紹介します。

節税対策に「高齢者住宅」の購入を勧められているが…

[図表1]
[図表1]
[図表2]
[図表2]

 

【相談内容】勧められた対策は決断していいか

高橋さんは土地持ちの資産家です。自宅周辺に10ヶ所以上の土地があり、大部分は駐車場にしています。区画整理などがあり、土地の評価がかなり上がってしまい、相続税が相当な額になると言われています。

 

父親が80代になるため、JAより節税対策として9億円で他市の高齢者住宅を購入するように勧められました。1億円は土地を売却して捻出、残りの8億円は融資をするというのです。この対策を進めてよいのか、判断がつかないと親に代わって長男が相談に来られました。

 

●相続プラン1 現状分析と課題の確認

【感情面】長男が同居、跡取りで合意はできているが不安もある

妹二人は嫁いでおり父親の意向で相続すると言っているが確約はない

【経済面】不動産が多いため、相続税も多額。現金はあるが足りない

土地が78.2%あり、明らかにバランスが悪い

【収益力】ほとんどが駐車場で収益力は低い

総資産収益力5.5%賃料収入9,140万円/資産総額16億6,000万円

【対応力】納税資金不足

土地がほとんどで納税時には売却するしかない

 

[図表3]相続力
[図表3]相続力

 

〇コンサルタントより

JAが提案している高齢者住宅の購入は、メリットがないと判断しました。高齢者住宅は他に転用が利かないため、将来は運営がうまくいかなくなる不安があります。それでも立地がよく資産価値があるのであれば保有する方法も出てくると言えますが、勧められている土地は駅から徒歩20分、すでに稼働はしていますので運営会社が利益を出して売りたいことが明らか。資産保有するメリットはないと言えました。

 

それならば、高橋さんが所有する駐車場に賃貸物件を建てて土地活用をするほうがはるかに保有する価値があり、節税効果が高いと判断しました。

駐車場を維持しているだけでは節税効果は得られない

●相続プラン2 不動産評価と特例の適用効果の検証

特例1 地積規模の大きな宅地の評価(駐車場A) ▲7,525万円

特例2 小規模宅地等の特例(自宅290.22㎡) ▲4,574万円

土地は地積規模の大きな宅地評価ができました。

 

●相続プラン3 対策と節税効果の検証

◇対策1【土地活用】 ▲4億9,015万円

駐車場Bの土地の有効活用(賃貸マンション建築)

◇対策2【土地活用】 ▲1億8,380万円

駐車場Cの土地の有効活用(賃貸マンション建築)

◇対策3【土地活用】 ▲4億9,690万円

駐車場Dの土地の有効活用(賃貸マンション建築)

◇対策4【購入】現金で収益不動産を購入 ▲7,000万円

現預金のうち1億円で収益不動産を購入(年間収入約500万円増)

◇対策5【資産組替】土地2ヶ所を売却し手残りで資産組替 ▲9,261万円

駐車場E8,000万円で売却。6,200万円のうち3,100万円(共有)

駐車場F1億3,000万円で売却。手残り1億130万円

売却資金(1億3,230万円)で資産組替(年間収入約650万円増)

◇対策6【贈与】収益物件を生前贈与 ▲3,969万円

対策5で購入した収益物件を生前贈与

 

〇対策の内容

駐車場として維持しているだけでは節税効果が得られないため、大きな土地は土地活用をすることを提案しました。また、駅から遠い土地は売却して資産組替して、借入のいらない対策にしました。

 

●対策後財産評価3億345万円

●相続税4,803万円

◇特例 地積規模の大きな宅地の評価 ▲1億2,100万円

◇各対策と相続税評価減

土地活用、資産組替、贈与の評価減合計 ▲13億7,315万円

評価減合計 ▲14億9,415万円

◇相続税の計算

対策前の財産 16億6,000万円

対策後の財産 3億345万円

基礎控除(相続人5人) 6,000万円

課税財産 2億4,345万円

相続税 4,803万円

※相続税の計算の仕方

配偶者 1億2172.5万円×40%−1,700万円=3,169万円

子 (3,043万円×20%−200)×4人=1,634万円

計 3,169万円+1,634万円=4,803万円

 

◆対策後の相続力判定◆

【感情面】家業を引き継ぐ長男を中心として節税対策を検討している。他の兄弟も長男がある程度の財産を引き継ぐことには理解しており協力態勢が整っている

【経済面】相続税92.27%減 5億7,347万円の節税

【収益力】総資産収益力52.06%

賃料収入1億5,800万円/資産総額3億345万円

【対応力】現金で納税できる見込みとなり不安はない

 

〇コンサルタントより

JAが勧めるままに既存の高齢者住宅を購入していた場合、駅に近い優良な土地が減り、資産価値の高くない土地が増えることになります。9億円の借入が必要になり、それでもまだ相続税はかかります。

 

高橋さんの財産を見直し、将来的な価値も考えて残す土地は活用していく必要がありました。建築費の借入が多くなりますが、賃料収入から返済できるバランスが取れており、大きな不安はありません。

 

[図表4]
[図表4]

 

 

曽根惠子
公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 

保手浜洋介
税理士法人アレース 代表社員

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