本連載では、公認不動産コンサルティングマスター・相続対策専門士の曽根惠子氏、税理士法人アレース代表社員の保手浜洋介氏の共著書、『結果に差がつく相続力 相続税を減らすコンサルタント活用術』(総合法令出版)から一部を抜粋し、ケース別の実例をもとに、身内で揉めず相続税をできる限り少なくするための具体的な相続対策を紹介します。

多くの「土地」を所有しているが、収益力は低い

[図表1]
[図表1]

 

[図表2]
[図表2]

 

【相談内容】8億円借りて高齢者住宅を建てる契約目前だった

田中さんの父親は農家の長男として先代から20ヶ所ほどの土地を相続して維持してきました。先代までは農家として自宅周辺にある畑を耕作していましたが、区画整理が始まり所有する農地はすべて宅地となり、土地だけで30億円以上の評価に跳ね上がりました。

 

相続税の節税のためにとJAに勧められて賃貸マンションを建てており、借入も残っていますが、広い土地が多く、土地のほとんどはまだ更地です。相続税が改正になってからは、節税対策を頻繁に勧められるようになりました。ハウスメーカーからは建築費8億円で高齢者住宅を建てると節税対策になると提案されており、契約する予定でした。

 

それでもまだ不安や迷いがあったと言います。対策を進めることがいいのか判断に迷う部分もあり、また、このまま相続になると維持してきた土地を売っても足りないかもしれないと本を読んだそうです。その後、セミナーにも参加して、相談に来られたのでした。  

 

●相続プラン1 現状分析と課題の確認

【感情面】2人姉弟で長男が跡取り

長男に財産が集中するため、姉から不満が出るかもしれない

【経済面】不動産が多いため、相続税も多額で現金はあるが足りない

土地が81.7%あり、明らかにバランスが悪い

【収益力】賃料収入があるが収益力は低い

総資産収益力3.16% 賃料収入5,700万円 / 資産総額18億円

【対応力】納税資金が決定的に不足している

相続になれば土地を売って捻出するしかない

 

[図表3]相続力
[図表3]相続力

 

〇コンサルタントより

かなりの土地を所有されているが、収益力が低い地域のため、このまま維持するのは負担だと判断しました。すでに借入をして賃貸マンションを建てているため、同じエリアに同様の賃貸物件を増やすことはリスクが高いと言えるため、資産組替が妥当だと判断しました。

収益力がアップする「都心部」の不動産を中心に購入

●相続プラン2 特例の適用効果の検証

特例1 地積規模の大きな宅地の評価(月極駐車場) ▲9,385万円

特例2 地積規模の大きな宅地の評価(コイン駐車場) ▲5,894万円

特例3 地積規模の大きな宅地の評価(マンション敷地) ▲2,758万円

特例4 小規模宅地等の特例 ▲ 4,693万円

財産の8割が土地で、500㎡以上で適用できる地積規模の大きな宅地評価が採用できます。小規模宅地等の特例も組み合わせると節税効果が得られることが確認できました。

 

●相続プラン3 対策と節税効果の検証

◇対策1【資産組替】土地購入 ▲1億3,600万円

所有の農地を売却して、その代金で都心の土地を購入

◇対策2【購入】一棟ビル購入 ▲3億1,500万円

融資を受けて都市圏のテナントビルを購入

◇対策3【購入】土地購入 ▲2億円

融資を受けて都心の土地を購入

◇対策4【土地活用】賃貸物件を建築 ▲1億8,700万円

購入した対策1の土地の上に建物を計画。計画中に認可保育園の入居が決まり20年間の賃貸

◇対策5【土地活用】賃貸物件を建築 ▲1億8,700万円

購入した対策3の土地に融資を受けてテナントビル建築

◇対策6【資産組替】駐車場売却・区分マンションに組替 ▲ 8,700 万円

 

〇対策の内容

1000坪の畑を売却して、資産組替をしました。立地を変えるため、都心の土地を購入して活用し、認可保育園に賃貸しました。さらに借入をして主要都市の最寄り駅に近い収益ビルを購入しました。次に都内の土地を購入、賃貸マンションを建築しています。

 

●対策後財産評価4億6,070万円

●相続税1億450万円

◇特例 規模格差補正+小規模宅地等の特例 ▲2億2,730万円

◇各対策と相続税評価減

購入、活用、資産組替評価減合計 ▲11億1,200 万円

評価減合計 ▲13億3,930万円

◇相続税の計算

対策前の財産 18億円

対策後の財産 4億6,070万円

基礎控除(相続人4人) 5,400万円

課税財産 4億670万円

相続税 1億450万円

※相続税の計算の仕方

配偶者 4億670万円÷2=2億335万円

    2億335 万円×45%−2,700万円=6,450万円

子 (4億670万円−2億335万円)÷3人= 6,778万円

計 6,450万円+4,000万円=1億450万円

 

◆対策後の相続力判定◆

【感情面】対策は家族の合意により、理解を得ている

【経済面】相続税85.52%減 6億1,750万円の節税

【収益力】総資産収益力32.55%

賃料収入1億5,000 万円/ 資産総額4億6,070万円

【対応力】納税は現金でできる見込みとなり、不安はなくなった

 

〇コンサルタントより

田中さんご夫婦の決断は早く、まずは8億円の高齢者住宅の建設は断りました。同じ立地に多額の借入をするデメリットのほうが大きいと理解されたのです。父親の理解を得て建設予定地は売却し、その代金を原資として、資産組替や購入が進みました。次世代を担う田中さんご夫婦の決断があってこそ、所有者の父親も説得できると言えます。この決断により相続税が大幅に節税できて、収益力が何倍にもなりました。

 

先祖代々の土地を守るだけでは相続税の納税のために売却するしかなく、結果、資産が減ってしまいます。しかし、同じ立地にある土地全部を活用するには無理があり、不安が大きいと言えます。こうした状況を変えるには、立地を変える資産組替をする方法が対策の優先順位となります。そうして、資産組替をすることで優良資産を持つことができ、相続も乗り切れます。

 

[図表4]
[図表4]

 

 

曽根惠子 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 

保手浜洋介 税理士法人アレース 代表社員

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