地方都市の「オフィス供給」は限定的…今後も賃料は上昇傾向!?

今回は、オフィスや物流施設、リテール(路面店舗)などについて、2018年のマーケットを振り返ると共に、2019年以降の見通しをまとめた特別レポート「不動産マーケットアウトルック2019」から抜粋し、地方中核都市のオフィス市場について現状と今後の展望を見ていきます。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

高稼働の札幌オフィス市場だが、賃料上昇は緩やか

[札幌のオフィスマーケット]

2018年には4年ぶりに大型ビルが竣工。空室を残しているものの、既存ビルに空きがほとんどないなか、コールセンターや人材派遣など、業務請負業の拡張や新規開設ニーズの受け皿となった。2019年には中型ビル2棟の新規供給(合計2,700坪)が予定されている。テナントからの引き合いは多く、高稼働での竣工が見込まれる。賃料の上昇傾向が当面続くものの、大型ビルで空室が残っているため賃料の上昇率は緩やかになる見通し。

 

[仙台のオフィスマーケット]

郊外からの立地改善のための移転に加え、自社ビル建て替えに伴う移転によって、2018年末時点の空室率は対前年比1.4ポイント低下する見込み。IT企業に対する補助金などのインセンティブが功を奏し、新規開設も増加した。IT企業は今後も仙台のオフィス需要を牽引するだろう。新規供給は2019年にはなく、2020年には複数の中型ビル(合計5,000坪程度)が予定されている。しかし、ワンフロアの広いビルの選択肢は依然として限定的であるため、大型ビルを中心に貸し手優位な状況が続くだろう。

東京周辺はオフィス需要も堅調に推移か⁉

[さいたまのオフィスマーケット]

2017年に続き、2018年も空室率は1%を下回る水準で着地する予定。新規開設や拡張などの移転ニーズは衰えを見せていない。わずかなスペースにテナントが集中するため、大型ビルのみならず、中小ビルでも募集条件を見直す動きが広がり、賃料は過去最高値を更新した。2021年まで新規供給の予定はなく、テナントが移転先を確保しにくい状態は今後もしばらく続くとみられる。賃料は向こう2年間で4.8%上昇する見通し。

 

[横浜のオフィスマーケット]

2018年は新規供給がない一方、新設・拡張による需要は堅調だった。需要の牽引役は、IT企業、自動車関連企業のほか、コワーキングオフィスなど。2017年に竣工した大型ビルで残っていた空室が一気に消化された。2020年には2棟合計2.5万坪が竣工する予定。そのうち、「みなとみらい」エリアの大型ビルでは国内大手メーカーの一棟借りが既に決定している。もう1棟は横浜駅直結の大型ビル。高い募集賃料にもかかわらず、リーシングは好調だ。今後、二次空室の発生によって空室率はわずかに上昇するとみられるものの、賃料は緩やかな上昇が続くと予想する。

 

[金沢のオフィスマーケット]

2018年は、業容拡大のための拡張に加え、立地改善を目的とした移転が続いた。採用に有利とみて金沢駅周辺を志向する企業が多い。そのため駅周辺のスペース不足が顕著になり、大型ビルを中心に募集賃料を引き上げる動きが目立った。2019年末には駅周辺で5年ぶりとなるビルが竣工予定。立地改善やオフィス集約などの受け皿として、引き合いは多いだろう。

空室率が低下する「大阪近郊」…在宅勤務推奨の動きも

[京都のオフィスマーケット]

2017年Q2以来、空室率は1%を下回る水準が続いている。新規開設や拡張のニーズは旺盛ではあるものの、受け皿不足でテナントの移転が実現しない状況が続いた。新規供給がないばかりか、オフィスがホテルに建て替えられるケースが相次ぎ、オフィスストックの減少も続く。そのため、テナントの間ではスペース確保をあきらめ、リモートワークを促進する動きが広がりつつある。今後も新規供給の予定はないため、賃料の上昇は続くと予想する。

 

[神戸のオフィスマーケット]

2017年と2018年、空室率は2年連続して対前年比で約2ポイントと大幅に低下。その結果、神戸も一気に需給がタイトな都市の1つとなった。2018年は市役所の建て替えによる移転需要が本格化したことが需要を牽引した。テナントの間ではスペースが無くなる前に確保しようとする動きが広がってきている。2021年まで新規供給は予定されていないため、空室率はさらに低下するだろう。賃料も引き続き上昇するとみられ、上昇ペースが加速する可能性もある。

 

[広島のオフィスマーケット]

過去最大規模の大型ビルの竣工が2019年に控えているため、2018年のテナントの動きは鈍かった。このため空室率も一年を通じて2%台後半と、前年とほぼ変わらない水準で推移した。しかし、オフィス環境改善のため、移転を希望するテナントは多い。2019年竣工予定の2棟はいずれも竣工時に90%程度の稼動が見込まれる。2020年以降には二次空室の発生により一時的に空室率は上昇するとみられるが、わずかな上昇にとどまるだろう。賃料は今後も緩やかな上昇が続くと予想する。

 

[高松のオフィスマーケット]

2018年はオフィス環境の改善を目的とする移転が相次いだ。高松は車社会が浸透しているため、中心部の立地というだけではテナントの人気を集めることはできない。しかし、中心部には設備の整ったビルが多く、結果として郊外から中心部への移転が増え、空室率は16年ぶりに8%を下回った。2019年以降も環境改善を目的とする移転は続くとみられる。その需要の受け皿となるようなビルに引き合いが集中している。設備グレードの高いこれらのビルを中心に、賃料は今後も上昇が続くと予想する。

盛況の「福岡オフィス市場」は空室率1%以下が続く

[福岡のオフィスマーケット]

2017年Q2以降、空室率は1%割れの状況が続いている。2018年Q2に2年ぶりの新規供給があったが、ほぼ満室稼動で竣工。新規開設や拡張を目的とする移転ニーズが旺盛のため、需給緩和にはつながらなかった。賃料は過去最高値の更新が続いており、2018年末時点の賃料の対前年伸び率は、2017年に続いて再び10%を超える見込み。2020年までに複数の新規供給の予定があるものの、新規開設や拡張ニーズの引き合いが多い。二次空室は発生しない見込みであり、需給がタイトな状況が続く見通しである。今後も賃料上昇の勢いは続くだろう。

 

[図表1]地方都市の空室率・賃料の推移※上記いずれも各年Q4の数値。2014-2017年は実績値。2018年以降は、2018年11月末時点の予測値(出所:CBRE、2018年11月)
[図表1]地方都市の空室率・賃料の推移※上記いずれも各年Q4の数値。2014-2017年は実績値。2018年以降は、2018年11月末時点の予測値(出所:CBRE、2018年11月)

 

[図表2]地方都市の新規オフィス供給 *は開発区画全体の面積(出所:CBRE、2018年11月)

[図表2]地方都市の新規オフィス供給 *は開発区画全体の面積(出所:CBRE、2018年11月)

 

 

関連レポート:動産マーケットアウトルック2019

 

CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やファシリティマネジメント(FM)などの18の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、半世紀近くに亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。

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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P 500」にランクされ、ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2018年の売上ベース)。全世界で90,000人を超える従業員、約480カ所以上の拠点(系列会社および提携先は除く)を有し、投資家、オキュパイアーに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。

写真は、リサーチ エグゼクティブディレクターの大久保寛氏。
CBREのリサーチ部門の責任者として、オフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場ならびに売買市場のリサーチ業務を統括。製鉄会社および投資銀行勤務を経て1997年から2013年まで証券アナリストとして株式リサーチ業務に従事。2000年からはJREITを中心に不動産セクターを担当。UBS証券、ゴールドマンサックス証券、マッコーリーキャピタル証券、みずほ証券を経て、2013年10月より現職。

著者紹介

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※本連載は、シービーアールイー株式会社(CBRE)が発表するレポートから一部抜粋し、転載したものです。今回の取り上げたレポートはこちら
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