今回は、オフィスや物流施設、リテール(路面店舗)などについて、2018年のマーケットを振り返ると共に、2019年以降の見通しをまとめた特別レポート「不動産マーケットアウトルック2019」から抜粋し、物流施設マーケットの現状と今後の展望について紹介します。※ロサンゼルスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社のシービーアールイー株式会社(CBRE)。本連載では、そのリサーチ部門が世界の不動産市場の最新情報をお伝えします。

「eコマース」の成長で拡大が続く物流センター市場

eコマースに象徴される消費社会の変化は、物流量の増大につながっている。そして、人手不足を背景に、物流拠点の再配置や自動化投資など、物流機能も大きな変革期を迎えている。今や重要な社会インフラのひとつである物流の量と質の変化を吸収し、大型物流不動産マーケットは2020年まで堅調な拡大を続けるだろう。

 

日本のeコマースの販売額は2017年に16兆5,000億円を超え、EC化率は5.8%(経済産業省)まで上昇した。しかし、米国のEC化率8.9%(U.S. Census)と比較するとまだ低く、日本のeコマース市場にはいまだ成長の余地があろう。大手eコマースは商品の品揃えを増やすことによって、店舗中心の小売業やメーカーはeコマース対応にシフトすることによって、倉庫需要のドライバーであり続けている。

 

また、商品の補充を配送に頼るコンビニエンスストアやドラッグストアなどの小型店舗は増え続け、物流センターを拡充し続けている。そしていずれの業態においても、雇用不足対策のための自動化装置やロボティクスの活用を積極的に図ろうとしている。これらが、先進的な大型物流施設の需要拡大の背景にある。

 

一方で、トラックドライバーは不足し、輸送費は高騰している。そのため、全国の消費地に近い場所に物流の拠点を開設するなど、拠点戦略の見直しが急務になっている。地方中核都市の周辺でも、在庫容量を増やすため物流センターを拡充する機運が高まっている。こうした物流業界の状況こそが、大型物流施設への旺盛なニーズにつながっている。まとまった面積を確保するために、竣工前の物件を物色する傾向が強まっているため、立地や設備仕様が優れた物件のリーシングペースは加速している。

 

現在の需要拡大は、景気回復というよりもむしろ、物流業界の構造的な変化によるものであるといえる。したがって、首都圏、近畿圏、中部圏いずれにおいても、高水準の供給が続くにも関わらず、需給バランスが大きく崩れることはなさそうだ。

首都圏における実質賃料は、今後も上昇基調を維持

[首都圏の物流マーケット]

首都圏の大型マルチテナント型物流施設(Large multi-tenant logistics properties=LMT)の新規供給は、2018年に460,000坪、2019年に620,000坪と、2年連続して過去最高を更新する見込みである。この2年間の新規供給合計は、2017年末時点のストックの40%以上に達する。とはいえ、eコマース系企業や物流企業がまとまった床を確保するために、竣工前の物件への移転を決める事例も多い。そのため、空室率は今後上昇するものの、2019年Q4時点の空室率は6.3%程度にとどまると予想している。

 

2020年の新規供給は今のところ330,000坪と、2年続いた大量供給はひとまず一服するとみられる。そのため、2020年の空室率は低下に転じ、2020年Q4時点での空室率は5.8%と予想する。首都圏の実質賃料は、2018年Q4時点で対前年同期比+1.5%の4,130円/坪となる見込み。旺盛な需要を背景として今後も上昇基調を維持しよう。2020年Q4までに2.2%の上昇を予想する。

 

圏央道エリアとそれ以外のエリアとの空室率の格差は大きく、今後もしばらくはこの状況が継続しよう。2020年末までのエリア別空室率は、圏央道エリアは20%前後で高止まりするとみている一方、それ以外の3エリアでは5%未満の低位で推移すると予想している。新築物件については、立地だけでなく仕様の違いによってもリーシングのペースに差がみられる。2019年に竣工が予定されている物件では、ランプウェイがついている物件のリーシングが特に順調に進んでいる。ボックスタイプの場合、上下階搬送が必要であることに加えて賃貸面積の柔軟性が低い。そのため、大量供給によって物件の選択肢が豊富な現在の環境下では、ランプ付物件と比べてボックスタイプは選ばれにくくなっている。

 

東京ベイエリアでは、2018年Q3に1年ぶりの新規供給があったが、当該物件は2017年末時点で既に満室稼働となっていた。このエリアの既存物件で退去テナントが出た際には、後継テナントが短期間で決まっている上、より高い賃料で契約しており、需要の強さを示している。2020年末までの今後2年間で3棟竣工予定であるが、複数物件で一部の床が既に決まりつつある。実質賃料は2018年Q4時点で対前年同期比+2.4%の6,740円/坪の見込み。2020年末時点の賃料は、対2018年末比で1.3%の上昇を予想している。

 

外環道エリアでは、2018年Q1に竣工した1物件を除き、LMTの空室が全くない。2019年竣工予定の複数物件についても順調にプレリーシングが進んでおり、既に満床となっている物件もある。このエリアの人気の理由は、周辺に住宅地が広がっているため雇用確保に安心感があること、そして都心に近いためeコマースが抱えるラストマイルの配送ニーズとも合致することにある。このエリアでは今後も空室率は2.0%以下で推移し、タイトな需給バランスが続くだろう。実質賃料は2018年Q4時点で対前年同期比+3.2%の4,810円/坪の見込み。2018年の賃料上昇率は首都圏4エリアの中でもっとも高くなる見通しである。2020年末時点の賃料は、対2018年末比で+4.6%と、首都圏4エリアの中でもっとも高い上昇率を予想している。

 

国道16号エリアの新規供給は、2018年に230,000坪、2019年に360,000坪と2年連続で過去最高を記録する見込み。2年間の合計590,000坪は、2017年末時点における当エリアのストックの45%に相当する。しかし、幹線道路網が発達していることから配送先への利便性が高く、需要は旺盛である。当エリアは首都圏ストックの約60%を占める最大のエリアでありながら、3,000坪以上のまとまった床を確保できる物件はQ4に竣工予定の物件を含めても3棟のみ。今後竣工が予定されている物件のプレリーシングも順調で、2019年に竣工を予定している物件のうち、複数が既に満床となっている。したがって、新規供給が多いにも関わらず、2019年Q4時点の空室率は3%を下回ると予想している。

 

2020年に予定されている新規供給は今のところ180,000坪と、2019年の半分にとどまる見込み。このことから、2020年に空室率は再び低下に転じると予想している。実質賃料は、2018年末時点で対前年同期比+1.2%の4,090円/坪の見込み。2020年末時点の賃料は、対2018年末比で1.5%の上昇を予想している。

 

圏央道エリアでは、2016年以降3年連続で年間100,000坪を超える供給があり、ストックは3年間で約2.7倍に急増した。大量供給の影響で空室率は上昇を続け、2018年Q4時点では19.2%になる見込み。2019年以降の新規供給は減少すると予想されるものの、隣接する国道16号エリアで大量供給が見込まれていることから、空室率は高止まりするとみられる。2020年Q4時点の空室率は20.8%を予想している。ただし、新規供給物件の中には引き合いが強いものもある。利便性が比較的高く、雇用面で有利な立地の物件ではプレリーシングが順調に進んでいる。実質賃料は、2018年Q4時点で対前年同期比+1.5%の3,280円の見込み。ただし今後は、高い空室率を背景として下落すると予想している。2020年末時点の賃料は、対2018年末比で-1.8%と予想。

 

※LMTとは、延床面積が10,000坪以上(中部圏の場合は5,000坪以上)の倉庫であり、原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企画・設計された施設のこと。

 

[図表1]首都圏物流センターの空室率(出所:CBRE、2018年11月)

[図表1]首都圏物流センターの空室率(出所:CBRE、2018年11月)

 

[図表2]首都圏物流センター実質賃料指数(CBRE、2018年11月)
[図表2]首都圏物流センター実質賃料指数(CBRE、2018年11月)

近畿圏でも「空室率」低下!新規需要は最高値を記録か

[近畿圏の物流マーケット]

近畿圏で過去最大の新規供給(290,000坪)を記録した2017年を経て、2018年Q1に空室率は21.2%へ上昇した。しかし、これをピークに低下傾向をたどり、空室率は2018年Q4時点で13.4%となる見込みである。空室率が低下した要因は、大きく3つ挙げられる。一つには、湾岸部の需要回復。域内の拡張ニーズを中心に、滞留していた空室が大きく消化された。二つ目は、大阪から京都にかけての内陸部で、テナントの引き合いが予想以上に強かったこと。2018年竣工物件はほぼ満床で稼働した。三つ目は、兵庫県内陸部でもテナントの引き合いが強かったことである。供給により、周辺に点在する工場や物流拠点の拡張ニーズが顕在化した。

 

2018年の新規供給は200,000坪と、前年末のストックの20%程度と決して小さくなかった。しかし、前述のような要因により新規需要は供給を上回り、過去最高の230,000坪となる見込みである。2019年の新規供給100,000坪は、過去3年間の平均の半分程度にとどまる。足元の堅調な需要を背景に、空室率は2019年Q4に11.8%に低下すると予想する。しかし、2020年に入ると、兵庫県尼崎市で延床面積110,000坪を超える国内最大規模の開発計画がある。利便性の高い立地ではあるが、1棟でこれだけの面積を埋めるにはやや時間を要すると考えられ、空室率上昇は避けられないだろう。この物件を含めて2020年には合計230,000坪の新規供給が見込まれるため、2020年Q4の空室率は14.6%と予想する。

 

実質賃料は、2015年Q4の3,840円/坪をピークに下落し、2018年Q3までに3,480円/坪と9.4%下落した。しかし、空室率の改善にともなって2018年Q4には3,530円/坪に上昇する見込みである。賃料上昇は13四半期ぶりで、近畿圏の賃料は底を打ったといっていい。大阪府内陸部では強いテナント需要を背景に賃料の上昇基調が続くとみられ、湾岸部の賃料水準も持ち直すとみられる。その一方で、中心部から離れた兵庫県内陸部での竣工が増えることで、全体の賃料の伸びは抑えられる見込みである。

 

[図表3]近畿圏物流センター空室率と実質賃料指数(CBRE、2018年11月)
[図表3]近畿圏物流センター空室率と実質賃料指数(CBRE、2018年11月)

中部圏では、エリアごとの稼働率に差が生じる可能性も

[中部圏の物流マーケット]

中部圏では2018年に40,000坪の新規供給があり、2017年からの2年間でストック面積は約1.9倍に急拡大した。空室率は、2018年Q1に10.6%へ上昇したものの、その後は供給がなかったため順調に低下した。2018年Q3時点で空室を抱えた物件はわずか2棟となっている。空室率は2018年Q4時点では4.1%と、2016年Q4以来の水準まで低下すると見込む。

 

2019年の新規供給は100,000坪と、中部圏で過去最大となる見込みである。計画されているもののうち、名古屋市内や小牧市の物件のテナント内定状況は好調なようだ。一方で三重県桑名市の開発は、延床面積約50,000坪の中部圏最大級の物流施設であることに加えて、新興エリアの立地であることから、稼働が高まるまでには時間を要する可能性がある。正式に発表されたものはまだないものの、2020年の計画は全体で60,000坪程度にとどまる可能性がある。

 

それらに鑑みると、空室率は2019年に最大14%程度まで上昇するが、2020年Q4には10.6%に低下すると予想する。空室率は比較的高めに推移するとしても、名古屋市中心部にアクセスのよい立地では、依然として物件の選択肢は限られた状態が続く。そのため、2020年Q4時点の実質賃料は、2018年Q4比0.6%の緩やかな上昇基調が続く予想である。

 

[図表4]中部圏物流センター空室率と実質賃料指数(CBRE、2018年11月)
[図表4]中部圏物流センター空室率と実質賃料指数(CBRE、2018年11月)

 

 

関連レポート:動産マーケットアウトルック2019

 

※本連載は、シービーアールイー株式会社(CBRE)が発表するレポートから一部抜粋し、転載したものです。今回の取り上げたレポートはこちら
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