今回は、人の怒りのプロセスの中で怒られないように対応する「起承転結法」の概要と、「起承転結法」のうち「起の術」について見ていきます。※本連載では、シニア産業カウンセラー・研修講師の宮本剛志氏の著書、『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)の中から一部を抜粋し、怒りのメカニズムと周囲の怒りに正しく対応する方法を紹介していきます。

人の怒りを鎮める「起承転結法」

「怒り」の消火、4つのタイミング

 

ここでもう一度の第1回(関連記事『キレる上司に憂鬱…「怒っている人」から自分をどう守るか?』)でも取り上げた、下記図表を見てください。

 

[図表]怒りには一連の流れがある
[図表]怒りには一連の流れがある

 

「怒り」には発火点から大爆発までの流れがあります。観察法は、この流れ全体を俯瞰する技術でもあります。

 

観察法では、発火点を見過ごさないという、防火対策で言えば日ごろの心掛けの技術を紹介しました。読者の中には「それで済めば苦労はない」と感じた人もいたかもしれません。

 

「怒り」の多くが相手の理由による理不尽なものであるため、多くは「不意打ち」「飛び火」でなかなか事前の予測が成り立ちません。

 

しかし、相手の「怒り」の状況を分析し、うまく対応すれば、鎮火や消火に導くように風向きを変えたり、自分が避難したり、巻き込まれる被害を避けることが可能です。

 

「怒り」の性質とその消火法を4つのタイミングに分類した対処術を、私は「起承転結法」と呼んでいます。

 

この対処術を、「怒り」の流れの個々のタイミングで用いることで、その場を乗りきる緊急避難にも使えますし、流れ全体の要所要所で連携させて使うことで、相手との人間関係の改善まで持っていくことも可能です。

 

「怒り」の対処が難しいのは、他人が相手だからです。個々の「怒りの理由」はさまざまで、状況により複雑化します。

 

しかし、この「起承転結法」の「極意」を頭に入れておけば、被害や悩みを徐々に和らげ、解決に向かう第一歩を自分で踏み出すことができるでしょう。

 

「怒り」の初期消火の4つのタイミング
「怒り」の初期消火の4つのタイミング

怒りやすい「時」や「場所」を見極める

 「起」の術   「怒り」のスイッチを探す

 

最初は「起」の術。「そのタイミングはNG」という「怒り」のスイッチを持つ人がいます。例えば次のようなタイミングや状況に「怒り」のスイッチが隠れています。

 

何度も言いますが、すべて相手の理由による理不尽なものです。でもそうしたものにあなたは振り回されているのです。

 

時期

前後の事情に関係なく、その「時」は、何に対しても、誰に対しても「怒り」のスイッチが入ります。例えば次のような時です。

 

●月曜日の朝(仕事がおっくう、憂鬱。そんな時に難題を持ってくるな)

●就業時間終了の直前(もう帰りたいのに、相談ならもっと早くにしてほしい)

●梅雨の時期(気圧や湿気で体調も気分も悪い。新規案件は考えたくない)

●月末、または月初(ノルマのプレッシャーで頭がいっぱい)

●午前中(昨日の疲れが残っている。午後でもいいだろう)

●会議の直前(準備で緊張しているのに、気を散らさないで)、など。

 

場所

どうしても苦手な場所が人にはあります。その人にとってトラウマになっている失敗や嫌な経験が記憶にひもづいているのかもしれません。

 

●狭い部屋(周囲の視線にも圧迫感を感じてしまう)

●会議室(メンバーに関係なく、発言したり意見を言うのに緊張する)

●酒席(ついつい気が緩んで、抑制の利かない言動をしてしまう)

●取引先や出張先(相手の評価や仕事への影響で頭がいっぱいになる)、など。

 

体調

体の不調は、不安やイライラの原因でもあり、外に向かって攻撃的にもなります。

 

●空腹(血糖値の低下、神経の高まり)

●眠気(考えがまとまらない、能率が下がっている)

●高揚(テンションが高まり、攻撃的な言動になる)

●低調(気分が優れず、イライラし、否定的になる)、など。

 

やりとりの状況

対面では、表情や動作などで伝わる情報も、ツールを間にはさむと誤解を生じさせることがあります。

 

●電話(いきなりかかってくる)

●eメールやLINEでのやり取り(文章がぶしつけで非礼に感じる)、など。

 

「起」の術は緊急避難

 

自分勝手なスイッチがある人でも、職場が同じ人、取引等でよく顔を合わせる人であれば関係を絶つことはできません。

 

観察し、発火のパターンを見極める。すると発火点に気付けるようになり、すぐ距離を取る、やり過ごす、巻き込まれないなどの緊急避難が可能になります。これが「起」の術です。

 

起の極意

怒りのスイッチは無数にある

相手の体調、習慣、記憶など、その理由はさまざま。押してみるまでスイッチの場所は分からない。

 

スイッチを押したことを自覚する

なぜ怒られているのか分からない、という不安よりも、あれが「怒り」のスイッチだったのかと自覚できた方が、その後の対処も考えられる。

 

スイッチの所在の目星が付いたら、観察法でその因果関係を把握し、スイッチに関わる時間や場所では、距離を取る。午前中がスイッチなら午後まで待つことで、真逆の対応を引き出せることも。

 

「怒り」のスイッチの入らない時と場所を狙って、コミュニケーションを試みれば、出会い頭の被害の多くは避けられるようになるでしょう。

 

それでもスイッチを押してしまった場合は、次の「承」の術で対処してみましょう。

 

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

宮本 剛志

時事通信社

他人の怒りに悩む人が増えています。 しかし、その悩みに振り回される必要はありません。 喜怒哀楽の感情は、本来、自分の中から湧き起こるものです。それなのに、なぜ、あなたの「哀」が他人の「怒」によって生まれ、それ…

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