「もしやパワハラなのでは…」と怒る上司を不安にさせる方法

※本連載では、シニア産業カウンセラー・研修講師の宮本剛志氏の著書、『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)の中から一部を抜粋し、怒りのメカニズムと周囲の怒りに正しく対応する方法を紹介していきます。

咄嗟の対応が難しいなら素直に気持ちを伝えてみる

 相手えるスキル③  正直える

 

とっさの対応が難しい場合

 

これまで、「怒られるとボーッとしてしまい何も考えられなくなる」「怒っている人を目の前にすると気持ちがキューッと縮こまってしまう」「自分の中をグルグルさまよって出口が見えない」などの状況を変えるために、「視野を広く持つ」「状況を客観視する」ことで相手の「怒り」に巻き込まれない対策を紹介してきました。

 

あなたにも、かなり「怒り」の本質、怒っている人の実像が見えてきたと思います。しかし、実際の「怒る・怒られる」の現場では、まだまだその場での状況分析やとっさの対応は難しいかもしれません。

 

怒られている人と同様に、怒っている人も状況の波にのみ込まれ、「怒り」がエスカレートすると状況や自分の姿が見えなくなってしまいます。相手を変えるスキル①の「傾聴・伝え返し」は、相手の言葉が自分に届いていることを伝える技術でしたが、ここでは、相手の「怒っている姿」を「見える化」するスキルをご紹介します。

 

その方法は簡単です。「怒られるのは怖い」「怒られるのはつらい」「怒られるのは苦手」だということを率直に相手に伝えるだけです。

 

相手の気付いていない姿を伝える

 

怒っている人は、多くの場合、「君は自覚していないだろうが、私には分かっているから忠告するんだ」と、あくまでこちらの無理解を前提に「怒り」をぶつけてくることが多いものです。「君は自覚していない」を根拠に、「自覚するまで」「分からせるまで」が相手の目標です。

 

これはきついですね。実際には「いえいえ、そうした点は十分に理解しています」と思っても、今、まさに怒られている状況では、とても言い返すことはできません。もし、言い返したなら「怒り」はさらにふくれあがるでしょうし、かと言って冷静に「傾聴・伝え返し」のスキルを使う余裕がない時はどうすればよいのでしょうか。

 

そういう時は、「怒られていて怖い自分」を相手に素直に伝えます。

 

例えば「あの、申し訳ないのですが、そんなに怒鳴られると怖くて何も言えなくなってしまうんです」でもよいでしょう。相手が、あなたのために怒っている、または、仕事上のことだからハッキリ言っている、と思っている場合、「えっ!」と驚いたような反応をするはずです。あなたを懲らしめたり、やっつけたりする意図がそもそもないからです。または「これって、もしやパワハラなのでは」と自分の言動に対して不安になるかもしれません。

 

「いや、そんなつもりで言ったんじゃないんだ」と、いったん落ち着いてくれたなら、「お叱りや、ご指摘は伺います。ですので、そうやって怒るのはかんべんしてください。何も聞けなくなってしまうのです」と、さらに「怒られていて怖い自分」を伝えてみます。

 

あなたが「怒られると、萎縮して、考えが止まってしまう」ことをオープンにすることで、相手の姿勢そのものを変え、「怒る」という手段を考え直すことも期待できます。これはLINEやメールで怒ってくる人にも有効です。印刷して、そのまま相手に見せてください。印刷したメールの文面を見せながら「これだけご指摘いただいているのですが、どうお返事したらいいのか困ってしまいました」と伝えてみましょう。

 

相手は「自分の姿」が見えていない
相手は「自分の姿」が見えていない

怒りを鎮めて話を本題に戻すために「話題を変える」

 自分るスキル①  話題える

 

「怒り」を着地させ、話題を変える

 

相手を変えるスキル②「好意の返報性」(参照記事『怒りのピークは6秒間だが…「さらに怒り続ける人」への対応法』)では、相手の怒っているポイントを、「今、やっと気付きました」としっかりキャッチして相手に投げ返し、「怒り」の流れを変えました。これは対面でのコミュニケーションを進める上で有効です。

 

しかし、会議の場や商談の場などでは、もう少し事務的な対処も可能です。相手の「怒り」に1回区切りをつけて、話を本題に戻すために「話題を変えて」しまうのです。ここで「それは逆に言うと、こうも言えますね」といったフレーズは、かえって「怒り」を買うので禁句です。「怒り」は受け流す場合でも、基本は「受け止める」です。次のようなフレーズを使ってみましょう。

 

「たしかに、おっしゃる通りです。その話に関連しているかもしれないのですが、A社の担当から興味深い話を聞きました。実は…」

「なるほど。そういえば、今、思い出したのですが、私の取引先にも同様のことを話してくれた方がいました。その人の場合…」

「話の腰を折ってすみません。今のお話に直接関係はしないのですが、いい機会なのでお耳に入れていただきたい案件がございます」

 

「怒り」を発している時は、何かしら課題解決に向けた意志を伴っているので、多少脇道にそれた話題でも、「何だ、言ってみろ」と許容されるのです。当人が、振り上げた拳の降ろしどころを決めあぐねている場合などはなおさらです。ひと通り話して、相手の「怒り」のピークも過ぎ去っているなら、クロージングに向かいましょう。こんな感じです。

 

「ご指摘をいただいたことで、いくつも気付きがありました。ありがとうございました。一度、これを取りまとめて整理するお時間をいただけますでしょうか。また改めてご連絡いたします」

 

シニア産業カウンセラー 研修講師

1976年生まれ。16年間、一部上場企業(ベネッセグループ)にて事業所責任者・本社課長・相談室長(部長職)として、社内マネジメント業務に加えて、研修や相談対応・社員面談を実施。危機管理やコンプライアンス対策の業務も担務として、健康的で働きやすい組織づくりに取り組む。
現在は、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 アンガーマネジメントシニアファシリテーターとして活動。企業・官公庁・学校にて、年間約150回の講演や研修。年間延べ約320人のカウンセリングを行う。

著者紹介

連載もうガマンすることはない!怒る上司を静かにさせる「起承転結」対応術

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

宮本 剛志

時事通信社

他人の怒りに悩む人が増えています。 しかし、その悩みに振り回される必要はありません。 喜怒哀楽の感情は、本来、自分の中から湧き起こるものです。それなのに、なぜ、あなたの「哀」が他人の「怒」によって生まれ、それ…

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