職場のどうしてもイヤな人から身を守る「無関心の壁」とは?

※本連載では、シニア産業カウンセラー・研修講師の宮本剛志氏の著書、『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)の中から一部を抜粋し、怒りのメカニズムと周囲の怒りに正しく対応する方法を紹介していきます。

尊敬できない相手の「一挙手一投足」が気に障る…

 自分るスキル②  無関心

 

「どうしてもイヤ」という相手には

 

仕事上、関係性を維持しなければいけない取引先や、仕事を学ぶ上で何とかついていきたい相手。パワハラやストーカー的な「言葉の暴力」の被害はなく、一方的な「怒り」を回避できれば人間関係を改善したい相手…。関係改善が望める、あるいは関係改善をしたい相手には、これまで見てきたようなスキルを生かした積極的な関係改善を行うことを勧めます。

 

しかし、中には「どうしても、人として尊敬できない」「むしろ反面教師として、ああはなりたくない見本」という人が、職場にいることもあります。そうした事例を次に見てみましょう。

 

Hさん(20代・男性)は、学生時代から優秀で、そうした人材が集まる企業で働いています。業務内容はハードですが、誰もが自分を奮い立たせ、いくつものハードルを越えて実績を重ねています。Hさんもその一人です。仕事には、まったく不満はありません。ただ1点、部署の先輩(40代)の存在を除いては…。Hさんは、その先輩に気が滅入っています。

 

会社は、仕事がハードな半面、成果を出す人の昇進は早いのです。しかし、いったん第一線の現場から外れてしまうと、昇進はまずありません。その一方で、昇進コースから外れた人は、ワークライフバランスが取れた「楽な勤務」ができます。その「楽」な状況にどっぷり浸かり、Hさんいわく「チャラチャラした言動」の先輩がいるそうです。その先輩は自分はろくに仕事をしないのに、若手に「そんなやり方だから残業が増えるんだよ」「もっと効率よくできないのか」「だめだな」と「指導」して回るのが、Hさんには耐えきれないと言います。

 

「顔を見るのもイヤだ」「信じられない」と、Hさんの先輩に対する評価は散々です。「あんな人にはなりたくない」という思いも、仕事を頑張る理由の一つだそうです。ネチネチと指導されるのはHさんだけでなく、対象は職場全体のようです。中には軽く受け流してうまく対応している同僚もいます。しかし、Hさんは、そのチャラチャラした先輩の一挙手一投足が気に障り、気持ちがすり減ると言います。

イヤな相手を、不満や不安の対象から外すには?

一番確実な距離の取り方は「無関心」

 

私はHさんに改めて質問しました。

 

「あなたは、将来、そういう人間になりたいですか?」

 

もちろんHさんは「いいえ!」と即答します。「だから、当然なんですよ」と私が言うと、Hさんは「え?」とけげんな顔をしました。私はこう説明しました。

 

「そんな尊敬もできない、どうしてもイヤな人物と接したら、イライラしたり、不安になったりするのは当たり前です。まして、そんな人に怒られたら気分も悪くなる。それはHさんが健康的な判断力を持っているからです。安心してください」

 

職場という「聖域」で、正当な理由があっても不満を抱くことは、どこか「自分が間違っているんじゃないか」という迷いが生じて、それも「不安」の一部になります。でも、イヤなものはイヤでよいのです。まず、そこからスタートしましょう。

 

「Hさん。そうは言っても、そこは職場で相手は先輩です。仕事の指導もパワハラとまで言えないのなら、相手のスタイルの範囲内です。Hさんは、そうした『支配』の仕組みの中に今はいるんです」

 

「支配」と聞くとおだやかではありませんが、組織や制度の「仕組み」と考えればいいでしょう。もちろん仕組みを変える努力も必要ですが、今回の場合「支配」の中にたまたま自分の気持ち(価値観)として許せない先輩がいるのです。その状況を、Hさんにはしっかり把握してもらいました。

 

その上で「ああはなりたくない」のですから、私からのアドバイスは「無視」することです。この「無視」は、態度で示す必要はなく、心の中で相手を「無関心」の対象としてしまえばよいのです。何か言われても適当にあしらって対応すればいいと決め、具体的には、「うなずく」、または「口角を上げて(にこっとして)返事をする」で表面的に応対する。これはちょっと練習すればすぐにできるようになります。

 

そして、相手はこの心にもない対応に意外に気付かないものです。むしろ「あれ、この人、感じ良くなったな」と錯覚し、イヤな対応を控えることも期待できます。職場であれば、いずれ人も入れ替わり、「支配」の関係は一時的なもので終わります。あなたの未来にイヤな人はいないのです。ですから、今は「無関心」の壁をつくることで、不満や不安の対象から外してしまいましょう。

 

株式会社メンタル・リンク 代表取締役

シニア産業カウンセラー・研修講師
1976年生まれ。16年間、一部上場企業(ベネッセグループ)にて事業所責任者・本社課長・相談室長(部長職)として、社内マネジメント業務に加えて、研修や相談対応・社員面談を実施。危機管理やコンプライアンス対策の業務も担務として、健康的で働きやすい組織づくりに取り組む。
現在は、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 アンガーマネジメントシニアファシリテーターとして活動。企業・官公庁・学校にて、年間約150回の講演や研修。年間延べ約320人のカウンセリングを行う。

株式会社メンタル・リンク → https://mental-link.co.jp/

著者紹介

連載もうガマンすることはない!怒る上司を静かにさせる「起承転結」対応術

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

こんなの理不尽! 怒る上司のトリセツ

宮本 剛志

時事通信社

他人の怒りに悩む人が増えています。 しかし、その悩みに振り回される必要はありません。 喜怒哀楽の感情は、本来、自分の中から湧き起こるものです。それなのに、なぜ、あなたの「哀」が他人の「怒」によって生まれ、それ…

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