「自己資金ゼロでも不動産投資ができる」と不良物件を掴まされる投資家が後を絶ちません。本連載では、株式会社ファミリーエージェント取締役社長渕淳氏著書、『中古一棟収益物件攻略完全バイブル』の中から一部を抜粋し、不動産投資初心者のために、具体的な物件の購入方法などを紹介していきます。

価格を大きく下げる物件では、利益は絶対出ない

不動産投資では、物件を所有することで得られる家賃収入(インカムゲイン)と物件を売却することで得られる売却益(キャピタルゲイン)という、大きく2つの利益がもたらされます。この2つの利益は、利益に課税される税金を節税することによっても増やすことができます。また、キャピタルゲインについては、ローンの残債を減らすことでも増やすことができます。

 

そして、不動産投資で気をつけなければいけないことは、投資対象である物件の収益性と資産性の両方を見極めることです。物件の収益性と資産性の両方を見て、投下した資本が減らないような物件を購入しなければ意味がないのです。それが理解できれば、不動産会社に騙されて純資産を減らすということもありません。

 

さらに、純資産を増やす上で重要なことが、お金の時間価値です。お金の時間価値とは、すなわち、明日もらうお金よりも、今日もらうお金の方が価値が高いということです。つまり、利益はなるべく短期間で確定すること。不動産業者の口車に乗って、銀行融資の最大期間である30年や40年といった長期的な期間で投資をすべきではないということでした。

 

こうしたことを踏まえて、具体的にどのような物件を購入すればいいのか詳しく見ていきたいと思います。

 

最も大きなポイントは「“売る時”に物件価格が下がらないものを適切な価格で、適切なローンで買う」ということです。結論からいうと、「東京経済圏にある、都内へ電車で60分ほどでアクセスできる築20 年以上のアパートを購入する」ということです。

 

なぜ、そのような物件は価格が下がらないのでしょうか? 具体的に説明していきましょう。

 

価格が下がらない物件とはどのような物件なのか。投資対象である収益物件は、2つの要素で価格が動きます。一つは物件の「収益性(実質利回り=収益率)」です。もう一つは、物件そのものの「資産性」です。この2つの要素によって物件が下がる理由は、大きく分けて次の5つの理由があります。

 

(1)家賃収入が低下する 

 

収益物件の場合、家賃収入が低下すれば、収益物件の評価額にも影響があります。収益物件相場は収益率で成り立っているので、収益率のもとになっている家賃収入が下落すれば、物件の価格も下がることになります。

 

例えば、次のようなケースです。

 

 年間賃料が500万円で相場利回りが10 %の場合、

 年間賃料500万円÷相場利回り10%=物件価格5000万円

 

となります。

 

ところが、家賃収入が減り、年間の賃料が400万円で100万円減ってしまったとしまし

ょう。相場利回りがそのまま10%で変わらない場合は次のようになります。

 

 年間賃料400万円÷相場利回り10%=物件価格4000万円

 

家賃が年間で100万円減っただけでも、相場利回りが変わらなければ、物件の価格は1000万円も減ることになります。

 

家賃収入が低下するケースで全般的に多いのは、大学がある駅に収益物件を持つケースです。入居需要がほとんど学生に依存しているため、大学の事情で入居状態が大きく変化します。物件が駅から遠いとか近いとかは関係ありません。

 

万が一キャンパスが移転してしまったら、駅から近くても賃貸需要が見込めない物件になります。また、最近では大学自身で寮などを建築してしまう事例もあります。大学そのものが移転するわけではありませんが、大学寮などの住居施設ができると、学生は経済的な理由などで大学寮を選ぶ確率が高くなります。そうすると入居需要が減り、その結果、空室が続いて家賃収入が減り、収益率にも大きく影響していくというわけです。

駅近物件=収益性や資産性が高いわけではない

物件の立地条件として、駅から近いというのは確かに理想的です。しかし、駅からの距離というのは物件を選ぶ時の一つの要素に過ぎず、駅から近いからといって収益性が高いわけでもなければ資産性があるわけでもありません。そのことをよく注意すべきです。

 

サラリーマンで不動産投資をスタートする人が、物件選定で間違ってしまいがちな基準が3つあります。

 

一つは、「金利が低いから購入する」、2つ目は「建物が新しいから購入する」3つ目は「駅から近いから購入する」という3つです。これまで紹介したように、金利がいくら低くても、収益性や資産性が低い物件に投資することになれば、純資産は増えません。建物が新しくても家賃と建物評価が同時に下がるので、売却時期を見極めないと純資産が増えません。それと同じように、駅から3分の物件でも投資に値しない物件は山ほどあります。

 

例えば、こんな話があります。

 

ある私鉄の特急の停車駅から徒歩3分のアパートを購入した、サラリーマン投資家がいました。内見した時には全10室のうち2室が空室になっていたそうです。立地の強みもあったので、空室になってもすぐに埋まるだろうという考えで、購入を決定しました。

 

ところが、中々空室は埋まらず、それどころか逆に大口の法人の契約も切れて、空室が一気に5室になってしまいました。広告料を半年分出すことにしましたが、それでも埋まらない状況が続きました。 

 

広告料を上乗せしても空室が埋まらない理由は、物件のあるエリアの家賃が毎月のようにどんどん下がり続けていたからです。結局、家賃を購入当初の半額まで落として、やっと3室を埋めたそうです。なぜいつまでたっても空室が埋まらなかったのか? それはそのエリアの入居者にとって駅近にメリットが全くなかったからです。 実はその停車駅には大学が3つありました。その大学が学校で寮を運営することになり、入居需要がそちらに流れてしまったそうなのです。

 

また、学生以外に工場で働く人の入居需要もありましたが、なんと工場が閉鎖され、工場で働いていた人の賃貸需要がゼロになってしまったそうです。駅から3分でも、そもそも入居需要がなければ駅近のメリットは活かせません。

 

むしろ、駅から徒歩15分でもそれ以外の要因が優れていれば、そちらに投資をした方がいいでしょう。「駅近」と「金利」と「新築」の魔力に惑わされてはいけません。駅近は不動産投資をする上で有利なことは確かです。しかし、駅から3分でも賃貸需要がないところもあります。

 

それは、そもそも駅の乗降客数が少ないという問題です。乗降客数は投資に値するギリギリで1日2万人ぐらいです。それ以下の乗降客数だと賃貸需要が特定の要因に依存することになります。投資環境が大きく変わりやすく、その結果、物件の収益性、資産性が大きく低下するので初心者には不向きな物件です。

 

 

長渕 淳

株式会社ファミリーエージェント 取締役社長

 

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幻冬舎メディアコンサルティング

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