重要なのは、次の購入者が融資を受けやすいかどうか
これまで何度か説明していますが、不動産投資をするためには融資を受けてスタートする投資家がほとんどです。そのため、最終的な売却を成功させるため、出口を見据えた融資を考える必要があります。
そのポイントは3つあります。
ポイント1 買い手の融資には「融資期間」が取れるか?
ポイント2 物件評価をした時に「融資額」は付いてくるか?
ポイント3 融資対象エリアの金融機関は多いか?
以上になります。それぞれ説明しましょう。
ポイント1 買い手の融資には「融資期間」が取れるか?
購入の際に新築であっても、売却する時は中古の収益物件として扱われます。中古の収益物件に融資が付くか付かないかでは、しばしば融資期間がネックになります。
融資期間が短くなれば、いくら金利が低くても毎月の返済額は多くなります。このことから、運用する時にキャッシュフローが出づらくなり、ローン返済が難しくなることもあります。買い手の投資家にしてみれば、なるべく長期の返済期間が取れる物件を狙いたいと思うことでしょう。
金融機関が用意している収益物件の融資には2つのタイプがあります。
一つは、プロパー融資。事業性融資ともいわれます。もう一つは、パッケージ融資といわれるアパートローンです。
まずはプロパー融資から説明しましょう。不動産賃貸業向けの事業性融資は都市銀行、地方銀行、信用金庫などで取り扱いが多く、融資期間を原則的には建物の法定耐用年数内としています。法定耐用年数とは、減価償却資産を何年で費用化するかを法律で決めた耐用年数のことです。資産の種類や構造、用途によって異なります。不動産投資で関わる減価償却資産は、建物になります。建物の場合、構造によって法定耐用年数が異なります。木造、軽量鉄骨造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造のものがほとんどです。
それぞれの法定耐用年数は木造=22年、軽量鉄骨造=27年、鉄骨造= 34 年、鉄筋コンクリート造=47年となっています。
金融機関の融資期間は耐用年数内になるので、中古物件の場合は、次のようになります。
融資期間=法定耐用年数-経過期間
将来の売却のタイミングを想定すると耐用年数の残存期間が次の購入者の融資期間になります。
例えば、新築木造アパートの物件を購入して10年後に売却する場合、法定耐用年数22年から経過期間10年を差し引くので融資期間は12年になります。
耐用年数の残りが少ないと次の購入者の融資期間も短くなり、融資が使いづらいため買い手が少なくなる可能性があります。
そのため、物件を売却する時に耐用年数の残り(=融資期間)が20年以上残っていることが理想的とされています。
プロパー融資は主に新築アパートや鉄骨造、鉄筋コンクリート造マンションに活用されることが多いといわれています。そのため物件のロットも大きいものになることが少なくありません。物件ロットが大きい場合、土地を更地にして売却する選択肢を取りづらい傾向があります。
プロパーローンを主に取り扱っている金融機関としては次のようなものがあります。
・都市銀行
・地方銀行
・信用金庫
・信用組合
・政府系金融機関
次にアパートローンについて説明しましょう。アパートローンはパッケージ融資ともいわれています。主にサラリーマンなど本業の所得がある人を前提とした資産形成向け融資です。アパートローンは所得の金額が融資額(枠)に影響するため、ロットが小さい物件に活用されます。例えば、1億円以下の新築や中古のアパートなどです。
所得が融資額に影響するため、プロパーローンと異なり、法定耐用年数を過ぎた中古木造物件であっても期間20~30年の長期でとれる設定のものが少なくありません。その代わり、融資金利についてはプロパーローンより1~2%程度高い設定となります。
つまり、保有物件の売却出口を考えた場合、1億円以下のアパートであれば、5年から10 年ぐらいの運用後に、損することなく売却できることが可能でしょう。
ただし、購入した時に適正な利回りで購入していることが重要です。不適切な金額で購入している場合は売却金額を下げなければ、売れない可能性もあるからです。
アパートローンを取り扱っている金融機関は次の通りです。
・インターネット銀行
・地方銀行の一部
・ノンバンク系金融機関
それぞれの金融機関で一定の融資基準があります。
ポイント2 物件評価をした時に「融資額」は付いてくるか?
続いては、次の買い手が物件を購入する時に必要な「融資額」がきちんと出るかについて見ていきましょう。
購入しようと検討している物件の価格に対して、融資額の割合が大きければ大きいほど売れやすくなります。しかし、必要な融資額が出ないことになると融資額との乖離分を値下げしなければなりません。融資額は各金融機関やローン種別によって変わりますが、基本的に次の3つの要素で決まります。
①積算評価
②収益評価
③個人属性
それぞれ説明しましょう。
①積算評価は、土地や建物の面積にそれぞれ基準単価をかけて算出したものです。面積が大きく建物が新しいと、それだけ評価は大きくなります。なお、土地の評価は変わりませんが、建物の評価は毎年減価します。このため売却時にどのくらい減価するのかを事前に確認しておきましょう。築20年超の木造中古アパートの場合、建物評価はほぼありません。この場合、土地評価がそれなりに高くないと売りづらくなる、ということになります。
②収益評価とは、物件から得られる賃料収入をエリアの利回りで割り戻し算出します。利回りが同じであれば、賃料が多ければ多いほど評価大きくなります。
③個人属性とは購入者(融資申込者)の勤務先、年収、自己資金、資産、家族構成、年齢などの個別要因のことです。
融資審査のポイント
1 金融資産(預貯金、株、保険など)
2 保有不動産(自宅、投資用など)
3 既存借入がどのくらいあるか(クレジットカード利用残高含む)
4 勤務先・職業
5 年収
6 居住地
7 その金融機関との取引実績(口座を持っているなど)
8 購入物件 (積算・収益評価、築年数、立地など)
勤務先が大手、年収が高い、自己資金や資産が多い、年齢が若い、扶養家族が少ないなどの場合には、融資額が大きくなります。積算評価や収益評価が高い物件の方が、融資額は多く出るので、買い手も付きやすく、売りやすいです。
特に個人属性で大切になってくるのは、金融資産(預貯金・株式・保険など)と勤務先や職業、年収になります。金融資産は購入を検討する物件価格の2割程度が理想です。
融資額に対する個人属性の影響は大きく、個人属性がよければオーバーローンやフルローンを組める人もいます。
しかし、オーバーローンやフルローンが組めても、それは個人属性がよかっただけで物件の積算評価や収益評価は低い、ということもあり得ます。その場合は売却時に損が出てしまいます。だからこそ、積算評価や収益評価が高い物件を選ぶ必要があるのです。
2014〜2015年ぐらいは、アパートローンといえば個人属性重視、プロパーローンといえば物件評価重視、といわれていましたが、最近ではプロパーローンも個人属性を重視しています。物件評価についても積算評価よりも収益還元評価=収益性を重視している金融機関が多くなっています。詳細の融資情勢については、不動産会社の担当者に聞いて最新の情報にアップデートしましょう。
融資を考えても、東京で不動産を買うほうがいい
ポイント3 融資対象エリアの金融機関は多いか?
売却のタイミングで買い手を付けるには、融資対象エリアに金融機関が多いことも重要です。これは単純に使える金融機関が多ければ多いほど選択肢が増え、融資付けには有利なためです。
このため投資をする地域として一番有利なのは東京都です。なぜならば、東京都なら地方銀行も一つは支店を構えていることが多いからです。東京都を中心とした千葉県、神奈川県、埼玉県も支店エリアが重複しているため、同じように金融機関の選択肢が多い特長があります。
地方で投資をする場合は、金融機関が限られるリスクがあります。地方銀行が一つしかなく、その銀行がエリア全ての融資を行なっている場合もあります。仮にその地銀が不動産投資に関連する融資に消極的になった場合は融資がつかなくなるので、物件の売却が難しくなります。そのためにも複数行の選択肢があった方がよいのです。
アパートローンは融資エリアが広いものが多く使いやすい反面、自行が融資した物件で自行の抵当権が付いている物件には融資しないこともあります。つまり、自分が購入する時に使ったアパートローンは次の買い手は使えない規定がある銀行もあるのです。その物件を売却する時に使えるローンが、自分が使ったアパートローンだけになれば売却が難しくなります。
アパートローンを使う場合、その次も同じアパートローンが使えることが重要です。購入前に融資内容をきちんと確認しておきましょう。