融資の有効性は「最終的な利益」と照らし合わせて考察
ここまで、どのような場所にどんな物件を購入をするべきかを解してきました。ここからは、その物件に投資をするための融資について考えていきたいと思います。
まず最も重要なことは、融資も投資を効率的に進めるための一つの要素に過ぎないということです。不動産投資をスタートする人のほとんどは融資で物件を購入するので、融資がおりるかどうかを重要視する人は多いかもしれません。しかし、融資が出るからという理由で不動産投資をスタートするとほとんどが失敗をします。なぜならば、投資の唯一の目的は純資産の増加だからです。
純資産を増加させるために、本当によい条件の物件が目の前にあるのであれば、極端なことをいえば、金利の高い消費者金融を使ってもよいということです。金利がいくら高くてもきちんと利益が出るのであれば、消費者金融から借りても投資は成功するのです。
融資は投資における利回りなどと同じく、他との条件相違に過ぎません。金利を含めて投資をトータルで考えて、最終的な利益と照らし合わせて融資を考える必要があるのです。ある物件に使える融資条件というのはニュートラルで、得するものでも損するものでもありません。融資を使って最終的に利益が出るか、つまり純資産が増やせるかどうかが重要なのです。
実質利回り>年間返済比率だとレバレッジが効いている
融資を活用して、レバレッジ効果を高め投資効率を上げるためには、融資が出る金融機関の基準を知っておく必要があります。
まずはレバレッジについての正解を考えていきましょう。不動産投資は融資を使って投資をすることが有利だといわれています。
なぜ、有利なのかは、レバレッジ効果が使えるからです。レバレッジ効果とは、借入金を活用して少ない自己資金で大きく投資をすることで、投資効果を高めようとすることをいいます。
ただ、融資を活用して不動産投資をすることは、メリットばかりではありません。レバレッジ効果で自己資金以上の投資効果を引き出せるものの、一方でマイナスに触れた場合の損失も大きくなるのです。
融資を活用する場合は、借りられるかどうかも重要なのですが、レバレッジが効果的に働いているかどうかを検証することも大事なのです。効果的かどうかの検証の目安としては次のような計算式があります。
物件の実質利回り(キャップ・レート)>年間返済比率
物件の実質利回りは、年間の純収入を総投資額で割ったものです。
年間返済比率は、年間の元利金返済を借入額で割ったものです。
物件の実質利回りが年間返済比率よりも高ければ、手元に利益が残ります。この場合レバレッジ効果が効いていることになります。
例えば、総投資額が1億円、年間の純収入が700万円、実質利回りが5%の物件があるとします。
この時、年間の元利金返済が400万円、借入額が8000万円(自己資金2000万円)、年間返済比率が5%の場合でレバレッジ効果が働いているのかどうかを計算してみましょう。
この場合は、実質利回りが7%で年間返済比率が5%なので、レバレッジ効果が効いているといえます。全額自己資金の現金1億円を入れて物件を現金で買うと、物件の実質利回りは7%なので700万円の利益が得られます。
自己資金1億円×物件の実質利回り7%=利益700万円
一方、ローンを活用した場合を考えてみましょう。
ローンを活用すると自己資金は2000万円です。自己資金2000万円に実質利回り7%を掛けると、140万円の利益が得られます。
自己資金2000万円×物件の実質利回り7%=利益140万円(A)
借入金に実質利回り7%を掛けると560万円の利益が得られます。
他人資本(借入金)×物件の実質利回り7%=利益560万円
ここから、元金返済400万円を差し引くと160万円です。
利益560万円−元金返済400万円=160万円(B)
この160万円と自己資金2000万円で得られた140万円を足すと300万円です。
(A)+(B)=300万円
この利益300万円を自己資金2000万円で割って100を掛けると、15%になります。
自己資金で得た利益+他人資本で得た利益(300万円)÷自己資金2000万円= 15%
つまり、自己資金は2000万円で、ローンを活用することでレバレッジが効いて、自己資金1億円の現金で購入する2倍の、15%に収益率が上がります。本来は2000万円の自己資金で140万円の利益しか得られないのにもかかわらず、他人資本を活用することで160万円の利益を得ることができるのです。
ここで注意が必要なのは、どんなに金利が低くても、年間返済比率が物件の実質利回りを上回るとレバレッジ効果がなくなってしまうことです。
長渕 淳
株式会社ファミリーエージェント 取締役社長