今回は、物件価格が下がる理由についてさらに見ていきましょう。※本連載では、株式会社ファミリーエージェント取締役社長渕淳氏著書、『中古一棟収益物件攻略完全バイブル』の中から一部を抜粋し、不動産投資初心者のために、具体的な物件の購入方法などを紹介していきます。

中古物件は、新築より高利回りでなければ売れない!?

(2)投資家(購入側)の要求利回りの上昇がある

 

第1回目で説明した通り、収益物件は物件価格に「相場」があるわけではありません。利回りに「相場」があるのです。 

 

そして、利回りは主に次の3つで決定されています。 

 

①エリア(首都圏、地方、都市部、郊外など)②立地(駅距離、環境、地形など)、③物件(種別、構造、築年数など)です。その他の要因もありますが、主にこれらの要因で相場ができてきます。 

 

中には全くエリア無視で投資を進める人もいます。しかし、多くの投資家は、自分自身で物件を把握することができて、物件管理でも容易な場所で購入検討をすると考えられます。 

 

そのエリアの利回り相場が「新築物件なら7%」「築浅中古なら9%」「築古中古なら10%」などというように、物件ごとに利回りが変わっていることに気がつくでしょう。 

 

収益物件の相場において個人投資家の利回りの要求が現状よりも高くなった場合、物件価格は相対的に下がるということになります。 

 

例えば、年間賃料で500万円ある収益物件があるとします。相場利回りが8%の場合は、物件価格は次のようになります。

 

年間賃料500万円÷相場利回り8%=物件価格6250万円

 

ところが、年間賃料が変わらないのに相場利回りが2%上昇し、10%になった場合には、物件価格は次のようになります。

 

年間賃料500万円÷相場利回り10%=物件価格5000万円 

 

相場利回りが2%上がっただけでも、物件価格はそれに連動して1250万円も下がるのです。

 

エリアや立地条件を除いて、物件利回りが変わる要因には、建物構造や築年数で変化します。非常に大雑把ですが、次のようになります。

 

物件の利回りは、建築構造では、①鉄筋コンクリート造、②重量鉄骨造、③軽量鉄骨造、④木造 の順で利回りが高くなります。 

 

築年数では、①新築、②中古(築20年まで)、③中古(築20年以降) の順で利回りが高くなります。 

 

このように利回りの相場が決まっているので、木造の収益物件は鉄筋コンクリートの収益物件より利回りが高くないと売却が難しいといえます。また、中古物件は新築物件より利回りが高くないと売れないということになります。

 

このため、築年数には気をつけなければいけません。特に新築物件は中古に比べ投資リスクが低いため一般的には利回りが低くなります。そして売る時は保有期間にかかわらず、必ず「中古物件」になり新築よりも高い利回り相場での売却となるのです。中古物件に関しても傾向としては20年を境に築浅物件から築古物件になり利回りが変わってきます。

 

そのため、比較的築の浅い物件を取得した時は、築20年を超える前に売却するほうが売却時の利回り上昇によるキャピタルロスが出にくいです。築20年を超える物件の場合は、新耐震基準前の物件であるなら極端に古くならない限りあまり利回り上昇の影響はありません。

 

新築物件は、いずれ賃料が下がるだけでなく、売却時は中古扱いになって要求利回りが変わるため、賃料低下と利回り上昇がダブルで発生します。

 

新築の物件を購入する場合は、この性質を事前に理解して物件取得することが重要です。中古物件は、「築10年で購入するから出口は築18年で、8年間の運用」というように期間を見込んで利益が出るかシミュレートすることが必要です。

 

賃料低下と利回り上昇によるキャピタルロスの影響を一番受けにくい(価格が下がりにくい物件)のは、これらの要因を総合的に考えると築古中古物件です。築古中古物件は賃料低下や売却時利回り上昇が起こりにくいですが、建物コンディションを保つことをポイントに運用期間を考える必要があります。

 

(3)経年による建物評価の減少

 

これまでは収益性という視点から物件価格が下がる原因を見てきましたが、資産性という視点でも物件価格が下がる原因がいくつか存在します。

 

収益物件は建物と土地の2つの資産で構成されています。 このうち建物は年月が経てば劣化していきます。劣化といっても資産評価上の問題です。建物自体は、構造さえしっかりしていれば50年、100年保っている建物はたくさんあります。

 

しかし、建物の資産としての評価は経年で減価します。例えば、木造の建物の場合は、耐用年数22年で減価償却するということが法律上決められています。減価償却とは、資産を耐用年数の間で費用化するということです。つまり、22年で木造の建物は全て費用化され、資産評価はゼロになるということです。資産評価がゼロになれば、売却の時にも建物はゼロに近い評価として取引が行われます。

 

(4)土地相場の下落

 

また、土地相場が下落すれば物件の評価が下がります。土地の価格は極端に下がることはありませんが、人口減少や商業が活発になって土地の需要が上がるなどの経済的な影響によって多少の変動があります。

融資の付きにくさは、物件価格を下げる大きな要因

(5)融資状況が悪い

 

次の投資家が購入する際に融資が付きにくいというのも、物件価格を下げる大きな要因となります。不動産投資の一つの特徴としては物件購入時に「融資」を受けて取得する人がほとんどであるということです。中には物件の大小にかかわらず現金購入する人もいなくはないのですが少数です。そのため、売却を考えた場合ターゲットは多い方が売却価格が安定するのは当然のことといえます。

 

銀行が収益物件に融資をする際には、投資家と同じように、その物件の収益性と資産性を見て判断しています。収益性が悪かったり、資産性が悪かったりすれば、融資が下りないという可能性もあります。当然のことながら、融資が下りない物件は投資家が買おうとしないので、必然的に物件価格も下がっていくというわけです。だからこそ、購入を検討している物件に融資が付くかどうかはとても重要なのです。

中古一棟収益物件 攻略完全バイブル

中古一棟収益物件 攻略完全バイブル

長渕 淳

幻冬舎メディアコンサルティング

不動産投資のブームが巻き起こって久しく、「サラリーマン大家」という言葉ももはや陳腐化したほど、個人が収益不動産に投資することは一般的になった。しかし、多くの素人大家が誕生した裏ではトラブルも続発。収益不動産融資…

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