都市への人口集中で発生する「4つの事象」
東京経済圏でも都市化が進んで入居需要が増えたり、逆に都市が過疎化して入居需要が減ったりしているエリアがあります。そうした入居需要の動向を調べるためには、都市の動向を予測する指標を見ておくとよいでしょう。
その前に、どのような理由で都市に人口が集まったり、減ったりするのか、都市化の影響を説明します。
都市に人口が集まると、次の4つの事象が発生します。
①地価が上がり、持家率が下がる
②単身世帯比率が上がり、持家率が下がる
③人口集積が進み、共同住宅の賃料が上がる
④都心に住めない人が周辺地域へ移動し、都市周辺地域の人口が増加する
都市に人口が集まる流れとしては、主に景気・地価下降局面が大きいといえるでしょう。景気が後退し、家賃や地価が下がったことによって都市に人口が流入します。すると、都市の人口が増え、地価が上昇するとともにアパートやマンションの家賃も上がります。家賃が上昇することで単身世帯の比率が増え、都市の中心部に住めない人たちができるだけ近いエリアに住もうとするため、都市周辺の人口が上昇していきます。このような現象は景気が後退し、地価が下がり続けるまで行われ、都市の中心部から人口が流出していきます。
[図表1]人口統計図
さて、2018年6月現在、地価はどのようになっているでしょうか? 東京経済圏の地価は2013年度からほぼ横ばいですが、東京中心部は徐々に上昇しています。これはつまり、東京中心部に人口が集積しつつある証拠でもあります。ただし、都心部や城南、城西地区の地価が大きく上昇したことで、城北、城東など中心部から周辺に目を向ける人たちがやや増えています。
このように、自分がこれから投資をするエリアで都市化がどのように進んでいるのかを調べるには、次のような指標があります。ただし、データとしての指標は現実としてはやや遅いという前提で参考にすることが重要です。マーケット的には下がり始めている段階なのに地価公示はアップするという事例もあります。不動産会社から情報をきちんと収集しましょう。
公示地価
公示地価とは、国土交通省が土地取引の基準や不動産鑑定の基準、公共事業用地の購入価格の算定などを目的として、適正な地価を公示するものです。
全国にある2万6000地点(2017年)の土地(標準地)で毎年1月1日に計測した正常な価格をその年の3月に公表しています。公示地価は、取引の基準になる以外にも、土地の相続評価や固定資産税評価の基準にもなります。公示地価はあくまでも取引の参考にする基準の地価なので、その価格で取引するというわけではありません。ですので、公示地価と取引価格は当然ながら、違うことが多いです。また、不動産の取引には、売り手の特別な事情も関わってきて価格に影響を与えます。例えば、すぐにでも現金化したいのであれば安く売りに出すこともあるでしょう。そうしたさまざまな事情が重なって、公示地価と実勢価格の差が生まれるのです。
[図表2]首都圏 公示地価(住宅地)の都県別対前年変動率の推移
基準地価
公示地価と似たものに、基準地価というものがあります。こちらは都道府県が調査主体となり、1975年から毎年調査が行われています。評価方法などは公示地価とほぼ同じです。
唯一の違いは、調査をしている時点になります。公示地価は1月1日ですが、基準地価は7月1日になり、毎年9月20日頃に発表されます。
「推移統計」から人口動態を把握しよう
日本の人口は少子高齢化によって、基本的に減少していくといわれています。自分が投資をするエリアの人口動態がどのように変化していくのかということは、一応頭に入れておいたほうが、過疎化が進行していく場所に間違って投資をするということを防ぐことができます。
具体的に何を見ればいいのかというと、国立社会保障・人口問題研究所の人口推移統計を見ていくとよいでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所(http://www.ipss.go.jp)
そこからアクセスして、ホーム→将来推計人口・世帯数→日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)年推計)→概要に掲載されたデータ・結果表と進んでいきます。
最後に、結果表1 総人口および指数(平成27(2015)年=100とした場合)(Excel)をダウンロードします。この表には日本全国の総人口の推移が掲載されています。
この表を見ると、2045年までの人口推移と2015年を100とした場合の総人口の指数を見ることができます。
この指数で90ぐらいの数値の人口減少であれば、統計上の誤差と考えられます。つまり、実際には人口が減らず、賃貸状況にも大して影響がないということです。こうしたデータを用いて、賃貸需要を分析していきましょう。
長渕 淳
株式会社ファミリーエージェント 取締役社長