今回は、不動産投資における融資情勢を見ていきます。※本連載では、株式会社ファミリーエージェント取締役社長渕淳氏著書、『中古一棟収益物件攻略完全バイブル』の中から一部を抜粋し、不動産投資初心者のために、具体的な物件の購入方法などを紹介していきます。

融資情勢がさらに厳しさを増した3つの理由

2017年の4月に日本銀行と金融庁が個人向けアパートローンを引き締めたことで、2017年の4月から6月の金融機関による個人向けアパートローンの新規貸出額は前年同時期に比べて約15%減少したといわれています。 

 

特に厳しくなったのが資産管理法人向けのプロパーローンです。融資額が減少するだけではなく、個人の属性条件がかなり厳しくなりました。また、融資の対象物件の賃料査定が厳しくなり、収益性についても細かな査定がなされているようです。

 

2018年に入ってからは融資情勢はさらに厳しさを増しています。理由は次の3つです。

 

・複数法人で主に新築物件をフルローンやオーバーローンで取得するスキームの問題化

・売買価格や属性内容操作によって地方1棟マンションを取得する方法の問題化

・新築シェアハウスのオーバーローン取得の問題化 

 

こうした不動産投資の問題が顕在化しており、収益不動産に対する融資を取り扱う金融機関が融資の引き締めをしています。引き締めをしていると言っても、その内容は前述したような極端で特殊なローンに関してです。極端だった融資が普通の基準に戻り始めている状況なので、収益性や資産性が安定している物件で個人の属性、自己資金などが適正であれば融資はきちんと出ています。 

 

収益性、資産性、そして流動性の高い物件を正しく取得することを最優先として、融資戦略を練ってください。次の買い手が欲しがるような物件を取得することで出口の柔軟性を確保することにもなりますし、金融機関が融資したいと思わせられるのです。 

 

次の買い手が想定できないような物件を取得しようと考えるのは、融資戦略的にもお勧めはできません。 

 

次に、すでに物件を所有している人に最初にやっていただきたいことは、自分の保有物件の収益性と資産性の確認です。 

 

保有資産の純資産割合がどのくらいあるのかは、次の計算式でわかります。

 

純資産=売却可能価格−残債 

 

売却可能価格を算出してそこから残債を引けば、純資産が算出されます。この時に残債が残っていれば、それ以上純資産を増やすことは難しいと考えられます。また、保有をしていても融資付けが不利になってしまうことが多いでしょう。早めに売却を検討したいものです。

収益不動産を取り扱う金融機関の融資体制

各金融機関の融資概要はどうなっているのか、簡単に紹介します。

 

■都市銀行

融資形態:事業性資金融資(プロパー融資)を取り扱う

融資金利:1〜2%前後

融資額:評価額の70〜100%

融資期間:耐用年数−経過年数 

 

都市銀行で個人に融資を行ってくれるところは少ないものですが、全くないわけではありません。融資基準は個人属性を重視しています。だいたい純資産5000万円以上が必要です。団体信用生命保険の加入額には上限があります。マンションだけでなく、アパートにも融資をしてくれますが、構造が木造の場合は一定の条件があるところも少なくありません。

 

■地方銀行

融資形態:事業性資金融資(プロパー融資)または、アパートローン(パッケージ融資)

融資金利:1〜3%前後

融資額:評価額の70〜100%

融資期間:耐用年数−経過年数 

 

営業エリアが地方都市中心で、営業拠点の周辺にある物件への融資に強みを持つのが地方銀行です。融資を受けられる人も営業拠点に近いところに限定されていることが多いので、条件を正しく確認しましょう。首都圏の地方銀行の中には、営業エリアが東京都だけでなく、都内近郊の都市までカバーしているところもあります。 

 

個人属性を重視する銀行が多く、年収で1500万円以上、金融資産で5000万円以上保有している、などの条件があります。法人に対する融資も柔軟に対応してくれる場合があります。 

 

地方銀行の融資形態は基本的に事業性融資(プロパー融資)ですが、中には個人への融資を積極的に行なっているところもあります。こうした銀行は金利がやや高くなりますが、融資期間も30年以上など長めに取ることができて、個人投資家に有利な融資を行なっているところもあります。

 

■信用組合

融資形態:事業性資金融資(プロパー融資)

融資金利:2%ぐらい

融資期間:耐用年数−経過年数 

 

信用組合は組合員の相互扶助と経済的地位の向上を図るための金融機関です。収益不動産に積極的に融資をするのは信用組合の中でも資本が大きく、銀行並みの商品とサービス力を兼ね備えている信用組合です。これらの大手信用組合は営業エリアが広く、首都圏近郊もカバーしています。 

 

しかし、こうした大手の信用組合での融資対象者は、東京都内在住、または東京都内勤務などの条件がつくため、事前に調べておきたいものです。また、物件評価もいろいろです。例えば、耐用年数以内の物件は収益還元評価、耐用年数以外の物件は積算評価など評価方法が変化するのでこちらも確認しておきましょう。また、信組の中には、収益不動産の保有状況も審査に影響するところがあります。資産性の低い物件を保有していると審査に通りにくくなることもあります。

 

■信用金庫

融資形態:事業性資金融資(プロパー融資)

融資金利:2%ぐらい 

 

信用金庫の中でも営業エリアの広い信用金庫では、収益不動産に積極的に融資をしてくれるところもあります。信用金庫の中には、融資期間を比較的長く取ってくれるところもあります。融資の割合を共同担保を取る、預金を増やすなどの方法で増額することができます。 

 

■インターネット銀行

融資形態:アパートローン(パッケージ融資)

融資金利:2〜3%

融資額:物件価格の90〜100% 

 

インターネット銀行は、店舗を持たず金融サービスを提供している銀行です。初めて不動産投資を行う人向けのローンなどを扱っていますが、融資対象者にも条件があります。例えば、個人属性では勤務先や年収などが審査上重視されています。なお、融資の限度額は既存の借り入れも含め年収の10倍までの融資が可能なケースもあります。築年数が古くても、郊外の物件であっても対応してくれる銀行もあります。しかし、これまで紹介したように物件の資産性と収益性をきちんと見極めた上で融資を受けるようにしましょう。

 

■ノンバンク系金融機関

融資形態:アパートローン(パッケージ融資)

融資金利:3〜4%前後

融資額:担保評価によって変化する 

 

ノンバンク系金融機関は、金利がやや高いのですが、その代わり柔軟に対応することができます。融資の際には共同担保を取られる可能性があります。一方で、構造や築年数による返済期間制限もありません。また、共同担保の評価により、購入金額を超える融資も可能です。さらに融資エリアの制限もありません。

 

■政府系金融機関

融資形態:事業性資金融資(プロパー融資)

融資金利:1〜2%前後

融資額:物件と申込者の評価で決まる

融資期間:基本10年 

 

政府系金融機関の特長は営業エリアが限られていないことです。全国エリアで融資を受けることが可能です。 

 

融資枠が限られており、億単位の物件に対する融資は不可能です。数千万円程度の収益物件を狙うのであれば、活用しやすい金融機関です。また、年齢や性別、使用使途、支店によって融資条件が変わります。 

 

これまで見てきたように、さまざまな金融機関があり、融資体制もさまざまです。自分の投資スタンスや物件によって融資を使い分けることが必要です。

 

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長渕 淳

幻冬舎メディアコンサルティング

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