「収益を生む資産」を切り離す・・・相続時精算課税制度の活用

「収益を生む資産」を切り離す・・・相続時精算課税制度の活用

今回は、相続時精算課税制度の活用で上手に「財産を減らす」方法を見ていきます。※本連載では、税理士法人チェスター監修、株式会社エッサム編集協力、円満相続を応援する税理士の会の著書『相続は突然やってくる!事例でわかる相続税の生前対策』(あさ出版)から一部を抜粋し、ある程度財産を持っている人が、生きているうちに行える相続対策を紹介していきます。

暦年贈与が「資産増」に追いつかないケース

Eさんの資産は自宅と預貯金、それから賃貸用のアパート1棟を運営しています。これまで暦年贈与や贈与の特例を利用し、財産の圧縮をはかってきました。しかしアパートの家賃収入が毎年500万円あるため、贈与でキャッシュを減らしてもまた増えてしまい、資産が1億円から減りません。

 

アパートを売れば家賃収入はなくなるでしょうが、高収益の物件ですから、手放すのは気が進みません。相続財産をうまく減らせるように、家賃収入を何とかできないでしょうか。


Eさんの家族構成…Eさん/妻/長男夫婦/孫1人/次男夫婦

Eさんの資産…不動産:自宅2500万円・賃貸用アパート4500万円(土地2500万円/建物2000万円)/金融資産:預貯金3000万円+家賃収入:毎年500万円相

続税の基礎控除額…4800万円

減らしたい額…5200万円+家賃収入

 

[図表1]暦年贈与が資産増に追いつかないEさんの場合

高額な贈与には高率の贈与税が課せられるが…

せっかく贈与で財産を減らす努力をしても、それ以上に収益を生む資産がある場合、その資産を財産から切り離してしまうのがいちばんです。

 

Eさんの例でいえば、相続まで待たずに賃貸用のアパートを長男に譲ることができれば、以後の家賃収入は長男に入りますから、Eさんの資産はそれ以上、増えなくなります。

 

通常、高額な贈与には高率の贈与税が課せられます。しかし、贈与を受け取る人が将来の相続人にあたる場合、受け取る側が相続時精算課税制度の手続きをすれば、非課税で2500万円まで資産を移転できます。

 

もっとも、完全な非課税というわけではなく、「相続時精算課税」という名のとおり、相続した時点で、生前に受け取った分にも相続税が課せられます。

 

この制度は本来、「相続税がかかりそうもなく、相続時に精算しなくて済む」というケースに有効ですが、Eさんのように、収益不動産をうまく財産から切り離したい場合にも利用できるのです。

 

[図表2]相続時精算課税制度で利益を生む資産を切り離す

本連載は、2017年2月26日刊行の書籍『相続は突然やってくる!事例でわかる相続税の生前対策』から抜粋したものです。稀にその後の法律、税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続は突然やってくる! 事例でわかる相続税の生前対策

相続は突然やってくる! 事例でわかる相続税の生前対策

畑中 恵司 野崎 誠 新井 正 𠮷田 宙 窪木 康雄 森 敏夫 並木 惇平 小澤 功 服部 誠 中町 三雄 川代 政和 加藤 眞司 日吉 東 細谷 育子 佐々木 誠 久米 高治 味澤 昭次 久保 博和/石川 明美 木村 祐司 田中 友崇 中明 勇貴 伊藤 由一 田中 英二 江本 誠 植木 努 辰野 元祥 椎名 哲士 野島 由寛 沖 聰 北畑 米嗣 古田 英路 小林 達哉 南村 博二 飯田 隆人 白石 義富 税理士法人チェスター

あさ出版

将来の相続を見据えながら、贈与でキャッシュを減らしたり、不動産の活用で節税につながるよう土地の整理をおこなうなど、生きているうちに行えるさまざまな相続税対策を提案。また、各パートの前半では、相続の悩みや起こりや…

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