今回は、特例を利用した「孫への結婚・子育て資金」の贈与について見ていきます。※本連載では、税理士法人チェスター監修、株式会社エッサム編集協力、円満相続を応援する税理士の会の著書『相続は突然やってくる!事例でわかる相続税の生前対策』(あさ出版)から一部を抜粋し、ある程度財産を持っている人が、生きているうちに行える相続対策を紹介していきます。
通常の暦年贈与の活用では時間がかかるが…
Cさんは、先日突然友人が他界したことから、自身の相続をリアルに感じ、今からできる相続対策として、生前贈与を考えています。
できればあまり時間をかけずに贈与していきたいのですが、子どもたちはすでにマイホームを持っており、孫たちも全員勤めているので、住宅資金や教育資金の特例は使えません。
とするとやはり、暦年贈与でコツコツ渡していくしかないのでしょうか。資産は、自宅にしている分譲マンションと、金融資産が6000万円あります。
Cさんの家族構成…Cさん/妻/長男夫婦/孫1人/次男夫婦/孫1人/長女夫婦/孫1人(住宅取得済み/すでに勤めている)
Cさんの資産…不動産:自宅マンション3500万円/金融資産:預貯金6000万円
相続税の基礎控除額…5400万円
減らしたい額…4100万円
[図表1] 住宅と教育資金の特例が使えないCさんの場合
使い切れず残った額は相続財産として扱われるので注意
平成27年度からの新しい贈与の特例として、結婚・子育て資金の贈与にも非課税枠がもうけられました。
この制度は、直系尊属からの贈与が対象となりますので、子どもだけでなく、孫やひ孫にも、この非課税枠を用いて贈与できるのです。
Cさんは3人のお孫さんがいますから、非課税枠を3人分使えるということになります。
1000万円まで非課税で贈与できますが、Cさんが亡くなった時点でお孫さんたちが資金を使い残していた場合、残った額は相続財産として扱われるので注意が必要です。
つまり、その分には相続税が発生しますから、現実的にお孫さんが使い切れる額を見積もって、贈与することが大切です。また、Cさんのようにお孫さんが複数人いる場合は、それぞれに贈与するように心がけることも大切です。贈与をした時点では、他の親族にわからないからと思っていても、相続が起こって財産を計算する際に、贈与の事実は必ず明るみにでます。
後々親族がもめないように贈与の事実はオープンにし、できることなら不平不満の出ない形にすることを心がけるのも大事です。
[図表2] 特例で孫に結婚子育て資金を贈与
相続税を専門に取り扱う珍しい税理士事務所。年間1,500件(累計7,000件以上)を超える相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスを誇り、中小企業オーナー、医師、地主、会社役員、資産家の顧客層を中心に、低価格で質の高い相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策提案等を行なっている。各種メディアやマスコミから取材実績多数有り(※写真は代表社員 荒巻善宏氏)。
税理士法人チェスター http://chester-tax.com
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載「金融資産が多い人」のための生前贈与と節税対策
連載記事一覧
連載「金融資産が多い人」のための生前贈与と節税対策
木村祐司税理士事務所
税理士・アセットコンサルタント
1967年生まれ。中学卒業後、タンカーの甲板員から始まりブルーカラーの仕事にいくつか従事する中で、給料から天引きされる税金に疑問と興味を持ち税理士を志す。1998年12月税理士試験に合格。当初はコンサルティングファームでファイナンシャルディレクターとしての経験を積み、企業会計実務の知見を得た後に木村祐司税理士事務所を開設、現在に至る。
経営者や資産家の財務・税務コンサルティングを強みとし、絶対的な信頼感のもと企業の資金調達、経営管理、節税対策や資産管理、事業承継までを任されている。資産3億円以上を得意とし、相続税・贈与税だけではなく、資産運用の観点からトータル的なTAXプランニングの提案・実行をおこなう。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載「金融資産が多い人」のための生前贈与と節税対策
田中英二税理士事務所
税理士・CFP®・1級FP技能士
2004年「身近な相談相手」をモットーに田中英二税理士事務所を開業。事務所は相続を専門におこなっており、生前対策である相続コンサル ティングにも力をいれている。また、金融機関・ハウスメーカー等でセミナー・個別相談会も随時実施し、好評を得ている。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載「金融資産が多い人」のための生前贈与と節税対策
コーワ総合会計事務所
公認会計士・税理士・行政書士・宅地宅建取引士・M&Aコンサルタント
京都大学工学部機会工学科卒業。平成5年新日本監査法人入所。平成10年コーワ総合会計事務所開業。株価鑑定、事業承継対策、M&A、企業組織再編、医療経営アドバイザー、監査役、大阪地裁の民事再生財務調査等を手掛ける。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載「金融資産が多い人」のための生前贈与と節税対策
中央シティ税理士法人
税理士・特定行政書士・MBA・登録政治資金監査人
都市銀行役員、総務大臣政務官秘書、参議院外交防衛委員長秘書を歴任。CFG中央シティフィナンシャルグループ代表。早稲田大学賛助代議員、神奈川工科大学大学院講師。日本で単独第1号の内閣総理大臣宛の「内部統制報告書」(J-SOX)を完成。読売、朝日、毎日新聞連載。政府認定・経営革新等支援機関。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載「金融資産が多い人」のための生前贈与と節税対策