前回は、不動産の仲介業者と売主が結ぶ「3種類の媒介契約」について解説しました。今回は、不動産業界全体の信用を貶める「囲い込み」の問題を見ていきます。

他社からの物件紹介依頼に応じない不動産業者

業者によっては、物件情報を囲い込んで、他社に扱わせないところもあります。以前から問題になってニュースでも取り上げられたことがある「囲い込み」です。

 

「囲い込み」とは、売主から売却を任された不動産業者が、物件情報を適切に開示しなかったり、他社からの物件紹介依頼に応じなかったりすることをいいます。具体的にいえば、私たちが「レインズ」で見つけた物件を客付けしようと思い、物件の情報元に問い合わせても、「すでに売れてしまいました」と言われます。実際には売れていないにもかかわらず、そのような返答をするのです。

 

不動産の売買仲介の手数料というのは、売り手側、買い手側からそれぞれ3%発生します。業界用語で片方だけ得ることを「片手」(3%)、両方を得ることを「両手」(6%)といいますが、自社で情報を抱え込んで、両手の手数料を得ようとする行為が「囲い込み」なのです。

 

物件情報の囲い込みは、売主・買主双方にとって迷惑な行為であり、不動産業界全体の信用を貶める大きな問題とされていました。囲い込みをされたあげく、時間が経ったことを理由に「このままでは売れないからもっと値段を下げましょう」と値段を下げさせます。こうして、収益物件に強い専門の不動産業者が努力すれば高く売れるはずの物件が安く売られてしまいます。

売主がレインズでの公開状況を直接確認できるように

この問題を防ぐために、今年の1月より「レインズ」に新機能が追加されました。専任媒介、専属専任媒介の売却物件については、「ステータス管理」として「公開中」「書面による購入申し込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のいずれかを設定することが必須となっています。また、「公開中」の場合は、原則として客付け業者への紹介を拒否できません。

 

これらの取引状況を含む物件情報は、売主がパソコンで直接確認できる仕組みになっています。そのため、今は「レインズ」を見れば、「公開中」なのか「申し込み中」なのかひと目でわかりますし、売主である投資家からも状況をチェックすることができます。

 

もし、専任媒介で物件売却を依頼して、7日を超えても、「レインズ」の売却依頼主用物件確認のためのIDをもらえなければ、業者が仕事を真面目にしていないということになります。忘れずに「番号ください」と督促しましょう。

本連載は、2016年10月11日刊行の書籍『失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

平山 智浩・渡辺 章好

幻冬舎メディアコンサルティング

物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資において、事前にそのリアルな失敗パターンを知ることが不可欠です。多くの個人投資家にコンサルティングを行い、それぞれに合った不動産投資の方法…

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