前回は、投資対象としての「大規模物件」のメリットとデメリットを解説しました。今回は、不動産の売主と仲介業者が結ぶ「3種類の媒介契約」について見ていきます。

一括査定を依頼すると、高い金額が出るものだが・・・

[失敗事例]できるだけ高値で売りたいのに・・・・・・

 

4都内市部に所有する木造アパートを売却しようと、とある業者さんに売却依頼をしました。複数の業者に査定を依頼した結果、最も高い金額を提示してくれた業者さんです。ところが、まったくといっていいほどレスポンスがなく半年経っても売れる気配がありません。問い合わせしたところ「値段を下げたらすぐ売れますよ」と言われました。高く売りたいからこそ、その業者さんを選んだのに、値段を下げたら本末転倒な気もします。

 

今は収益物件のポータルサイトから一括査定を依頼すると、かなり高い金額が出てきます。しかし、実際にその値段で売れるかどうかといえば、それは別問題です。売却依頼を受けるためには高く査定したほうが有利なので、高く査定する。しかし、その値段で売る気なんてまったくありません。査定は売却の専任媒介契約を結ぶための手段なのです。

 

「この値段で売れますよ」と、たき付けておいて、結局手のひらを返すということはよくあります。誰もが名前を知るような大手の仲介業者ですら、高い査定額を提示して、とにかく専任媒介契約を取るようにしています。

 

とある大手業者のやり方は、ほかの業者よりも、まずは高く査定して依頼を勝ち取ることから仕事が始まります。一度専任を取れば「後はこっちのもんだ」といった具合で、高い値段で出しておいた物件を「なかなか売れませんね」と言って時間を引き伸ばし、なかなか売れなくて売主が焦り始めたタイミングで、大きく指値を入れて安い価格で再販業者に売却させる結果になります。これは本当にあこぎなやり方です。

※指値・・・値引き交渉のこと。

複数の仲介業者との同時契約が可能な「一般媒介契約」

なお、不動産の売買仲介業者と売主が結ぶ媒介契約は3種類あり、それぞれに契約条件が変わります。

 

●一般媒介契約

複数の仲介業者と同時に契約することが可能。売主が見つけた買主に売却することもできる。

 

●専任媒介契約

一社限定で契約を行い他社には依頼できない。他社の媒介により成約したときには、違約金が発生する。また物件情報を「レインズ」に登録して、売主に対して2週間に1回以上の状況報告が義務付けられている。専属専任との違いとして、売主が買主を見つけることもできる。専任媒介契約の契約期間は3カ月。

 

●専属専任媒介契約

一社限定で契約を行い他社には依頼できない。自分で買主を見つけることも可能だが、依頼した不動産業者を通して取引することが義務付けられている。依頼を受けた物件情報を5日以内に「レインズ」に登録して、売主に対して1週間に1回以上の状況報告が義務付けられている。媒介契約の有効期間は3カ月。

本連載は、2016年10月11日刊行の書籍『失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意

平山 智浩・渡辺 章好

幻冬舎メディアコンサルティング

物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資において、事前にそのリアルな失敗パターンを知ることが不可欠です。多くの個人投資家にコンサルティングを行い、それぞれに合った不動産投資の方法…

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