住まい選びにおいて、その地域の「気候」はとても重要な要素だと考えます。多くの不動産アナリストは、不動産価値と気候に相関関係はないと言いますが、実際のところどうなのでしょうか? 今回は、不動産価格を大きく左右する「気候」の問題について見ていきます。

身体によい気候が影響? 地価が高いCF州南部

筆者は、1993年から2000年までロサンゼルスに7年駐在していました。駐在前にいた職場の上司から「ニューヨークでポジションの空きがでるがどうか」という話を頂いたものの、カリフォルニア州駐在を希望していた筆者は丁重にお断りしたのです。

 

その当時、カリフォルニア州で不動産関連業務をやりたかったという希望もありましたが、出張でちょくちょく出かけていたロサンゼルスからサンディエゴにかけての、太陽が眩しく甘い香り漂う、乾燥した地中海性気候という環境で生活したいという思いが優先させたことを記憶しています(サンフランシスコ・ベイはそれとはやや違った気候です)。

 

人間が住む場所を選ぶ場合、個人差はあるものの、「仕事」以外に「気候」も重要な要素を構成していることは否定できません。多くの学者・アナリストが不動産価値と気候の相関関係はないと言っていますが、筆者はそうは思いません。

 

まず、カリフォルニア州が地中海性気候となっている理由として、カリフォルニア州沿岸から700km沖合に「カリフォルニア海流」という寒流が流れていることがあげられます。この寒流は西経150度に位置するアラスカ沖から南下し、北緯25度に位置するバハカリフォルニア半島あたりから西へ流れて、北赤道海流と合流します。

 

 

そして、内陸部では砂漠気候であることから熱せられた空気が上昇気流にのり、そこへ涼しい海風が一定方向に吹きこむ仕組みがあります。

 

大洋の影響で一般に極端な気温の上下を抑えており、特に海岸地域では暖かく幾分雨の多い冬と、かなり冷涼で乾燥した夏を生んでいます。南カリフォルニアでは、ビーチから3マイル(約5キロ)までがフレッシュな海風が吹き、常にスモッグのない身体の健康によい場所として地価が常に高くなる傾向にあります。

 

たとえば、サンタモニカ、ウエストロサンゼルス、マリナデルレイ、マンハッタンビーチ、パロスベルデス、ニューポートビーチ、ラグーナビーチ、ラホーヤ等です。

 

ところが、サンフランシスコ・ベイエリアでは必ずしもそうとは言えないかもしれません。ロサンゼルスより2〜6度寒くなる緯度的な部分と、サンフランシスコ湾と太平洋の間に山があるという地形的な理由で、サンフランシスコ湾内側の方がむしろ人気が高い地区が多いと思われます。

 

また、西側に丘はあっても山がほとんどないサンフランシスコ市内、サンフランシスコ国際空港の少し北側からサンノゼまでの地区、イーストベイと呼ばれているサンフランシスコ湾の東側地区では、それぞれ大きく気候が違うのです。

 

サンフランシスコ市内は、海からの海風が霧となりその通り道となること、ペニンシュラ・サウスベイは西側の山が霧を遮り比較的温暖であること、イーストベイの内陸は砂漠気候が色濃く反映され、日中の温度差があります。実際、サンフランシスコ湾内の3大空港の位置は、霧が比較的少ない場所が選ばれているのです。

 

 

下記の図表1は、カリフォルニア州各主要都市の月ごとの平均最高気温(上段)と最低気温(下段)を示しています。

 

[図表1]カリフォルニア州各主要都市の月ごとの平均最高気温と最低気温

内陸部と比較すると、沿岸部の価格変動率は大きい

Zillow社が沿岸部と内陸部の住宅の価格差について分析していますが、一般的に沿岸部の価格にプレミアムが認められます。ハワイ・カリフォルニア州・ロングアイランド(ニューヨーク)の絶対額が一番高く、内陸部の倍の価値となっています。

 

また、フロリダと五大湖沿岸部での価格差が一番大きくなっています。傾向として、内陸部に比較すると、沿岸部の価格変動率はむしろ大きいのです。

 

[図表2]人口変動(沿岸部と内陸部:1960年から2008年)

出所:米国商務省国勢調査
出所:米国商務省国勢調査

 

一方、米国商務省の約50年のデータ分析では、沿岸部にある州人口増加が内陸部にある州人口増加に比べ、約20%増加に差が出ています。特に、メキシコ湾および太平洋に面する州の人口増加が、大きくけん引しているのが分かるでしょう。

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