米国では、3月末までに人口の25%超が新型コロナワクチンの1回目の接種を終えており、感染者数自体は多いものの、経済活動の全面復帰が期待される状況となってきました。今回は株式会社エー・ディー・ワークスの小川謙治氏が、大型財政出動およびFRBによる「量的金融緩和」の続行と「低金利維持」が明言された米国の「インフレ懸念」について考察していきます。

「米国商業不動産担保付き証券」延滞率の改善続く

米国不動産金融専門調査会社であるTrepp社によると、本年3月末における米国商業不動産担保付き証券(CMBS)の延滞率は前月に続いて改善しています。そもそもCMBSはキャッシュフローが生み出されている不動産に融資をするものなので、開発(リノベを含めた)建設途上にある商業不動産から比べると、延滞率は相対的に低くなっているのです。

 

30日以上の延滞率は6.58%まで低下し、昨年6月末の10.32%をピークに低下傾向が継続しています。新型コロナ前のボトムであった2020年3月の2.07%にはいまだ戻っていません。30日以上の延滞した債権のうち、不良債権化しているのは5.88%と前月比0.34%の低下となっています。

 

一方、30日以内の延滞債権(貸し手による債務不履行通知[宣言]が猶予されているグレース期間内にあるもの)についても、1.92%と前月比0.38%低下しています。2020年4月の8.07%をピークに30日以内の延滞率は2020年7月には2.82%と大幅に低下し、低位で推移しているのです。

 

セグメント別の30日以上の延滞率に焦点を当てますと、物流倉庫0.73%、事務所ビル2.21%、共同住宅(マルチファミリーアパート)3.14%、店舗10.89%、ホテル15.95%となっています。共同住宅を除いたセグメントで、数値は良化しているのです。

日本より早い「経済活動の全面復帰」が期待される

現時点で米国経済は明るい兆しを見せてきています。バイデン政権の大型財政出動およびFRBによる量的金融緩和の続行と低金利維持が明言されたのです。

 

また、本年3月末までに人口の25%超が新型コロナワクチンの1回目の接種を終えています。バイデン大統領は一日あたり2.76百万回の接種体制を整えていて、4月中旬にはすべての成人のうち90%が接種可能となり、独立記念日までには集団免疫を獲得できるレベルに達すると見込まれています。カリフォルニア州でも6月から全面在宅勤務が解除され、事務所勤務に順次勤務体系の変更が行われる見込みになっています。

 

感染者数が圧倒的に多い米国ではありますが、いつワクチンが打てるかわからない日本より、一足先に経済活動の全面復帰が期待される状況となってきました。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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