2021年前半期、パロアルトの戸建て価格に変化が…
2021年前半期におけるシリコンバレー中心地であるパロアルトの戸建て価格は、一昨年から昨年までの不調を過去のものとするかのように、活況を呈しています。
まずは住宅在庫です。米国の至るところで在庫が不足している、と報道されていますが、パロアルトではやや状況が異なっています。2021年前半期に登録された戸建て売り物件(在庫)は431戸となり、前年同期比45%の増加となったのです。さらに過去10年平均値と比較しても30%超の増加となりました。
ところが、それを上回る需要がパロアルト市場に存在したのです。新型コロナの収束見通しと、巨大IT企業の業績好調及びVCの活発な投資活動が住居不動産市況を押上げました。
巨大IT企業のエグゼクティブに人気の高い「オールド・パロアルト」では、5月中旬には10戸の戸建て売り物件が登録されました。それらは1戸あたり$6MMから$30MMの希望売値です。通常人気の高い「オールド・パロアルト」は、売り物がほとんど出ない地域です。
同時期にパロアルト市全体では、新たに登録された売り物件の件数のうち、74%がすでに売却完了となっております。これは前年同期比64%の増加、2012年以来の最多の件数です。それでは価格はどうだったのでしょうか? 中間価格も見てみます。
パロアルトでは過去最高値である$3.53MMまで上昇しており、昨年同期比16%の値上がりで、2020年通年でみても18%の値上がりとなっています。
VCによる「活発な投資活動」の背景は…
VCによる活発な投資活動の背景を探るべく、今回は巨大IT企業の第2四半期決算とバリュエーションを見てみることにしましょう。[図表]は2017年から2021年第2四半期までの、シリコンバレーに本社を置く巨大IT企業3社(アップル・グーグル・フェースブック)の時価総額・業績の推移です。
巨大IT企業の2021年前半期の売上・EBITDAともに、コロナ禍で大きく業績を伸ばし、3社合計売上で24%増加、3社合計EBITDAで41%増加となりました。コロナ前の業績伸び率(テイパリングの影響もあったのか、2018年から2019年に至るまで)は、一桁の増収増益でした。それを先取りするかのように、バリュエーションは2020年より大きく伸ばしています。したがって、コロナ収束が見えはじめたことによって、周辺不動産市況にも影響を与えたものと考えられます。
今後予想される量的金融緩和縮小が、早ければこの夏から始まる可能性があるため、今は絶好調な巨大IT企業の業績が、不動産市況にも少なからず影響を与えることになるでしょう。
(本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。)
小川 謙治
株式会社エー・ディー・ワークス
金融商品開発部 ディレクター
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