「全世界でのベンチャー向け投資額」は過去最高に
ベンチャーキャピタル等に関する独自のデータベースとレポートからなる情報サービスであるCBインサイツによると、2021年第2四半期はベンチャー投資業界にとって史上最高の記録を残すことになったようです。
まずは、四半期における全世界でのベンチャー向け投資額が$156.2B[約17.2兆円]と過去最高額となりました。前年同四半期比157%増加(前年同四半期:$60.7B[約6.7兆円])でした。
地域別では、米国での投資件数/投資額は2,718件/$70.4B[約7.8兆円]と全体の約半分を占めました。次はアジアで2,577件/$42.4B[約4.7兆円]、そして欧州では1,821件/$30.6B[約6.6兆円]となりました。新型コロナもワクチン接種により収束の見通しになってきたことから投資活動の復活につながったものと考えます。
企業価値が$1B超と評価される「ユニコーン」も増加
セクターとしては、①フィンテック関連で$33.7B[約3.7兆円](815件)、②Eコマース関連で$16.3B[約1.8兆円](401件)、③人工知能関連で$15.4B[約1.7兆円]、④デジタルヘルス関連で$14.0B[約1.5兆円]、⑤サイバーセキュリティ関連で$6.7B[約0.7兆円](214件)となっています。
さらに、企業価値が$1B超と評価されるユニコーンと呼ばれる未公開企業が136社に増えたことです。前年同四半期ではわずか23社でしたので、この1年で113社の増加となりました。136社のうち、米国発は76社、アジア発は33社、ヨーロッパ発は17社でした。上位10社の内訳は、米国発6社・中国発1社・インド発1社・スウェーデン発1社・ブラジル発1社となっています。
ベンチャー投資の出口となるIPO(新規株式上場)も280件となり、過去四半期での最高記録となりました。
一方、もう一つの出口である企業買収の数も2,613件と過去最高を記録しました。地域別には、米国1,171件・欧州982件・アジア334件でした。記憶に新しいところでは、中国政府の規制を受けた中国配車サービスのディディ社が第2四半期において最高額(企業価値:$73.1B[約8兆円])で資金調達を行いました。次に大きな出口案件はブロックチェーン関係のコインベース社の企業価値$65.3B(約7.2兆円)のIPOでした。
シリコンバレーの投資家「第2四半期」は冒険せず
それでは、シリコンバレーではどうだったか見てみましょう。世界的には2021年第2四半期が最高額であったのですが、シリコンバレーでは$11.2Bと2021年第1四半期の資金調達額と同額でした。シリコンバレーでは早くから回復を見せていたということになります。
さらに初期段階(アーリーステージ)での資金調達比率が低下傾向となっており、全体の51%となりました。シリコンバレーの投資家は冒険をしなくなってきたといえるでしょう。
とはいっても、米国での資金調達の30%強はシリコンバレーで行われており、ベンチャー投資の最先端であることには変化がありません。NY・ボストン・LAがシリコンバレーに大きく水をあけられて追いかける格好となっています。