役員報酬の最高税率55%を回避…「株式譲渡」がもたらす税務メリット
後継者不在に悩む中小企業が増加するなか、事業承継の選択肢として自社の株式を第三者へ売却するM&Aが定着しています。
中小企業のM&Aにおいて一般的に用いられる手法が「株式譲渡」です。これは経営者が保有する自社株式の全株を買い手企業へ譲渡する取引形態であり、事業や資産を一体として引き継ぐことができます。
株式譲渡は、経営者個人の財務戦略として高い税務上の優位性を有しています。会社売却によって生じる株式の譲渡所得に対する税率は、所得税や復興特別所得税、住民税を合わせて20.315%の申告分離課税が適用されます。
毎月の役員報酬として利益を受け取る場合は最高55%の累進課税や社会保険料の負担が生じますが、株式譲渡益として一括で受け取ることで、手元に残る可処分所得を増やすことが可能です。長年かけて育て上げた会社価値を大きな現金へ換金する出口戦略として、株式譲渡は合理的と言えます。
自社の客観的な相場を把握する「3つのアプローチ」
会社売却を検討する際、自社がいくらで売れるのかという客観的な相場を把握することが第一歩となります。企業価値を算定する代表的な手法には以下の3つが存在します。
コストアプローチ
会社が保有する実質的な資産から負債を差し引いた「時価純資産」をベースに評価する手法であり、客観性に優れる一方、会社の収益性やブランド価値が反映されない側面を持ちます。
マーケットアプローチ
上場している類似企業や過去のM&A取引事例と比較して算出する手法であり、相場を反映しやすい反面、独自性の強い中小企業では類似データの抽出が困難な場合があります。
インカムアプローチ
将来、獲得が見込まれるキャッシュフローや利益をベースに評価する手法であり、成長性を織り込める一方、将来予測の妥当性をめぐって交渉が難航しやすい特徴があります。
