令和6年の国税庁の統計で、相続税の課税割合が10%を超えました。全国では10人に1人、東京国税局管内では約6人に1人が課税対象となっています。背景には、基礎控除の引き下げに加え、地価や金融資産価格の上昇などがあると考えられます。相続税は一部の富裕層だけの問題とはいえなくなりつつあります。国税庁の最新データから、課税割合の実態と地域差、さらに相続に備えて確認しておきたい資産構成のポイントについて、公認会計士の岸田康雄氏がわかりやすく解説します。
地価上昇で「自宅+金融資産」が課税対象になるケースも
たとえば、親世代が長年暮らしてきた東京都内の自宅に加え、老後資金として保有している預貯金や、値上がりした株式などがある場合、それらを合計した相続財産が想定以上の金額になることがあります。
本人からすれば「自宅と老後資金を持っているだけ」という認識でも、相続税の計算上は、それぞれが相続財産として評価されます。そのため、相続税について考える際には、「富裕層かどうか」という感覚的な判断ではなく、自宅を含めた財産を一度、金額ベースで確認してみることが重要です。
ここで注意したいのは、不動産の評価額がそのまま市場価格になるわけではないという点です。土地は路線価方式や倍率方式などによって評価され、建物は原則として固定資産税評価額をもとに評価するなど、財産の種類によって評価方法が異なります。したがって、「自宅があるから相続税がかかる」と単純に判断することはできません。
相続税は「自宅を持っているだけ」で決まるわけではない
相続税が課税されるかどうかは、相続財産の総額をもとに、基礎控除や各種特例などを踏まえて判断します。たとえば、配偶者が相続する場合には「配偶者の税額軽減」があります。また、一定の要件を満たせば、自宅などの土地について「小規模宅地等の特例」を利用できる場合があります。
こうした制度を適用できるかどうかによって、最終的な相続税額は大きく変わります。地域別の課税割合をそのまま自分の家庭に当てはめるのではなく、まずは「どのような財産を、どの程度保有しているのか」を整理することが先決です。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載事業承継に強い公認会計士&税理士・岸田康雄氏が解説!〈事業承継&M&A〉最新情報