「市場価格」と「行政が決める価格」の違い
ここには、日本と米国の固定資産税制度の根本的な違いがあります。
日本では、行政が土地や建物を評価し、その評価額を基に毎年の固定資産税を計算します。所有者が「今年はこの価格で評価してください」と決めるわけではありません。
一方、カリフォルニア州では、原則として実際の売買価格を出発点として課税評価額が決まります。日本では不動産価格が上昇すれば、それに応じて固定資産税の負担も上昇しやすいのに対し、カリフォルニア州では、昔から所有している人ほど低い評価額の恩恵を受けることになります。
逆にいえば、現在の市場価格に近い価格で新たに不動産を購入した人ほど、高い固定資産税を負担することになります。
この違いは、単なる税率の違いではありません。「誰が、どのように不動産の価値を決めるのか」という、課税の根本的な考え方の違いなのです。
日本のように行政が評価額を決め、毎年納税通知書を送る仕組みは、納税者から見れば、自分で税額を決める必要がなく、ある意味では非常にシンプルです。
一方、米国のように実際の取引価格を重視する制度では、市場の動きが税負担に直接反映される一方、長年所有している人と新たに購入した人との間で、同じような不動産であっても税負担に大きな差が生じます。
ロサンゼルスの事例は、単に「米国の固定資産税は日本と違う」という話にとどまりません。
不動産取引に課税することで目先の税収を増やそうとしても、取引そのものが減少すれば、将来の固定資産税収入や住宅供給まで減ってしまう可能性があります。
税金は、税率を何%にするかだけではなく、「どの時点で」「何を基準に」「誰に負担してもらうのか」をどう設計するかが重要です。
行政が評価額を決める日本と、実際の取得価格を重視するカリフォルニア州。その違いを比べると、税制は単に税収を確保するための仕組みではなく、人々の不動産保有や売買、さらには住宅供給そのものを左右する制度であることが分かります。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
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