「私が少し我慢すればいい」10年間続けた孫への援助
70歳の高橋恵子さん(仮名)は、夫を亡くしてから一人で暮らしています。受け取っている年金は月約12万円。現在の預貯金は約180万円です。決して経済的に余裕がある生活ではありません。
それでも恵子さんには、長年やめられなかった支出がありました。長男の直樹さんと、その妻・彩香さん夫婦への援助です。正確には、かわいい孫のためのお金でした。孫が幼いころから、習い事や教材費などに使ってもらおうと毎月2万円ほどを渡し、入学などの節目にはまとまったお金も包んできました。援助は約10年間続きました。
「息子たちも家のローンがありますし、子育てにはお金がかかるでしょう。私が少し我慢して、その分を孫に使ってもらえるならいいと思っていたんです」
恵子さん自身は、外食や旅行をほとんどせず、洋服を買い替えることも後回しにしていました。年金だけでは足りない月には、貯金を取り崩します。それでも、孫への援助をやめようとは思いませんでした。
自分は年を取った。これから大きなお金を使うことも、それほどないだろう。それよりも、これから未来のある孫にお金を使ったほうがいい。――恵子さんはそう考えていたのです。ただ、援助が長く続くにつれ、恵子さんのなかには、別の感情も生まれていました。
「これだけのお金を出しているのだから、孫のことについて少しくらい意見をいってもいいだろう」。そんな気持ちです。習い事について、「もっと将来につながるものにしたら」。学校選びについて、「せっかくなら、もっといい学校を目指したほうがいい」。家での勉強時間や休日の過ごし方についても、直樹さんや彩香さんに自分の考えを伝えることが増えていきました。恵子さんにとっては、それも「孫のため」でした。
しかし、その思いが息子夫婦に同じように伝わっているわけではなかったようです。
