「あんたに言うと大ごとになるから…」いつも電話で元気いっぱいの年金11万円・82歳独居母を訪ねた53歳息子、実家の風呂場で見つけた〈大問題〉【FPが解説】

「あんたに言うと大ごとになるから…」いつも電話で元気いっぱいの年金11万円・82歳独居母を訪ねた53歳息子、実家の風呂場で見つけた〈大問題〉【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

仕事もプライベートも忙しく、実家には「正月と盆に帰れればいいほう」という人は多いでしょう。しかし、電話越しの高齢親の声は元気でも、実際に目にすると驚くような変化が起こっている可能性も……。佐々木健太さん(仮名)の事例とともに、帰省で確かめたい実家のSOSのサインについて、波多FP事務所の波多勇気氏が解説します。※紹介する事例は、相談者より許可を得て、プライバシー保護の観点から相談者の個人情報および相談内容を一部変更して記事化しています。

「もったいない」の裏にあった、年金11万円の苦しい資金繰り

帰省から戻った翌週、健太さんからFPである筆者のもとに電話がありました。2年前に娘さんの大学進学資金について相談を受けて以来、年に一度は面談を続けている方です。

 

「母の様子がおかしい気がするんです。でも、なにがおかしいのか自分でも言葉にできなくて」

 

一連の経緯を聞いた筆者は、まずは健太さんが知り得る情報をもとに、和子さんの金銭状況を整理することにしました。

 

和子さんの収入は、老齢基礎年金が月6万2,000円ほど。若いころに保険料を納められない時期があったため、満額には届きません。これに、亡くなったご主人の遺族厚生年金が月4万8,000円ほど加わって、手取りは月およそ11万円。年間にすると132万円です。

 

「そんなに少なかったんですね……。父が定年まで勤めていたし、もっとあると思っていました」

 

一方、和子さんの支出は、月々約8万7,000円。年金収入の範囲にきっちり生活を押し込め、削れるところを削り続けていたわけです。その削りしろの一つが、湯船でした。

 

「たしかに、『追い焚きをすると、冬はガス代が跳ね上がるのよ』とよく言っていました」

 

実際、1年分の家計を整理すると、光熱費のかさむ1月と2月だけは赤字に傾いています。母がいった「もったいない」は、気持ちの問題ではなく支出を抑えるための節約術だったのです。

 

また、筆者には、和子さんが湯船に入らない理由として、もう一つ気になる点がありました。

 

「健太さん、お母さまはいつから湯船に入っていないのでしょうか。それと、この冬、浴室で転んだり、ヒヤリとしたりしたことはありませんでしたか」

 

すぐに健太さんが電話で尋ねると、和子さんはしばらく黙ったあと、こう言ったそうです。

 

「1月にね、洗い場で足がすべって、尻もちついたんよ。それから、またぐのが怖うなって……。あんたに言うと大ごとになるけん、黙っとった」

 

 

次ページ湯船をあきらめた高齢者に、なにが起きているのか

※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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