憧れていた「漆黒の招待状」
「とうとう俺にも届いたか……」
湾岸エリアのタワーマンションで暮らす39歳の佐藤健一さんが手にしていたのは、招待制のステータスカードへの案内でした。
健一さんは、決して「いまさえ楽しければいい」と考えるタイプではありません。むしろ本人は、自分のことを“将来を真面目に考えるタイプ”だと思っていました。
「老後は、お金の心配をせずに暮らしたいんです。いい家に住んで、気の合う仲間と食事をして。妻にも『ここまで頑張ってきてよかったね』っていってもらえるような生活がしたくて」
健一さんが思い描いていたのは、経済的に成功した仲間たちと、豊かな余生を過ごす未来。そして、その姿を妻の佐藤美咲さん(仮名)に見せることも、健一さんにとっては夢の一部でした。
「妻には苦労させたくないですし、正直、ちょっと自慢したい気持ちもあります。『俺と結婚してよかっただろ』って」
そのためにはまず、いまいる仲間たちに遅れを取ってはいけない――。いつしか健一さんは、そう考えるように。周囲が高級店で食事をすれば自分も参加し、旅行のグレードが上がれば合わせる。カードの利用額も増えていきました。
なかでも、健一さんが密かに狙っていたのが、招待制のステータスカード。仲間内にはすでにそのカードを持っている人もいました。
「別にカード自体が欲しいわけじゃないんですよ。でも、やっぱり持っている人を見ると、『そこまで来たんだな』って感じがするじゃないですか」
健一さんにとって、カードは単なる決済手段ではなく、自分が目指す未来へ近づいている証でもあったようです。
そして、ついにその日はやってきました。封書の中身を確認した健一さんは、思わず笑みがこぼれます。努力が認められたような気がしたそうです。
ところが、その喜びは長く続きませんでした。
