海洋秩序を支える国際ルールは、どこまで機能するのか
今回のホルムズ海峡をめぐる問題が突きつけているのは、国際法そのものの存在だけではありません。
より重要なのは、国際的なルールに反する行動が取られた場合、国際社会がどこまで協調して対応できるのかという問題です。
例えば、ガス田などの海底資源が大陸棚やEEZに存在する場合、UNCLOSなどの国際ルールに基づき、沿岸国にはその資源について一定の主権的権利が認められています。
そのため、資源開発や収益をめぐっては、どの国がどの範囲で権利を持つのかという問題が生じます。さらに、そこから得られる利益に対する課税などが問題となれば、海洋法だけでなく国際課税や国家間の経済関係にも影響が広がる可能性があります。
もし、こうした国際的なルールによって形成されてきた秩序が、軍事力や経済力などを背景として一方的に変更されるような事態が続けば、国際法の実効性そのものが問われることになります。
国際社会は、ルールに基づいて行動する国と、力を背景に既存のルールを変更しようとする国との間で、どのようにバランスを取ることができるのでしょうか。
ホルムズ海峡問題は「国際秩序の試金石」に
ホルムズ海峡をめぐる今回の問題は、単なる一地域の海峡封鎖や航行の問題にとどまりません。
国際的な物流や資源輸送を支える海上交通路について、沿岸国の主権と国際的な航行の自由をどのように両立させるのか。そして、既存の国際ルールに対して異なる主張や行動が示された場合、国際社会はどのように対応するのかという、より大きな問題を突きつけています。
特に、世界経済が特定の海峡や航路に依存している以上、その「弱み」を握る国が、国際的なルールの解釈や運用を一方的に変更しようとする事態は、世界各国にとって無視できません。
海洋秩序を支えてきたUNCLOSなどの国際ルールを、単なる理念ではなく、実際の国際社会のなかでどこまで機能させることができるのか。
ホルムズ海峡をめぐる問題は、国際的な物流やエネルギー安全保障だけでなく、「力によるルール変更」を国際社会がどこまで抑止できるのかを問う試金石になっているといえるでしょう。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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