ホルムズ海峡をめぐる緊張が高まるなか、改めて注目されるのが、海洋に関する国際的な基本ルールを定めた「海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)」です。ホルムズ海峡に面するオマーンはUNCLOSの締約国である一方、イランは署名しているものの批准していません。では、UNCLOSが定める「通過通航権」は、ホルムズ海峡でどのように位置づけられるのでしょうか。国際物流の要衝をめぐる今回の問題から、海洋秩序と国際ルールの実効性について考えます。
オマーンとイランで異なるUNCLOSとの関係
ホルムズ海峡は、イランとオマーンの間に位置する重要な海峡です。
オマーンはUNCLOSの締約国であり、ホルムズ海峡の自国領海部分についても、同条約が定める通過通航制度を前提とした立場にあります。
一方、イランはUNCLOSに署名しているものの、批准していません。
この違いは、ホルムズ海峡をめぐる国際的な議論を考えるうえで重要です。
仮にイランがUNCLOS上の通過通航制度と異なる形で海峡に対する権限を行使した場合、イラン側からは「イランはUNCLOSを批准しておらず、条約上の義務を負っていない」という主張が出てくる可能性があります。
しかし、ここで注意しなければならないのは、「UNCLOSの締約国ではないこと」と「UNCLOSに関連する国際法上のルールを一切守る必要がないこと」は同じではないという点です。
国際法には、条約とは別に、国家の実行と法的確信の積み重ねによって成立する「国際慣習法」というルールがあります。UNCLOSに定められた規定のなかには、こうした国際慣習法として認められているものもあります。
したがって、ホルムズ海峡をめぐる問題では、「イランがUNCLOSに加盟していないから、国際法上まったく制約を受けない」と単純に考えることはできません。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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