前例のない税制支援と10万円給付金
感染拡大は企業活動にも深刻な打撃を与えました。売上が急減した事業者が相次ぎ、資金繰りに苦しむ企業や個人事業主が増加したことから、政府はこれまでに例のない経済対策を打ち出します。
2020年4月には、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」が公表されました。この制度では、売上が一定割合以上減少した事業者を対象に、所得税、法人税、消費税などの国税について、無担保かつ延滞税なしで納税を1年間猶予する特例が設けられました。また、中小企業に対しては、欠損金の繰戻し還付の特例なども創設され、急激な資金繰り悪化を防ぐための税制支援が講じられました。
さらに、新型コロナによる家計への影響を緩和するため、政府は国民一人当たり10万円を支給する「特別定額給付金」を実施しました。この給付金は、2020年4月27日時点で日本国内に住民登録のある人と在留外国人を対象とし、世帯ごとに世帯主の口座へ振り込まれる方式が採られました。
短期間で全国民を対象とした現金給付が実施されたことは、日本の政策としても異例でした。しかし、その効果についてはさまざまな評価があります。2020年10月、当時の麻生太郎副総理兼財務大臣は、「その分だけ(個人の)貯金が増えた」と述べ、給付金が必ずしも消費拡大には結び付かなかったとの見方を示しました。
それでも、感染拡大による先行きの見えない不安の中で、多くの家庭や事業者を支えたことは間違いありません。新型コロナ禍では、医療対策だけでなく、税制や財政政策が国民生活を支える重要な役割を果たした時代でもあったのです。
