「お義母さんとして、正解がわからない…」
みどりさんは居心地の悪さを感じながらも、孫との会話を楽しみ、夜10時過ぎには、案内された自分の部屋へ入りました。
夜遅く、喉が渇いてしまい、お茶を飲もうと静かに部屋を出ようとしたときです。台所から、少し抑えた声が漏れ聞こえてきました。義理の娘の声です。
「ねえ、お義母さんは明日何時の新幹線で帰るの?」
「昼過ぎじゃないかな。せっかく来たんだからゆっくりしてもらおうよ」と答える長男の声。
「そんなの困る。ただでさえ受験が終わってホッとしているのに、お義母さんがいると気を使ってしまって。台所も勝手に使って欲しくないし。お義母さん、だいぶ早く寝ていたから、絶対早く起きるでしょ。そしたら私も、朝早くから起きてないとダメな嫁だと思われそうでしょ?」
「まあ、でも遠くから来てくれたんだし」
「次からは、外で待ち合わせして、家には来ないでもらって、ホテルに泊まりましょうよ。部屋を分けて。そのほうがいいんじゃない? お互いのためにも。私がお義母さんのこと嫌いになってしまったら、嫌な思いをするでしょう?」
義理の娘に悪気があるわけではなく、ただ、自分のスペースである家、特に台所に入って来られることが嫌なのだろう、と察したみどりさんですが、それでも、胸が締め付けられるような気持ちになりました。
「良かれと思って、孫の顔が見たくて、来たけれど。嫌われてしまったようだ。お義母さんとしての正解が、私にはもうわからない……」
みどりさんは足音を立てずに部屋へ戻り、布団の中で静かに涙をぬぐいました。
