4LDKに夫婦2人「この部屋、最後に使ったのいつ?」
「この部屋、最後に誰か使ったのいつだっけ?」
2階の洋室を片付けながら、恵子さん(仮名・69歳)が夫の正志さん(仮名・69歳)に尋ねました。
「正月に息子が泊まったときじゃない?」
「それ、去年じゃなくて一昨年だよ」
夫婦が暮らしていたのは、30代で購入した郊外の4LDKです。2人の子どもを育て、住宅ローンはすでに完済。正志さんの退職後は、月約25万円の年金を中心に生活しています。
1階にはLDKと和室、2階には夫婦の寝室と、かつて子どもたちが使っていた2部屋があります。
長男も長女もすでに家庭を持ち、帰省しても日帰りが中心。それでも子ども部屋には学習机や本棚が残り、クローゼットには衣類やアルバムが詰まっていました。
恵子さんは週に一度、使っていない部屋にも掃除機をかけます。夏になれば湿気がこもらないよう窓を開け、冬には結露がないか確認する。庭の草取りや落ち葉掃除も必要です。
一つひとつは、それほど大変な作業ではありません。ただ、ある日、恵子さんは夫に言いました。
「私たち、住んでいるのって実質1LDKくらいじゃない?」
食事をするのはリビング。寝るのは2階の寝室。和室も子ども部屋も、普段はほとんど使いません。
正志さんは最初、「家なんて広いほうがいいだろう」と笑っていました。ところが子ども部屋の整理を始めると、自分でも考えが変わったといいます。
「取っておいたものの半分くらいは、何年も触っていなかったんですよ。家が広いから、捨てなくても置いておけただけだったんです」
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上の現在の住居は「持家(一戸建て)」が76.2%と最も多くなっています。一方、現在の住宅の問題点として「住宅が広すぎる」と答えた人は10.4%、「部屋数が多すぎる」は9.5%でした。高齢期には、広さそのものが住まいの課題になるケースもあります。
夫婦が本格的に住み替えを考え始めたのは、そのころです。
条件は、駅とスーパーまで歩けること。そして夫婦2人で管理しやすい広さであること。
いくつか物件を見た末、2人が選んだのは、駅から徒歩圏内にある中古マンションの2LDKでした。
