【解説】知っておくべき「生前贈与」と「老後資金」の注意点
今回のケースのように、「相続税対策」と言う言葉で親を安心させ、実家の名義変更を迫るトラブルは、弁護士や司法書士の相談現場でも散見されます。
トラブルに巻き込まれないためには、以下の3つの注意点をおさえましょう。
1.「生前贈与=完全に非課税」ではない
「相続時精算課税制度」を活用すれば、贈与時の贈与税(最大2,500万円の特別控除+年110万円の基礎控除)を一時的に抑えることは可能です。
しかし、手続き上は相続ではなく「生前贈与」にあたるため、不動産の名義変更(所有権移転登記)には「登録免許税(固定資産税評価額の2%)」がかかるほか、「不動産取得税」が発生するケースもあります。また、贈与された財産は将来の相続時に持ち戻して計算されるため、根本的な節税にはならないことも多い点に注意が必要です。
2.相続税の基礎控除額を把握しておく
配偶者と子ども1人の場合、相続税の基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×法定相続人の数)です。実家の評価額と預貯金を合わせてこの金額を超えない場合、そもそも慌てて生前贈与を行う必要はありません。
3.住まいを失うリスクを避ける
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、65歳以上夫婦のみの無職世帯における消費支出は月約26.4万円にのぼります。Aさん夫婦の年金(月24万円)と貯蓄1,000万円という生活基盤は、「住生活の基盤となる持ち家があり、家賃負担が発生しない」からこそ成り立っています。
実際に同調査における、「二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯」の持ち家率は95.5%であり、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)」の月平均消費支出263,979円のうち住居費は17,739円であり、これは賃貸の家賃ではなく、主に住宅の修繕や維持費(屋根や外壁の補修、設備の交換など)や地代の平均値と考えられます。
「子どもの言うことだから」と安易に実印や登記書類を渡せば、老後の平穏が崩壊するリスクがあります。
