(※画像はイメージです/PIXTA)

高齢夫婦にとって、子や孫の帰省は何よりの楽しみです。しかし、その微笑ましい一家団欒の裏で、「相続税対策」を口実にした実家の名義変更(生前贈与)を迫られるトラブルが、弁護士や司法書士の相談現場で目立っています。今回紹介する70代夫婦は、夏休みに帰省したきた長男の「良かれと思って提案した節税対策」に違和感を抱きました。そして、専門家に相談したことで発覚した、“優しすぎる提案”の正体とは? 現代における実家依存の実態と、親世代が資産を守るための現実的な防衛策について解説します。*本記事は、弁護士・司法書士の相談で見られる事例を基に、個人が特定できないよう再構成しています。

【解説】知っておくべき「生前贈与」と「老後資金」の注意点

今回のケースのように、「相続税対策」と言う言葉で親を安心させ、実家の名義変更を迫るトラブルは、弁護士や司法書士の相談現場でも散見されます。

 

トラブルに巻き込まれないためには、以下の3つの注意点をおさえましょう。

1.「生前贈与=完全に非課税」ではない

「相続時精算課税制度」を活用すれば、贈与時の贈与税(最大2,500万円の特別控除+年110万円の基礎控除)を一時的に抑えることは可能です。

 

しかし、手続き上は相続ではなく「生前贈与」にあたるため、不動産の名義変更(所有権移転登記)には「登録免許税(固定資産税評価額の2%)」がかかるほか、「不動産取得税」が発生するケースもあります。また、贈与された財産は将来の相続時に持ち戻して計算されるため、根本的な節税にはならないことも多い点に注意が必要です。

2.相続税の基礎控除額を把握しておく

配偶者と子ども1人の場合、相続税の基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×法定相続人の数)です。実家の評価額と預貯金を合わせてこの金額を超えない場合、そもそも慌てて生前贈与を行う必要はありません。

3.住まいを失うリスクを避ける

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、65歳以上夫婦のみの無職世帯における消費支出は月約26.4万円にのぼります。Aさん夫婦の年金(月24万円)と貯蓄1,000万円という生活基盤は、「住生活の基盤となる持ち家があり、家賃負担が発生しない」からこそ成り立っています。

 

実際に同調査における、「二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯」の持ち家率は95.5%であり、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)」の月平均消費支出263,979円のうち住居費は17,739円であり、これは賃貸の家賃ではなく、主に住宅の修繕や維持費(屋根や外壁の補修、設備の交換など)や地代の平均値と考えられます。

 

「子どもの言うことだから」と安易に実印や登記書類を渡せば、老後の平穏が崩壊するリスクがあります。

次ページなぜ「名義と実印は死ぬまで渡さない」ことが重要なのか

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