(※画像はイメージです/PIXTA)

高齢夫婦にとって、子や孫の帰省は何よりの楽しみです。しかし、その微笑ましい一家団欒の裏で、「相続税対策」を口実にした実家の名義変更(生前贈与)を迫られるトラブルが、弁護士や司法書士の相談現場で目立っています。今回紹介する70代夫婦は、夏休みに帰省したきた長男の「良かれと思って提案した節税対策」に違和感を抱きました。そして、専門家に相談したことで発覚した、“優しすぎる提案”の正体とは? 現代における実家依存の実態と、親世代が資産を守るための現実的な防衛策について解説します。*本記事は、弁護士・司法書士の相談で見られる事例を基に、個人が特定できないよう再構成しています。

「父さんたちのために…」節税を提案してきた長男の優しさ

「まさか、あの子が私たちの老後を奪おうとしていたなんて……」

 

首都圏の郊外にある閑静な住宅街に暮らすAさん(75歳/元新聞社勤務)と妻のBさん(71歳)。

 

夫婦の収入は合わせて月約24万円の年金です。約1,000万円の貯蓄があり、夫婦二人で静かな老後を送っていました。そんな二人のもとに、都心の大手企業に勤める長男のCさん(36歳)が、夏休みを利用して、孫のDくん(6歳)を連れて帰省してきました。

 

「妻は仕事で忙しいから、俺と息子で遊びにきたよー」

 

滞在中、Cさんは老いた両親を気遣い、庭の手入れをしたり、重い荷物の買い物を率先して手伝ったり、一生懸命、家の仕事を手伝いました。

 

しかし、お盆が過ぎた頃、Cさんは「ある提案」を持ちかけるようになりました。

 

「父さんも75歳だろ。そろそろ相続のことを考えないと。将来、すごい相続税が取られちゃうから。今のうちに実家の名義を『生前贈与』で移しておこう。制度を使えば贈与税もかからないし、手続きの費用も俺が払うから」

 

長男のCさんは優しく「俺を頼ってくれ」という顔で税金の話をし、贈与契約書や登記申請に必要な書類を差し出し、実印の押印と「印鑑登録証明書」の準備を求めてきました。

次ページ「親心」につけ込み、合法的な手続きを装う名義奪取の罠

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